大震災から6カ月の宮城県の被災地を訪ねて
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2011.9.6
依然として残る地震・津波の傷あと
3月11日の東日本大震災から早6カ月が経過しようとしています。
8月29・30日に日本助産師会の本部の皆さまと共に宮城県に行ってきました。
宮城県助産師会との情報交換、支援事業の今後の計画の確認、および現地の状況の視察が主な目的です。
仙台市では、津波の被害を受けなかった市街地の復興は著しく、すでに様々な側面で回復しつつあるように見えました。しかし、いったん海岸地域へ行きますと、震災当日の津波の爪あとが依然として鮮明に残り、いまだに復興状況には厳しいものがありました。
東松島市と石巻市を訪ねて
今回は、東松島市と石巻市へ行ってきました。
石巻市(人口15万4,000人)では、半年たった今でも、津波の傷あとが生々しく残っています。宮城県での死者・行方不明者の約3分の1(死者3,154人、行方不明者849人)を占めるといわれる石巻市の状況は深刻でした。宮城県の避難者総数7,200人、全壊家屋5万6,000戸。その半数近くが石巻市周辺といわれています。
東松島市(人口4万3,000人)の市役所は津波が直前で止まり、市役所の建物は「難」を免れ、職員の死者もなかったそうです。しかし市の海岸地域の被災は大きく、8月29日現在で死者967人、行方不明者98人、市民の転出が既に約1,000人余も出ているということでした。
「心のケア」が必要
地元の助産師の方々のお話を伺う機会を得ました。多くの妊産婦や赤ちゃんが従来の生活をまだ取り戻しておらず、心の傷を癒す「ケア」が重要であるとの報告がありました。
ジョイセフの支援により、震災直後から専門職である助産師さんが、妊産婦さんや赤ちゃんへの訪問を、難しい条件の中で進めています。
時間の経過とともに、心配なのは、仮設住宅や避難用に借り上げたアパートなどにそれぞれ入った後の、孤立する人々のケアではないかというお話でした。さらにきめ細かな専門職による訪問が求められています。今後も地元の助産師さんたちによる支援協力が必要であるとの認識を強く持ちました。宮城県の多くの助産師さんは、目下お母さんの乳房ケア、新生児訪問、心のケアなどに尽力しています。
喜ばれるケショ(産婦さんへの義援金)の支給
7月1日に開始した産婦さんへの義援金(ケショ:お一人5万円支給)については、宮城県の産婦さんたちからも助産師さんを通じてたくさんの感謝の気持ちが届けられています。
お蔭さまで8月末日までに岩手県、宮城県、福島県3県全体で900人を超える産婦さんが支給対象となっています。義援金を受け取ったお母さんたちからも、タイムリーな支援に対して感謝のメッセージが寄せられています。孤立する妊産婦さん
仮設住宅が完備しつつあり、8月から9月にかけて、ほぼすべての市町村の避難所が閉鎖せれる計画と聞いています。また、緊急医療を担っていた医療支援チームも撤退し始めており、今後は被災住民のニーズに合わせた対応がかなり難しくなると同時に、一方では、妊産婦さんや赤ちゃんへの心のケアはさらに必要度を増しているのが現実です。医療従事者の心のケアも必要
さらに重要な報告がありました。それは、このようなきめ細かなケアにあたっていた助産師さんや医療従事者自身の「心のケア」が必要となってきているということでした。心を強く持って、6カ月にわたって被災者に接してきた方々の心のケアが今、必要となっているのです。実際今回インタビューのさなかでも被災の状況やお母さんとの対応を思い出したのか、助産師さんたちが嗚咽する場面も何回かありました。心に「棘」が刺さったままなのでしょうか。ご支援ご協力をお願いします
ジョイセフは、引き続き被災地の妊産婦・女性や新生児への支援をしていきます。そして現場で働く助産師さんや保健師さんを始めとした医療や保健の専門家への支援もできる限り進めていきたいと思っています。皆さまの更なるご支援ご協力を宜しくお願いいたします。
鈴木良一
(公益財団法人ジョイセフ常務理事・事務局長)