GIRL meets GIRL College 第6回 狩野みき氏 「School 身につけたい クリティカル・シンキング術」
- レポート
2014.7.2
6月27日のGIRL meets GIRL Collegeは、狩野みきさんの講義の前に、ジョイセフの企画マーケティンググループの柴による、タンザニアの若者支援のプロジェクトの話から始まりました。
このプロジェクトが実施されている地域には、ダイヤモンドの採掘場があることから、多くの男性労働者が行き交い、買春やドラッグによる地元若者たちへの影響が深刻になっていました。これまでに、たくさんの女の子たちが望まない妊娠を理由に学校を退学させられたり、安全でない自己流の人工妊娠中絶によって命を落としてしまうなど、改善すべき健康問題を多く抱えていました。そこでジョイセフでは、2013年9月より若者に正しいリプロダクティブヘルスに関する知識を伝えるするプロジェクトを開始し、若者へのエンパワーメントを行っています。
柴は、「若者へのエンパワーメントは、将来への投資です。教育を受けた女性は自分の健康はもちろん、家族の健康を守ることができるようになります」と、プロジェクトの必要性、および若者支援の重要性を訴えました。
続いて、狩野さんによる講義「身につけたい クリティカル・シンキング術」へと移りました。
クリティカル・シンキングとは、一人よがりではない根拠に基づく意見を持つための思考法のことを指します。講義では、実際に受講生に「考え抜く作業」をしてもらい、物事をじっくりと注意深く吟味する方法について学びました。
狩野さんは冒頭、受講生たちに「自分の今描いているビジョンをもっと先に進める90分にしていきたい」と語り、クリティカル・シンキングのやり方について順を追って説明していきました。
考え抜くためのステップは以下の通り。
- ① 用意されたA4の紙に、宿題として考えてもらってきた「5年後にしていたいこと」を一文(肯定文)で書きこみます。
- ② 何のために①のことがしたいのか。目的を書きます。
- ③ ②の目的を達成するための手段を考え、5つ、6つ書きます。
- ④ ③番リストを実現したらどうなるか。シミュレーションしながら、起こりうる最善と最悪のシナリオをそれぞれに考えていきます。
- ⑤ 膨れ上がったリストを一つひとつ見直し、実行する自信のないものを手段ごと消していきます。
このワークでもっとも大切なことは、誰にも気兼ねすることなく、本当の自分に正直に向き合うこと。そのため、講師にさえ、本人が希望していない場合は共有する必要はありません。
とにかく、「じっくりと自分と真正面から向き合うことが大切です。今日はとても静かな講義になると思います」と狩野さん。
その言葉通り、狩野さんがプロセスの説明をする以外は、ただただ自分と向き合う時間に当てられました。受講生全員が紙に向かい、ひたすら自分の考えを書き綴る作業が続きました。
自分と向き合う作業の中で、狩野さんが受講生に考えるヒントとして語った言葉の中に、
「やろうとしていることに対し、本当に自分で納得がいっているか?意地悪な意見を自分自身に3回は問い直してほしい」
「自分じゃない自分を演じたくて、嘘をついてしまうことも。でも、ここでは自分に正直になって、家族や自分によるラベルづけは取り払ってください」
というものがありました。
今回の5つのステップを通して行うと、最終的にリストには2つ、3つしか残らないそうですが、中にはリストを消す作業ができない人も。その場合は、リストの内容が似通っている、もしくは最悪のシナリオを再度考える必要があるということでした。
「人生は決断の連続」と、狩野さん。しかしながら、何かを始めるとき、本当の理由や目的を突き詰めずに始めてしまい、後から決断が間違っていたと思うことは少なくありません。その証拠に、事業に失敗した人にその理由を聞くと、95%は「よく考えなかったから」と答えると言います。だからこそ、狩野さんは、自分がやろうとしていることの真の理由、つまり自分が本当に叶えたいことは何なのかについて向き合うことの大切さを説きました。
さらに、⑤のステップで自分の感情が多分に入ることに触れ、「人は感情に始まり、感情に終わるもの。だからこそ、感情の伴わない計画は、成功しません。クリティカル・シンキングは、その感情と感情の間を理屈で埋めるものと理解してもらえたら」と語りました。
そして、最後に、「考え抜いても、決断が難しい岐路に立たされた時には……」と、最善の対処法を伝授してくれました。
『選択の科学』の著者として知られるシーナ・アイエンガー教授(コロンビア大学)は、その著書の中で、人は重大な選択を迫られた時、決定権を専門家(第三者)に委ねたほうが後から悩まないという研究結果を示しています。
それを踏まえ、「どんなに考えてもわからなかったときは、どうぞ専門家に聞いてください。自分を決して責めないで」と温かなメッセージを残し、この日の講義を終了しました。
90分間、じっくりと自分と向き合う作業に没頭してきた受講生も、この対処法にはホッとした表情を見せていました。
これでもかといわんばかりに自分と向き合った時間を過ごした受講生からは、
- 「これからの身の振り方に迷っていたところだったので、今まで思い描いていた目標について様々な角度から考えることができ、自分自身の気持ちを客観視できました」
- 「自分の感情を整理できて良かった」
- 「考えているようで、普段あんまり深く考えてないことがわかった」
とのポジティブな声が多数上がりました。
苦しい作業の中から、見出した答えに驚いたり、納得したり。会場には心地よい疲労感と共に、充足感が満ちていました。
その他の講義はこちら
http://www.joicfp.or.jp/jp/2014/03/31/22267/