思春期保健ワークショップ (2013年5月20日~6月7日)

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2013.8.5

ピアエデュケーション1

ジョイセフでは毎年、若者のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖の健康/以下:RH)の向上を目的として、アジア大洋州、アフリカ、中南米のNGOや政府の思春期保健関係者を対象に、思春期保健ワークショップをJICA(国際協力機構)と協働で行っています。 今年は7カ国(メキシコ、スワジランド、ドミニカ共和国、レソト、ガーナ、中国、リベリア)から13名の研修員を迎え、2013年5月20日~6月7日の3週間にわたって思春期RHの向上ために何ができるかを考察しました。
グループワークの様子1

グループワークの様子

ツリーエクササイズ

ツリーエクササイズ

クローバーピアにて

クローバーピア・ルーム(栃木県)にて

世界では多くの思春期の若者たちが、望まない妊娠や出産、安全でない人工妊娠中絶、HIVエイズを含む性感染症のリスクに直面しています。それにも関わらず、性を語ることはタブー視されがちな風潮があり、正しい情報にアクセスすることは難しい状況にあります。それとは反比例するかのように、インターネットなどを通じて氾濫する性の情報。若者にとって、決して整った環境とは言えない状態が続いています。 近年、この状況を何とかしようと、思春期保健教育(性教育)の必要性が国際的にも重視され始めています。正しい情報とサービスの充実へ向け、多くの国がさまざまな取り組みを始めており、若者にやさしい環境づくりに向け、努力を重ねています。

しかしながら、これまでの性教育は「思春期」をあまりに大きく括りすぎ、発達年齢に応じて段階的に情報を提供することはあまりありませんでした。また、「○○にならないために」というスタンスからの教育が多いため、性のことをネガティブにとらえてしまう流れを生み出してしまっていることも否めません。 WHO(世界保健機関)によれば、思春期とは10~19歳の時期の若者を指します。一口に思春期と言っても10歳も違う世代がそこには所属しています。だからこそ、10歳には10歳の、19歳には19歳の、発達年齢に応じた教育が必要となるのです。また、思春期における性教育は性をポジティブにとらえるための入り口であることが理想的です。性やセクシュアリティには「光」と「影」の部分がありますが、自分を大切にし、好きな人と出会い、恋愛し、お互いを尊重し、という「光」の部分の理解があって初めて、「望まない妊娠」や「HIV」の話へとつながるべきですが、そこが抜けている場合が多いのがほとんどです。また、「自分の健康を自分の手で守る」という視点からも、自分は大切な存在であるという感覚が土台になると考えられます。
TICAD V サイドイベントにも参加

TICAD V サイドイベントにも参加

研修先での懇親会

研修先でのリフレッシュのひととき

栃木の小学校を視察

栃木の小学校を視察

このワークショップでは、開発途上国での思春期保健の向上を目的とし、性をポジティブにとらえられるプログラムづくりを意識した上で、

  1. 発達段階(6歳~14歳)に応じた適切な情報の伝達手法を理解する
  2. 思春期の若者にやさしいサービス提供手法を理解する
  3. 思春期保健プログラム推進のための関連機関の連携による「支援的環境づくり(保健・医療、教育、家庭の連携)」を理解する
  4. 思春期保健プログラム強化に向けた活動計画を作成し、各国地域で若者のRHを支援できる環境づくりを目指す

以上のテーマを重点課題とし、研修員全員で考察していきました。 研修員には、来日する前に事前活動として、レポートを作成してもらいます。そうすることで、自分の国が抱える思春期保健に関する課題が整理されます。

そして迎える日本での研修。 第1週目は、発達段階(6歳~14歳対象)に応じた適切な情報の伝達手法(スキル・アプローチ)、若者にやさしいクリニックでのサービスの提供について理解を深めます。それと同時に、事前に抽出しておいた自分の国の問題点を見直し、課題を確認し合います。また、多くの討議セッションを通じて、日本のみならず、7カ国が抽出した好事例から学び、それらを共有します。 第2週目は、県を挙げて思春期保健に力を入れている栃木県でフィールド視察。行政による施策や学校における取り組み、健康セクター(厚生労働省)と教育セクター(文部科学省)の密な連携体制などを学校や地域での取組みを実際に見て、若者のためのやさしい環境づくりに関する理解を深めます。 第3週目は、帰国後の活動計画を作成、発表してもらい、今回の学びを自国でどう還元できるかについて考察します。
日本家族計画協会のクリニックにて若者に親切なクリニック運営に触れて

日本家族計画協会のクリニックにて若者に親切なクリニック運営に触れて

ジョイセフアワーに参加

ジョイセフアワーに参加(5月23日。)各国の思春期の状況を共有

時にはブレイク! 日光観光でリフレッシュ

日光東照宮を訪ねて、日本の文化に触れる

3週間のワークショップを終えた研修員は、帰国後、所属組織において活動計画(素案)の実行可能性を検討したうえで、実施に向けて改定してもらいます。そして、半年後ぐらいを目安として、所属組織で練り直した活動計画(改定版)が承認され、実施に向けて動き出すことを、このワークショップの目標としています。

毎年、このワークショップを担当しているのが、ジョイセフ人材養成グループの浅村里紗(人材養成グループ プログラム・マネージャー)です。1999年に思春期保健ワークショップ第1回目が開催されて以来、ずっと担当を務めています。 これまでに出会った思春期保健分野の研修員の数は優に100人を超えます。中には、いまだに折に触れ連絡をくれる研修員もあり、自国の活動の進捗を伝えるなど、3週間にわたって互いに共有した情報が彼らの国で活かされていることがうれしいと話します。 研修後に行うアンケートを見せてもらうと、参加者からの言葉として「帰国後、自分の仕事に早速取り入れたい」「理論と実践を得ることができ、大変有意義な時間だった」などの声がありました。また、今後取り上げて欲しい課題として、「性の多様性とセクシュアリティ」が複数の参加者から挙げられていました。このことについて聞くと、「昨年まではほとんどなかった声です。とても興味深いですね。以後、一つのテーマとして取り上げていきたい」と、次回への意欲を語ってくれました。
がらくた座主宰・木島知草さんから、体を知る、相手を思う、命を想う「コミュニケーション・セッション」を学ぶ

がらくた座主宰・木島知草さんから、体を知る、相手を思う、命を想う「コミュニケーション・セッション」を学ぶ

研修最後は帰国後のアクション・プランを作成

研修最終日には帰国後のアクション・プランを作成