ひとジョイセフと一緒に、世界を変えていく「ひと」

ジョイセフとの出会いで、見える世界が変わった

コピーライター/プランナー

外崎 郁美

2021.7.14

広告制作や商品開発から社会課題に取り組むソーシャルプロジェクトまで幅広く活躍するコピーライター、プランナーの外崎郁美さん。電通の社内プロジェクトチーム『ギャルラボ』の立ち上げメンバーとして、チャリティーピンキーリング制作、「GIRL meets GIRL」プロジェクトなど、ジョイセフとのコラボレーションを数多く手掛けてきました。新しい気づきと共感を呼ぶ言葉、社会に前向きな連鎖を生み出す企画。そんなクリエイティブの原点となったのは、「衝撃的だった」と振り返るジョイセフとの出会いでした。

プロフィール

外崎郁美 電通 コピーライター/プランナー
TCC新人賞、日経広告部門賞、交通広告グランプリなど受賞。共著にジョイセフ監修・協力の『世界女の子白書』。2020年まで社内プロジェクトチーム『ギャルラボ』(現GIRLS GOOD LAB)代表を務める。ジョイセフと共同で開発したチャリティーピンキーリングは売り上げ12万個以上、タンザニアの母子保健棟改修費用などに約1500万円の寄付を実現。「I LADY.」プロジェクトや「失恋ボックス」ほか企画多数。

 


 

GIRL meets GIRL プロジェクト 【チャリティーピンキーリング】
「ひとつの色は自分のため、ひとつの色は海の向こうの彼女のため」
2つの色が重なるリングで、日本の私たちが世界の女の子とつながる新しい形のチャリティープロジェクト。リングを購入するとひとつにつき100円が、ジョイセフを通じて世界の女の子を支援する活動に使われます。


 


 

華やかなイメージの広告代理店。かたや国際協力NGOとして草の根の活動を続けてきたジョイセフ。異色のコラボレーションが生まれたきっかけとは。

始まりは2010年、ジョイセフにかかってきた一本の電話。「日本の女の子がチャリティーに参加できる企画を考えたので聞いていただけますか?」
「女の子のパワーで日本を元気にしたい! 」という電通社内のプロジェクトチーム、『ギャルラボ』(現在はGIRLS GOOD LABに改称)からの連絡でした。

それから10年、チャリティーピンキーリングの「GIRL meets GIRL プロジェクト」、世界の女の子の現実を国内の若い女性に届けた『世界女の子白書』出版、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ=性と生殖に関わる健康と権利)の情報を伝えて行動のきっかけを作る「I LADY.」など、多くのプロジェクトがギャルラボとジョイセフの連携で実現。女性の健康と権利、SRHRについて幅広く意識が広がり、より良い社会や生き方を求める現在のムーブメントにつながっています。しかし初めて両者が出会った時は、そんなことになるとは誰も想像しませんでした。

「最初は、かわいいリングを作りたい、売上金の一部をどこかに寄付できたら・・・というアイデアだったんです。せっかくなら女の子に支援できる団体がいいね、と探して見つけたのが、それまでまったく知らなかった国際協力NGOのジョイセフでした」

ジョイセフと初顔合わせの日。ギャルラボというチーム名の趣旨に合わせ、ギャルファッションで身を固めた外崎さんと2人の同期(アートディレクターの間野麗さん、当時コピーライターで現在プロデューサーの小川愛世さん)は、緊張しつつジョイセフを訪れました。「NGOの人って真面目そう。こんな恰好してたら怒られるかも」。しかし出迎えたジョイセフスタッフの2人は、華やかなネイルをしていておしゃれでフレンドリー。「ワクワクする提案をありがとう。若い女性にジョイセフのことを知ってもらえるなんてうれしい! 」と喜ぶ姿を見て、外崎さんたちの不安は吹き飛んだそう。「社会貢献やNGOというものに抱いていた敷居の高いイメージが、良い意味で裏切られました」

その日ジョイセフで聞いたのは、初めて知った世界の女性についての現実でした。
「1日に約1000人(当時、現在は800人)もの女性が、妊娠・出産で命を落としている。その99%は途上国で起きていて、最大の死因は、医療の整わない中で行われる不衛生な中絶。私たちは衝撃を受けて、言葉を失いました」
そこでジョイセフから突然の提案が。「一緒にタンザニアに行かない?」
それはリングの売上金の寄付先となるアフリカの地でした。「よく考えたら、相手のことを知りもしないでチャリティーを企画するなんて無理だよね」。外崎さんたち3人は、仕事を調整して予定を空け、休暇を取り、自腹でタンザニアへと飛んだのです。

マラリアを持つ蚊に刺されるのが怖くて、外崎さんは長袖長ズボン、ブーツ、帽子には顔周りを覆うショールをセットして、全身フル防備でタンザニアの地を訪れました

「支援」から「出会い」へ。チャリティーのあり方を変えた「GIRL meets GIRLプロジェクト」

初めてのアフリカに「とにかく怖い、悲惨な光景を目にしたらどうしよう」と恐怖感でいっぱいだった外崎さんでしたが、現地に行って驚きの連続。「はじけるような笑顔、カラフルな民族衣装でおしゃれを楽しみ、目を輝かせて将来の夢を語る女の子たち。決して物質的に恵まれているとは言えない状況の中で、こんなに前向きに自分のことを堂々と話せる姿に心を動かされました。魅力あふれる彼女たちと話す中で、私たちは自分たちの描いていたプランを考え直すことに」

