ミャンマーでの調査取材レポート~妊産婦保健推進に向けたコミュニティの人的資源

2014年7月24日

  • 活動レポート
  • ミャンマー

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ミャンマーで2014年2月よりエヤワディ地域チャウンゴン・タウンシップで実施されている、JICA草の根技術協力事業(草の根パートナー型)「農村地区における妊産婦の健康改善のためのコミュニティ能力強化プロジェクト」の一環として、技術移転グループ(J_CEU)の吉留が2014年5月11日から6月9日まで出張してきました。目的はコミュニティにおける潜在能力を引き出すために、既存の組織やネットワークについて調査し、プロジェクトにその活用を提言することです。

ミャンマー版「母推さん(母子保健推進員)」の導入

ミャンマーでは、2005年から日本由来の「母子保健推進員制度」をとり入れています。女性ボランティアの母子保健推進員(日本では、「母推さん」と呼ばれる)が妊産婦さんを家庭訪問し、妊産婦保健に関する正しい知識や情報の提供を行い、必要なサービスを受けられるように支援して、妊産婦および女性のリプロダクティブ・ヘルスの向上に寄与しています。ジョイセフはミャンマー保健省と共に、JICAの支援を得て、この制度が地域に定着することをめざして、現地での活動を支えてきました。

この制度がミャンマーで導入される背景になったのは、2004年にJICAの委託でジョイセフが行った母子保健の研修です。この研修に参加するために来日していたミャンマー保健省の職員が、和歌山県の母推さんの活動に感激し、自国でも採用したいと熱望したというエピソードがあります。

その後ミャンマーで始まったプロジェクトを通じて、北シャン州の2つのタウンシップ(チャウメー/ナウンチョー)で「母子保健推進員制度」が開始されました。現在このシステムは保健省主導で、全国32のタウンシップに拡大しています。2010年には、新たにチャウンゴン・タウンシップも実施地区として選ばれ、すでに育成された母推さんが助産師さんと妊婦さんを結ぶ架け橋として活躍し始めています。ミャンマー版母子保健推進員制度は、30世帯に1人の割合で選ばれた女性ボランティアを育成し、家庭訪問を通じて、産前産後健診や予防接種といった、妊婦さんに必要なサービスの紹介とその活用の啓発を行います。緊急時には村長らと協力して、医療施設への搬送も支援します。任期は2年間。再任も可能です。

母推さんによる家庭訪問の様子

母推さんによる家庭訪問の様子

コミュニティの人的資源発掘のための調査取材

この活動を根づかせる鍵となるのは、地域住民の理解と協力を得て、コミュニティ全体が一丸となって、妊産婦や女性がいつでも必要なときに適切な保健サービスを利用できるような環境づくりです。そのために、今後はどんな人を、どのように巻き込んで支援活動を強化していくべきか、2つの村で調査取材を行いました。その結果、母推さんの活動をより多くの人が支えるシステムの強化としては、家族やコミュニティのリーダー、トレーニングを受けた伝統的助産師や、保健知識のある影響力のある人、地元消防団の団員の巻き込み等がさらに必要だということが分かりました。

また緊急事態が起きたときの搬送用の輸送手段や燃料代等の寄付を集めるなどのサポートは行われていますが、常設の支援システムはまだ整っていない、保健分野以外で活動しているコミュニティ組織の参加が少ない、そして個人やグループに対する情報伝達活動は行われているけれど、広くコミュニティの人々に情報伝達する活動が少ない、という傾向が見られました。

コミュニティリーダーへの調査取材から、新たな人的資源が明らかに

コミュニティリーダーへの調査取材から、新たな人的資源が明らかに

地域住民主体の妊産婦の健康推進活動に向けて

調査取材が終了した後、5月末には総勢70名を超す村の代表参加者による、コミュニティアクションプラン策定ワークショップを開催しました。その中で、今回の調査取材で判明したコミュニティにおける人的資源の候補について発表し、計画づくりに役立ててもらいました。

このワークショップを通じて、8つの活動計画が作られました。これまで妊産婦保健に直接かかわりのなかったコミュニティの人材や組織が計画に組み込まれ、また活動の場所も、普段村の人々が集まる場所を活用する等、より多くの村人たちが妊産婦保健の改善に参加する可能性を広げる計画になっています。今後は計画に沿って、コミュニティ参加型による妊産婦の健康改善活動に力を入れていくこととなります。

上記の調査取材と同時に、コミュニティ活動がより効果的に行われていくように、妊産婦保健に関する既存の教育教材を、保健省やNGOなどから約80点収集し、その中から、このプロジェクトの目的に沿った、コミュニティの人たちにとって使いやすいと思われる教材36点を選び、その活用を提言しました。各教材について、内容・言語・サイズ・素材・想定される使用者・対象者・利用に適した活動等、19項目について説明を記載したリストを作成しました。今後、このリストを基に、プロジェクトで活用していく教材が選ばれ、効果的な使用についての研修も行われる予定です。

5月末に行われたコミュニティアクションプラン策定ワークショップでは、活発な意見交換が行われました

5月末に行われたコミュニティアクションプラン策定ワークショップでは、活発な意見交換が行われました

ミャンマーこぼれ話

今回、一年ぶりのミャンマー訪問だったという吉留に訪れた印象を聞くと、「物事が動いている!」と。数年前は、ネット環境が悪く、電話回線を使って行われていたメールのやり取りも、今や街中のカフェや地方のホテルでもWi-Fi利用が可能になっていたり、スマートフォンも昨年に比べてずいぶん街中に出回っていたりする印象を受けたとのことです。

また、地方分権化が進むミャンマーでは、タウンシップごとに予算が割り振られるため、実行分配を決定するコミュニティのリーダーに対して保健分野の重要性を訴え、予算の確保を促すことが今後重要になってくるだろう、ということでした。

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