ひとジョイセフと一緒に、世界を変えていく「ひと」

性に関することを話していい。そう思えた経験を、より若い世代の人たちにも。

I LADY. ピア・アクティビスト

はな

2023.12.27

私たちの人生と切り離すことができないセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(Sexual and Reproductive Health and Rights:性と生殖の健康と権利)、SRHR。性と生殖に関する事柄について、私たち一人ひとりが自ら決め、必要な情報や医療を得られる権利を指し、ジョイセフはすべての人が生まれながらにして持つべき権利だと考えています。

日本は世界で最も妊産婦死亡率が低い国のひとつ* ですが、SRHRをめぐる状況は深刻で、性教育やジェンダー・ギャップなどの面では今なお多くの課題を抱えています。多くの女性は、出産や避妊、パートナーシップ、性感染症の予防などといった、性と生殖に関する自己決定権や正しい知識、ヘルスケアへの安全なアクセスが手にできていないのが現状です。

人生における主体性や、自分らしい生き方の選択が阻まれている現実を変えるために、ジョイセフが始めたプロジェクトが「I LADY. 」です。SRHRを知っているかどうかが、今後の人生の選択を大きく左右し得る若い世代への支援に、特に力を入れています。

東京・文京区は、SRHRの知識を若い世代に広く知ってもらうために、ジョイセフのI LADY.事務局と連携。SRHRを学んで実践する「ピア・アクティビスト」を育成する事業を実施しています。受講者は養成研修を受けたのち、学んだことを同世代に伝えるアクションを進めていきます。

文京区の大学に通う、はなさんは、ピア・アクティビストに応募し活動してきました。現在大学2年生で、人文学科で教職課程を選択して勉強する傍ら、自身が興味を持っていたSRHRを学び、積極的に実践しています。

ピア・アクティビストの活動に参加したきっかけや得た学びについて、はなさんに語ってもらいました。

*2020年の妊産婦死亡率は4(対出生10万, UNICEF)

大学で偶然SRHRのチラシを見て文京区との活動に興味を持つ

私がジョイセフのI LADY.の取り組みを初めて知ったのは、大学1年生の春でした。学内の掲示板に貼られていた、SRHRのチラシを見たのがきっかけです。

そのチラシには、月経や避妊、パートナーシップ、性暴力など、高校生の頃から知りたかった性と生き方について書かれていたんです。活動に参加したら自分が抱えていたモヤモヤの正体が少しわかるのかもしれない。こう考えて、大学のある文京区とジョイセフとの取り組みであるピア・アクティビスト育成事業への参加を決めました。

講座で前に立つはなさん

「性に関することを話していい」という驚きと安堵

最初の養成研修でまず驚いたのが、「性に関することを話していいんだ」ということです。これまでは、気になったことについて話したくても誰に話していいかわからず、ひとりで抱え込んでいました。研修で初めて話すことができて、安心したことを覚えています。

研修では、学んだりディスカッションをしたりできるパッケージが用意されていました。テーマごとの動画を見て、その感想をグループで話します。自由に話すスタイルではなく、質問や選択肢が書かれたカードを使いました。

例えば、「パートナーと良い関係でいるためにはどうする?」と質問が書かれたカードを前に、「お互い自由でいる」「依存をしない」「お互いを尊重する」などと1枚ずつ書かれたカードを使いながら、グループで話します。すると、自分の気持ちを言葉にでき、いろいろな意見に接することができるようになりました。自分にはなかった考えや選択肢を深められるようになり、発見もありました。

ワークショップの写真

I LADY.カードを並べてディスカッションする様子

養成研修が終わったあとは、各自の実践に移ります。私は、得た学びを大学の学祭で伝えるアクションを起こしました。大学のメンバーと有志枠に応募して場所をもらい、SRHRに関する展示とワークショップ、物販を行いました。

展示室では、SRHRに関する展示のほか、来てくださった方が参加できるものも用意しました。模造紙に「大切な人といい関係でいるためにはどうしたらいいですか」という質問を書き、来場した方に付箋紙を渡して、自分の考えを記して貼ってもらうようにしたんです。普段はあまり話題にしないことを考える機会になり、さらにいろいろな意見に触れるきっかけにもなったと思います。

実際、「みんなに伝えたい」と連れる友達を変えて何回も来てくれた人もいましたし、アンケートに回答しつつ、「お互い気持ちを伝えあおうね」と言ってパートナーシップのあり方を考えてくれたカップルもいました。ただ、性について話すことに抵抗を感じる人はまだ多く、「恥ずかしい」という気持ちもあり接しにくい話題でもあることを改めて実感しました。

展示を通して、いろいろな意見に触れ、同じ世代の現状を少し知ることができました。

展示物と人

学祭での展示の様子

文京区とのピア・アクティビスト育成事業で自分を大切に、学ぶ勇気をもらった

ピア・アクティビストの活動を通して、何より変わったのは、自分を大切にできるようになったことです。

それまでは、人の目や意見が気になって、自分の意見を言ったり意思決定をしたりすることを避けて生きてきた気がします。でも、活動に参加して自分の気持ちや意見を言葉にして伝える経験をしたことは、私にとって大きなことでした。お互いを尊重しながら言葉で伝え合うことで、相手も自分も大切に考えられるようになりました。

また、学ぶことへのマインドも変わった気がします。ピア・アクティビストの活動中に、I LADY.の事務局の方が「この活動に参加してみませんか」「頑張って提出してみませんか」とたびたび声をかけてくださったんです。新しいことへのチャレンジには不安もありますが、飛び込んでみると、新たな学びを得ることができることを実感しました。勇気を出して取り組めばチャンスがたくさんあることがわかり、いろいろな人と一緒に取り組んでみようと前向きなマインドをもらいました。

養成研修で話を聞いている人たち

研修では、同席する複数人のリージョナル・アクティビストから様々な視点でのアドバイスや話を聞くことも

自分が悩んだからこそ、中高生に伝える活動をしていきたい

文京区のピア・アクティビティストとして、今年度の活動が終わっても、I LADY.のプロジェクトに参加したいと思っています。特に力を入れて取り組みたいのは、中・高生に伝えることです。

私自身、中学や高校時代に、性について相談できず、ひとりで抱え込んでしまったことがありました。そんな経験があったからこそ、若い世代の子に関わり、情報共有を行っていきたいと思います。自分を大切にする価値観を伝え、自分の気持ちを言葉にして伝える機会を作っていきたいです。

改めて振り返ると、ピア・アクティビストやI LADY.の活動の醍醐味は、いろいろな人と話ができることだと感じます。自分の気持ちを言葉にして話し合うことで、自分を大切にできるようになりました。若い世代に、これから私がどのように伝えていけるか。工夫しながら実践していきたいと思います。

聞き手・執筆:鈴木ゆう子

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