人口問題協議会・明石研究会新シリーズ  「活力ある日本への提言-鍵を握るのは若者と女性だ」 第6回(前編)

2013年12月27日

  • 活動レポート
  • 明石研究会

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人口問題協議会・明石研究会では、2013年の共通テーマを「活力ある日本への提言-鍵を握るのは若者と女性だ」に基づき、関連分野の専門家・オピニオンリーダーの皆さまから所見を伺い、後日「提言」としてまとめていきたいと考えています。
2013年1月から開始している本研究会の第6回目として「日本型移民政策について考える:私の提言」のセッションテーマのもと、2013年11月29日に専門家・オピニオンリーダーの皆さまと共に、議論を深めました。

■ テーマ:日本型移民政策について考える:私の提言
■ 講 師:鈴木江理子(国士舘大学文学部教育学科准教授)
           林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長)
■ 座 長:阿藤 誠(人口問題協議会代表幹事、国立社会保障・人口問題研究所名誉所長)

発言の概要は次のとおりです。

阿藤 誠
本日の研究会にはお二人の研究者を迎えている。最初にお話しいただくのは国士舘大学准教授の鈴木江理子さんで、日本における外国人労働者や多文化共生の問題などに関する論文・著書も多い。では、どうぞお願いします。

鈴木 江理子
「日本型移民政策を考える」というテーマのなかで、「補充」外国人の可能性を中心に、まず移動局面に重点を置いて現状と課題をお話ししたうえで、「日本の選択」をみなさまと議論ができればと思う。

移民政策(外国人政策)には2つの側面がある。1つは国境通過に関する移動局面における外国人政策としての出入国管理政策であり、「好ましい外国人」と「好ましくない外国人」の選別による国境管理政策である。日本はこれまで、こちらの政策に重点をおいてきたと言われている。

2つめは、国境通過後の居住局面における外国人政策で、社会保障、政治参加、労働、住居、教育などに関するもので、日本では、こちらの政策が遅れているという指摘がされている。

在留資格は、「好ましい外国人」のリストであり、入管法によって規定される27の在留資格と入管特例法によって規定される「特別永住者」がある(図表1参照)。これらは、「活動に基づく在留資格」と「身分または地位に基づく在留資格」とに大きく2つに分けられ、いずれも合法的な滞在資格であるが、その権利が異なっている。

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1. 外国人受入れの現在

(1) 移動局面の外国人政策の流れ

従来の外国人受入れの論点は外国人労働者であり、労働省(現厚生労働省)は「第六次雇用対策基本計画」(1988年6月)で、専門的・技術的労働者は積極的に受け入れ、いわゆる「単純労働者」は慎重に対応する(受け入れない)とした。この基本方針は、今なお変わっていない。
これに基づいて、1989年12月に入管法が改定され(翌90年6月施行)、14の在留資格が積極的に受け入れるべき「専門的・技術的労働者」として示された(これらに該当しない職種が、入管法上いわゆる「単純労働者」に分類されているが、その定義は明確ではない)。

2012年5月には、グローバル化に対応し、日本の活力を維持するために、「高度人材」に対するポイント制による優遇制度が導入された。高度人材に対しては、複合的な在留活動の許容、一律「5年」の在留期間の付与、永住許可要件の緩和、(一定の条件のもと)親や家事使用人の帯同の許可などが認められることになった。

(2) 外国人受入れの現状
1) 外国人労働者(就労を目的とした外国人)

2012年末現在、専門的・技術的労働者は200,140人(在留外国人の9.8%)で、積極的に受け入れるという政府方針にもかかわらず、その受入れは進んでいない。しかも、以前は、専門的・技術的労働者のなかで「興業」が34.3%と高い割合を占めていたが(64,642人、2004年末)、アメリカ政府の批判を受け(米国務省『人身売買年次報告書』)、急速に減少した(0.8%、1,646人、2012年末)。
なお、12年に導入された高度人材は、わずか316人である。

2) 身分または地位を根拠とした外国人

これに対して、2012年末現在、身分または地位を根拠とした外国人は1,356,144人で、在留外国人の66.7%を占めている。
彼/彼女らの受入れは、国会などでの議論を経ることなく拡大されている。例えば、89年改定入管法で、在留資格「定住者」(就労に制限のない在留資格)が新設され、90年5月の定住者告示で、日系三世とその配偶者、未婚未成年の子などが、この在留資格に該当することが示された。これが、のちに日系南米人の急増をもたらすこととなった。

 

 

一般的に、外国人(移民)受入れには2つの原理がある。1つは、ナショナルな国益レジームであり、専門的・技術的労働者、留学生など、業績(能力)によって選抜される外国人である。もう1つは、トランスナショナルな人権レジームであり、日本人の配偶者や子ども、難民など、帰属(属性)による選抜される外国人である。前者については、何が国益であるかの議論が交わされたうえで受入れの是非が決定されるが、後者は、人権重視の視点から、議論の必要なく受入れが認められることになる。

