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性自認や性的指向に基づく差別・暴力をなくし、あらゆる人々が生き生きと暮らせる社会のために、日本の法整備を前進させたい。【国連「UPR審査」ジェンダー・SRHRに関する人権改善勧告 院内勉強会④】

2023.6.21

LGBT法連合会 事務局長代理 西山朗


 
国連人権理事会は、人権侵害を防止し、総合的な政策ガイダンスを提供し、新しい国際規範を発展させ、世界のいたるところで人権順守を監視し、加盟国が人権に関する義務を果たせるように支援する機関です。(国連広報センター引用)

国連人権理事会では、全ての国連加盟国の人権状況を定期的に審査する仕組みがあります。この審査はUPR(普遍的定期的レビュー)と呼ばれ、4年半ごとに行われます。
2023年1月末に開催されたUPR日本審査に向けて、ジョイセフは国内外の8つの市民団体* と共同で、日本国内のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の課題をまとめた報告書を2022年7月国連に提出しました。

2023年7月には、第53回人権理事会で勧告採択が行われます。それに先立ち、日本政府に勧告を「受け入れる」採択を求めるため、ジョイセフと「#なんでないのプロジェクト」の主催で、共同レポートを執筆した市民社会が集まった勉強会を、衆議院第一議員会館にて行いました。

この記事は、市民レポート共同執筆団体のひとつ、「LGBT法連合会」の西山朗氏による発言をまとめたものです。

日本はG7の中で唯一、性的指向・性自認(SOGI)に基づく差別禁止法や、同性婚もしくは同性パートナーの関係性を認める法律が存在しない国です。さらに、性別を法的に変更する際の要件として断種・不妊手術が求められたり、LGBTをとりまくいじめや職場での困難が根強く残るなど、深刻な人権侵害が続いています。

2023年5月の広島G7サミット前日に、各政党からSOGIに関する「理解増進法案」が国会に提出されましたが、いずれも理解を増進するための行政内部の体制整備が目的で、差別禁止法ではありませんでした。

西山氏は、今回のG7サミットにおいて「あらゆる人々が、性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく、生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する」というコミュニケが出されたことに言及。議長国として同コミュニケをまとめた日本の政府に対し、国内での法整備を進める必要があると力強く訴えました。

*8つの市民団体:#なんでないのプロジェクト、#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト、SOSHIREN 女(わたし)のからだから、LGBT法連合会、一般社団法人Spring、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、Sexual Rights Initiative、Asia Pacific Alliance for Sexual and Reprroductive Health and Rights


SOGIに基づく差別や暴力が禁止されていない日本の現状

私たちLGBT法連合会は2015年に設立された団体で、性的指向・性自認、SOGIとも言いますが、それらによって困難を抱えている当事者等に対する法整備を目指して活動する全国連合会です。
特にSOGIに基づく差別禁止法の制定を目指して活動しています。*SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)
私からは共同レポートに書いたこと、またレポート提出から1年が経って現在に至るまでの進捗などについて報告させていただきます。

まずレポートでは、日本はG7で唯一SOGIに基づく差別禁止法、または同性婚や国レベルでのシビルユニオン(同性パートナー法)を認める法律がない国であることを記載しています。
またある調査では、LGBTの60%が学校でのいじめを経験し、約50%は職場での困難に直面していること、またシスジェンダー(生まれた時に割り当てられた性別と自認する性別が一致している人)やヘテロセクシャル(異性に対して性的感情を持つ)の人々と比べて自殺念慮が高いという結果が出ていることも紹介しています。

次に、法的に性別を変更する際の要件の一つとして、日本では断種・不妊手術が求められており、これが人権侵害であることも記載しています。
そして、2021年に超党派の議員連盟で合意した理解増進法案が、最終的には一部の保守議員の批判によって提出がされなかったことについても、レポートでは報告しています。
さらに、現在行われている婚姻の平等を求める裁判の経過についても言及しました。レポートの最後のまとめでは、①差別禁止法の制定②婚姻の平等③性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律・通称特例法における手術要件の削除、以上の3点を求めました。

市民社会の声で変化を起こそう。「理解増進」から「差別禁止」へ、法の制定を求めていく

レポート提出以降、この一年間の進捗についてお伝えします。

まず、2022年12月に報道されましたが、特例法の手術要件の合憲性について最高裁の大法廷で判断されるという情報が出ています。本件は2019年に一度合憲となったものの、社会状況を踏まえた上で改めて判断されることになります。

次に、今年2023年の2月初旬に元首相秘書官による差別発言がなされたこと、またG7を5月に控えていたこともあり、SOGIに基づく差別や暴力から人々を保護する法律の制定に向けて、市民社会でよりいっそう働きかけが増しています。

そしてG7サミットの前日には、立憲民主党、日本共産党、社民党によって2021年の「理解増進法合意案」が提出され、自民党と公明党から修正案が提出されました。また5月26日には日本維新の会と国民民主党による独自の法案が出され、現在3つの法案が提出されている状態です。

G7の広島サミット首脳コミュニケでは、次のように書かれています。

「あらゆる人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく、生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する」
議長国としてこのコミュニケをまとめた日本は、国内での法整備を進める必要があると私たちは考えます。引き続き、日本政府が差別禁止法を制定するよう、働きかけたいと思います。

※この記事の内容は、勉強会開催時のものです。

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