複数のクリニックを訪問し、診療に訪れる女の子の話を伺いました。手前が外崎さん。奥がアートディレクターの間野麗さん

実はこのプロジェクトのために当初用意していたのは「GIRL saves GIRL」というキャッチコピー。ところがタンザニアに来てみると、これではしっくりきませんでした。「 ”支援する” という上から目線ではなくて、新しい仲間に出会う、知らなかった世界に出会うということなんだ」。そんな気づきから新しいコピー「GIRL meets GIRL」が生まれました。

こうして始まった「GIRL meets GIRL」プロジェクト、実はジョイセフからの出資はありません。予算はギャルラボで組まれたわずかな資金のみ。「ムーブメントを起こせるパワーのある女性=ギャルの力で日本を元気にしたい」というギャルラボの存在意義を世の中に広く知ってもらうために、会社に交渉して得た費用でした。

リングの素材はアクリル。外崎さんはアートディレクターの間野さんと理想のリングを作れそうなアクリル会社を見つけて打ち合わせを重ね、初回1200個を生産。梱包するカードも手作り、ジョイセフスタッフや多くのボランティアの皆さんと一緒にカードに色を塗り、手作業で梱包。発表イベントは社内のホールを借り、人づてに頼んでギャルのモデルさんに来てもらいました。「通常では考えられない、破格の費用感で実現できました。広告費のないプロジェクトでしたが、口コミで応援の輪が広がり、3日間で初回生産の1200個は完売しました」

初回1200個のチャリティーピンキーリングの台紙は、長三封筒くらいの横長サイズ。1枚1枚手描きでリングのカラーに合わせて色を塗りました

それから10年、チャリティーピンキーリングは売り上げ12万個以上を突破し、1500万円以上の寄付を達成。寄付金はさまざまな用途で役立てられ、たとえば劣悪な環境で分娩が行われていたタンザニアの母子保健棟が、明るく清潔な安心して出産できる施設に改修されました。

このプロジェクト以来、外崎さんの仕事スタイルは一変。自分が作る広告、自分が向き合うすべてのもの。これらは社会にどんな影響があるのか、より考えて行動するようになりました。「ジョイセフに出会うまで、社会貢献というものをうっすら意識はしつつも、具体的に何も行動できていなかった。けれどもジョイセフと関わり、ジョイセフを応援している企業や一緒に活動している企業と出会って、多くの人たちの社会や世界への思いに触れることになりました。知ってしまったら、知らなかった時の自分には戻れません」

元気いっぱい弾ける笑顔の女の子たちに出会って、新たなmeetsというコピーが生まれました

やがて外崎さんは重大なことに気づきます。「ジョイセフと一緒に海外を支援する活動を通じて、逆に世界の人々から『日本は大丈夫? 』と言われたんです。実際、各国の男女格差を分析・数値化したジェンダーギャップ指数を見ると、日本は156カ国中120位(世界経済フォーラム2021年3月:The Global Gender Gap Report 2021)。『世界女の子白書』という本を作った時には、海外の女の子たちから日本の女性が抱える課題について鋭い指摘を受けました」
国内に目を向けると、いじめや暴力、SNSでの攻撃、女性の貧困、経済格差、望まない妊娠や中絶など、問題は山積み。「日本ってある意味、発展途上国なのかも。私にも何かできたら・・・と思いました」

こうして始動したのが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ=SRHRについて発信する「I LADY.」。「Love, Act, Decide Yourself.」の頭文字が表すメッセージをウェブサイトで伝え、女性たちが自ら考え行動するためのプラットフォームとなっています。 このプロジェクトはジョイセフにとって、世界から日本へ、女性に関する課題の意識を広げる大きなターニングポイントとなりました。

電通ギャルラボを卒業し、新しいステップへ向かう準備中。

実は一時期、人を、社会を強く思うがゆえに、敏感になり過ぎていたという外崎さん。この企業はちゃんと消費者のことを考えているのか。社会的責任にどう取り組んでいるか。製品の成分ひとつひとつが気になって、どこまでも突き詰めて考えてしまう。「もう広告を作れないのでは」と思いつめたこともあったそうです。そんな時期を通り抜けて見えてきたのは、 ”どうやったら一人ひとりが幸せを感じて生きていけるのか” という新しいテーマ。
「社会課題に目を向けて、気づきを与えるコミュニケーションに携わることが多かったのですが、ここへきて方向転換を考え始めました。今度はみんなが夢中になれること、思いきり楽しめるようなことをやってみたいんです」

ギャルラボの代表を務めていた外崎さんは、後輩へ世代交代するためにバトンを渡し、ジョイセフとのプロジェクトも卒業しました。次に向けてアイデアを温め、進む方向を模索しているそうです。
「つらい思いをしている人を、どうやったら引き上げられるのか。好きなもの、夢中になれるものを作れたら、それが結果的に社会貢献になるかもしれない」
音楽や映画、本、さまざまな体験。好きなことができたり、思いっきり楽しめた経験が生きる力になる。お説教でもなく、誰かに要求されるわけでもないのに、心が動かされる。「それってすごいことだと思う」と力を込める外崎さん。

「生きていれば辛い現実もたくさんある。ネガティブなことを探すとキリがない。でも否定だけだと何も残らないから、明るい方向を探したい。それぞれが許し合えて、大らかな気持ちでいられる世界を目指したり、好きになれるような共通点を作れたら。そんなアプローチを考えていきたいです」
ジョイセフと出会い、世界を見つめて東奔西走した日々。制作やプロジェクトに取り組みながら、社会の課題に悩んだ10年間。「ひとつひとつを通らなければ、ここにたどり着けませんでした。すべて今の思いにつながっています」

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