身分または地位を根拠とした外国人は後者に該当する外国人である。ゆえに、議論されることなく受入れが拡大されているのであるが、業績(能力)に関してはブラックボックスな外国人であり、「労働者」となりうる外国人である。つまり、政府の基本方針にかかわらず、実際には、日本は「専門的・技術的労働者」以外の労働者を受け入れているのである。

(3) 研修・技能実習制度
1) 制度の展開

研修・技能実習制度の目的は、途上国に日本の優れた技能・技術・知識を移転するという国際貢献である。
「研修生」は、学ぶ者であって、労働者ではない。89年改定入管法で、在留資格「研修」(←旧「4-1-16の2」)が新設され、翌90年8月の大臣告示で団体監理型が導入されたことによって、中小企業でも受入れが可能となった。

1993年4月に、研修で修得した技能等を習熟するために、研修終了後に「技能実習生(労働者)」として働く技能実習制度が創設された。
最長期間の延長(1997年4月)など、研修・技能実習生の受入れ要件が次第に緩和され、それにともなって、「安価な労働者」受入れ制度としての機能が拡大し、不正等の問題が顕在化した。弁護士やNPO/NGO関係者など、当該制度の廃止を求める声もあったが、09年改定入管法(翌10年7月施行)で、それら問題への一定の対応をするとともに、在留資格「技能実習」が新設された。つまり、制度は存続が選択された。

2) 「労働者」としての技能実習生

つまり、専門的・技術的労働者しか受入れを認めないという方針(タテマエ)にもかかわらず、技能実習制度のもと、「労働者」として、専門的・技術的分野に該当しない職種で就労する外国人を受け入れているのである。2012年末の技能実習者は176,402人(在留外国人の7.4%)で、専門的・技術的労働者の受入れに迫る数となっている。

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図表3に示すように、団体監理型の創設によって、中小・零細企業でも受入れ可能になったことから、現在では、従業員10人未満の事業所での受入れが約半数を占める。
さらに、技能実習生は、安価で若い労働者であり、自由な転職が認められていないローテーション型の単身労働者である。雇用主にとっては、一定期間の安定的な労働力確保が可能となり、受入れ社会にとっては、定住化にともなう社会的コストが回避できる、都合のよい労働者なのである。

2. 外国人受入れの今後

(1) 受入れをめぐる新たな議論

2000年頃から外国人受入れに新たな論点が登場する。1つは活力を維持するための高度人材の受入れと、もう1つは人口減少による労働力不足に対応するための外国人労働者の受入れである。

1) 「新たな外国人労働者」の受入れ

2005年3月に策定された法務省「第三次出入国管理基本計画」では、「出入国管理行政としても、人口減少時代における外国人労働者受入れの在り方を検討すべき時期にきている」として、「現在では専門的、技術的分野に該当するとは評価されていない分野における外国人労働者の受入れについて着実に検討していく」とある。

2006年頃から、各省庁より外国人労働者受入れに関する報告書等が提出され、これまで受入れが認められてこなかった分野での外国人労働者受入れの検討が始まった。「単純労働者」という言葉は使われていないが、従来の線引きを変更し、これまで受け入れてこなかった外国人労働者の受入れを検討するものである。

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2) 「移民(注1)(新たな外国人住民)」の受入れ

2008年には、「移民」受入れに係る提言が、自民党と日本経団連から発表された。
自民党移民国家プロジェクトチーム(代表:中川秀直)は、「育成型」移民政策を提唱し、今後50年間で1千万人規模の移民を受け入れ、移民立国による日本の活性化を提言した。また、グローバルタウンを創設し、農林水産業等の第一次産業や人材確保難に陥っている産業・地域活性化事業の推進を求めた(「日本型移民政策の提言」2008年6月)。

日本経団連は、労働力不足に加えて、働き手の地域偏在化を人口減少社会の問題として指摘し、日本型移民政策(受け入れた外国人の定住化)の検討に言及した(「人口減少に対応した経済社会のあり方」2008年10月)。

上述の2つの報告書は、「移民」という挑戦的な言葉を使用することによって、労働力(生産活動のみ行う外国人)としてだけでなく、消費者として、衰退する地域社会を支える住民(生産活動と再生産活動の両方を行う外国人)として外国人の受入れが必要であることを提起した。

しかしながら、2008年秋のリーマンショックにともなう景気後退、2011年の東日本大震災などによって、ようやく始まった「新たな外国人」受入れの議論が停滞してしまった。
けれども、日本の人口構造とその将来推計を勘案すれば、今後実際に受け入れるかどうかにかかわらず、「新たな外国人」受入れの「議論」を広く行うことは喫緊の課題であろう。

