タンザニア・シニャンガでの活動レポート(2013年8月13日)

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2013.8.13

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ジョイセフは、2011年3月より国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業の資金と、ジョイセフに寄せられる個人・企業の皆さまからの寄附によって、タンザニア・シニャンガ州シニャンガ県ニンド郡の6地区30カ村で、地域と保健施設の連携によるリプロダクティブヘルス(以下:RH)サービスの強化を目的とする活動を展開しています(~2015年3月)。

シニャンガは保守的で多産が尊ばれている上に、家族計画に対する知識も低く、多くの女性は7~8人の子どもを産むことが一般的な地域です。しかも、妊産婦のおよそ半数が十分な医療ケアを受けられない状態で自宅出産をしています。これまで国際機関などからの支援がなく、取り残されていたことから、ニーズが高いと判断されプロジェクトが始まりました。

2013年3月2日から7月2日までジョイセフ開発協力グループの矢口真琴(プログラム・オフィサー)が現地へ派遣され、RHサービスの質の向上を目指して活動を行ってきました。今回はその進捗を報告します。

プロジェクト担当
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矢口真琴
開発協力グループ
プログラム・オフィサー

活動の主な内容は

① 家族計画および産前・出産・産後ケアを含む、正しいRH知識と情報を地域住民に届ける

② ニンド保健センターおよび診療所で提供するRHサービスの質の向上を支援する

③ 継続ケアのためのニンド保健センターおよび診療所と地域の間の連携体制を整える

の3つです。

これらについての概要は次のとおりです。

① 家族計画および産前・出産・産後ケアを含む、正しいRH知識と情報を地域住民に届ける

ジョイセフは本プロジェクト開始以来、RHに関する正しい知識と情報を地域に届けるために、家庭訪問や健康教育活動を行うボランティア・CBSP(Community Based Service Provider)89名を養成してきました。彼らは地域へ足を運び、住民に対して直接、家族計画の大切さや母子保健について教育を行う役割を担います。

今回の派遣では、最初のトレーニングを終えてから2年経ったCBSPに対して再研修を6日間行い、知識のブラッシュアップや経験共有を行いました。

CBSPに対して定期的に正しい知識と情報を共有することは、とても大きな意味があります。彼らが訪れる地域住民の中には、診療所に行く理由がわからなかったり、行きたくても夫に反対されたりして行けない女性が少なくありません。他にも、診療所まで遠い、雨が降ると道路が水浸しになって歩けないなどの理由から行けない人も多くいます。そのため、専門的な知識のある介助者もいないような状態で、自宅出産をする女性がなかなか減りません。だからこそ、村の人々の家庭を訪問し、診療所での出産の大切さ、家族計画、産前・出産・産後ケアを含む女性の健康についての情報を届ける彼らの存在は、RHサービスを強化するうえで欠かすことができません。

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② ニンド保健センターおよび診療所で提供するRHサービスの質の向上を支援する

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保健センターと診療所で行われるサービスの質がよくなければ、CBSPが利用を薦めることはできません。実際に、現地の診療所の中には分娩台さえもない診療所もあります。せっかく行ったのに出産の際に必要な物資がないことを理由に、さらに長時間歩かなければならない上位施設の保健センターへ行くよう指示され、仕方なく自宅出産を選択する妊婦さんも少なくありません。このことからも、基礎的な資器材の供与は妊産婦の命に関わる重要な活動のひとつと言えます。今回は、出産介助に必要な医療用手袋、コットン、妊婦さん用のマラリア予防薬などを提供しました。本来ならば、このような消耗品の補充は行政で行われることが理想ですが、政府の予算不足が深刻だったため今回はプロジェクトが行いました。

サービス向上の一環として、各施設を訪れた合計81名のクライアントにインタビューを実施し、クライアントの満足度調査も行いました。結果は現在分析中です。

また、保健施設で働く保健スタッフを対象としたRH技能研修(基礎的緊急産科ケアなど)や、昨年8月と11月に実施した5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底が続けて実施されているかどうか、診療所を訪れ状況の確認を行いました。必要があると判断された場合は指導を行い、さらなるRHサービスの向上に努めました。

プロジェクトでは、産前産後の体調管理や健診、家族(とりわけパートナー)のサポートの必要性、出産後の家族計画などについて、正しい知識を普及する教材(Safe Motherhoodのリーフレット、出産計画用紙、乳幼児カード、妊産婦カード)を作成し、診療所やCBSPを通じて地域へ配付する活動も行っています。とても小さなことのように聞こえるかもしれませんが、そういった教材にも、一人でも多くの妊婦さんに診療所での安全な出産を選んでほしい、正しいRH情報を伝えたいとの願いがこもっています。実際に、CBSPによって地域住民に手渡された出産計画用紙が、妊婦さんが診療所に行く動機づけとなり、診療所に対する心理的な距離を縮める役割も果たしています。

③ 継続ケアのためのニンド保健センターおよび診療所と地域の間の連携体制を整える

継続して質のよいサービスの提供を行うには、上位施設である保健センターと診療所、そして地域間での連携が大変重要となります。

プロジェクトではCBSPと保健スタッフの月例会合の場を設けるようにし、活動報告やCBSPが村で活動する上で直面する課題を共有できるようにしました。会合を今後も継続して行ってもらえるように、今回の訪問では各施設を回り、実施状況の確認を行ってきました。

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新たに! ホマンゴ診療所 母子保健棟の改修工事中

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このタンザニアのプロジェクトでは、ジョイセフを支援くださる方々からのご寄附によって、ホマンゴ診療所 母子保健棟の改修工事も現在行われています。水道が通ってない地域のため、新たに水道管の敷設工事が必要など、課題も多いプロジェクトですが、これが完成すればまたひとつ、質のよいRHサービスを地域の住民に届けられることになります。


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