注1:「移民」の定義は明確ではないが、従来、日本政府は永住を前提として受け入れる外国人を「移民」と捉えており、その意味では日本は移民を受け入れていない。すなわち、「永住者」の在留資格をもつ新規入国外国人は存在しない。一方、近年では、「移民」の定義を拡大し、「移民」受入れの必要性を問う提言が提出されている。

(2) 「新たな外国人」受入れに向けて
1)受入れ国にとって

「新たな外国人」の受入れを検討することに対して、多くの日本人はさまざまな「不安」を抱いている。つまり、日本人の労働条件の悪化、景気停滞期の失業、外国人の定住化による社会コストの増大、地域社会におけるトラブル、治安悪化といった「問題」を引き起こす「恐れ」があるのではないか、といった「不安」である。たとえ、統計的に分析すれば、外国人の増加と治安悪化とは無関係であったとしても、漠然とした「不安」を感じる日本人が少なくない。
それゆえ、日本人が抱く「不安」を除去あるいは軽減するためには管理強化が必要だとされ、2007年10月には、就労管理としての外国人雇用状況届出制度が、2012年7月には、在留管理としての新しい在留管理制度が導入された。

2) 送出し国にとって

「新たな外国人」受入れを検討する際には、頭脳流出等、送出し国の視点からの検討も必要である。送金による経済発展はあまり期待できないという報告もある。

(3) 「補充」のための受入れ政策の検討

国境管理は国家の領分であるが、入国後、彼/彼女らが実際に働き、生活するのは、それぞれの地域である。さらに、日本の人口構造は、地域によって大きく異なっており、外国人を直接必要としているのは、特定の地域であり、地域にある特定の事業所や大学などである。それゆえ、「地域」の視点から「補充」外国人の可能性を考える必要がある。

1) 移動局面における外国人政策:「労働力」か「移民(住民)」か
「労働力」の場合
この場合の受入れは、現行の専門的・技術的労働者型か技能実習制度型が基本となるだろう。
現行の外国人労働者(専門的・技術的労働者)受入れ制度には、労働需給を反映するシステムがないという欠点がある。一方で、技能実習制度のような制約的な受入れ制度の場合、労使対等が実現されにくく、労働者(外国人)の権利が侵害されやすい。また、安価な労働力を外国人労働者で「補充」することで、特定職種の賃金をはじめとする雇用条件を低下させ、結果として日本人労働者のさらなる「流出」を招くことになる。
「移民(住民)」の場合
日本は、移民として外国人を受け入れる経験をもっていないことから、どのような選抜基準を設定し、質と量のコントロールを行うかなど、制度設計において難しい議論が必要となる。
2) 居住局面における外国人政策

移動局面の受入れ制度のみでなく、居住局面においてどのように外国人を受け入れていくかも大きな課題である。

例えば、必要とされるコスト負担を誰が担うか。これに関して、日本経団連は、外国人の生活を支援するために、国、自治体、地域の企業による基金創設を提言している(「外国人材受入問題に関する第二次提言」2007年3月)。また、関西同友会は、日本語教員やソーシャルワーカーの育成などのために、外国人を雇用している、または海外展開している企業に一定の財源負担を求めることを提言している(「定住外国人の受入れ促進で、日本の再活性化を」2013年5月)。

さらに、必要とする外国人を地域に引き止めておくための「工夫」が必要である。地域住民として「育成型」の手厚い受入れをしたとしても、就業機会がなかったり、労働条件が悪ければ、日本人同様「流出」し、地域を離れるだろう。

受入れのための制度(ハード面)を整備するのみでなく、ホスト住民の意識に対する積極的な働きかけ(ソフト面)も必要である。
例えば、特定の個人や団体の利益のためではなく、日本社会にとって、地域にとって外国人が必要であるということを、ホスト住民に訴え、理解を求める必要がある。また、外国人に関する否定的言説(治安悪化、日本人の職を奪う、日本文化の崩壊・・・)の流布に対して適切な対処を行うことも求められる。

加えて、外国人の就労・生活を支援する地域NPO/NGO、外国人自身による自助組織やエスニック・コミュニティとの連携も重要である。

以上、いくつかの論点を簡単に列挙したが、日本の人口問題が自然増加だけでは解決しえない段階にあることを踏まえたうえで、人口減少に直面する地域を維持するために「補充」外国人の受入れを選択するのであれば、相当のコスト負担と、「平等(日本人と外国人との間の制度的・実質的平等、労使対等)」の実現に向けたホスト住民の絶え間ない努力が求められる。

阿藤
ありがとうございました。鈴木さんには、日本の外国人労働の現状と課題についてお話しいただいた。次に国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長林玲子さんのお話をお聞きしたい。林さんは、10月31日に開かれた当研究所の第18回厚生政策セミナーの組織者として「国際人口移動の潮流」という問題提起をされていた。国立社会保障・人口問題研究所勤務の前に、セネガル保健省顧問など国際経験も豊富である。



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