ワンストップサービスの拠点が完成 -ザンビアの妊産婦・新生児の健康改善のための新たな歴史が開かれた

2015年9月14日

  • 活動レポート
  • ザンビア

拠点施設開所式当日

2015年9月3日ザンビア共和国コッパーベルト州ムタバ地区は、さわやかな朝を迎えました。この日のために集まってきた1000人近い住民たちの歓喜に包まれました。近隣の村にまで響き渡るような大合唱と、多数の村人が参加した踊りの輪が広がりました。記憶に残る感動的な妊産婦・新生児保健ワンストップサービス()の拠点施設の開所式となりました。

ムタバ地区保健センターのサイト(敷地)にその付属施設として、母子保健棟(分娩棟)、マタニティハウス(出産待機ハウス)、ユース(若者)センター、助産師の居住棟の建築群の一括開所式。ザンビア側からはチサラ地域開発・母子保健副大臣、日本側からは小井沼紀芳駐ザンビア特命全権大使、そしてザンビア政府の保健省、地域開発・母子保健省等の関係者が参加し、多くのスピーチで住民に祝意と激励の言葉を贈りました。いずれも、妊産婦や新生児が命を落とすことがないよう、健康改善のためのさらなる努力の必要性を訴え、この施設を母子保健の拠点としていこうという力づよいものでした。

村人たちが待ちに待ったワンストップサービスの拠点の完成は、ムタバ地区の歴史に新たな1ページが記されたと言っても過言ではありません。

*ワンストップサービスとは、一カ所に関連施設を集中し、そこを拠点とした包括的な妊産婦・新生児保健サービスや情報の提供を行うことをいいます

  • セレモニーでスピーチする小井沼紀芳駐ザンビア特命全権大使
    セレモニーでスピーチする小井沼紀芳駐ザンビア特命全権大使
  • 新しく建てられたユース・センター。現地のピア・エデュケーターたちの手によって壁画が描かれた。
    新しく建てられたユース・センター。現地のピア・エデュケーターたちの手によって壁画が描かれた。
  • (株)グライドエンタープライズの支援によって新しく建てられた水タンク
    (株)グライドエンタープライズの支援によって新しく建てられた水タンク
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プロジェクトの目指すもの

2014年12月にジョイセフが委託を受けて始まった、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の支援を得て、3カ年計画で開始された「妊産婦・新生児保健(MNCH)ワンストップサービス・プロジェクト」の一環で関連施設が建設されたものです。

このプロジェクトは、コッパーベルト州マサイティ郡およびムポングウェ郡の2つの郡を対象に助産師等の医療保健スタッフやSMAG(母子保健推進員)、ピア(仲間)エデュケーター(若者を中心にした仲間教育のピアたち)などの研修・訓練や再教育等も含めた活動計画をあわせて実施しています。質の高い包括的な母子保健サービスとリプロダクティブヘルス関連の情報を提供するワンストップサービスを目指しています。2016年と2017年にもそれぞれ2カ所に同規模の施設が建設されることになっています。これにより妊産婦・新生児保健(MNCH)のワンストップサービスの好事例がこの両郡から全国に発信されることが期待されます。

ザンビアとの連携協力

昨年2014年、ザンビアと日本は外交関係樹立50周年を祝いました。独立(1964年東京オリンピックの年)以来長い協力関係を育んできた両国は、さらに「人と人の交流」を通じた連携協力を目指しています。日本が提唱している「国際保健政策」や「人間の安全保障」などにおいても、とりわけ母子保健は優先度の高い課題として位置づけられています。このプロジェクトがザンビアの妊産婦死亡率や乳幼児死亡率の削減に向けて、多くの知見やヒントが提供できることを私たちは望んでいます。

ジョイセフは母子保健・家族計画を含むリプロダクティブヘルス分野の国際協力での幅広い経験と実績をもち、ザンビアの現地NGOであるIPPFザンビア(ザンビア家族計画協会:PPAZ)とも1985年以来30年にわたり、密な連携協力事業を行ってきています。本プロジェクトでは、政府機関であるマサイティ・ムポングウェ両郡の地域開発・母子保健局および保健局ともに密な連携でプロジェクトを実施しています。ジョイセフは、コミュニティや住民の主体的な参加が、「自らの健康を守る」活動や運動につながると確信しています。

コミュニティを重視

s-IMG_9955開所式で、私は「官民連携(Public, Private Partnership・PPP)」にコミュニティ(Community)を加えた「CPPP」を提唱しました。住民が与えられるサービスを待つのでなく、積極的に自らの健康を守り、推進するための主体性(オーナーシップ)を、このプロジェクトを通して学習して欲しいと思っているからです。CPPPをこのプロジェクトの基本的な理念としています。
また、私たちはこの挑戦がザンビアの抱える課題の解決に一石を投じるとも考えています。ザンビアの農村地域は依然として厳しい状況にあります。周知のごとく、ザンビアは南部アフリカ開発共同体(SADC)、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)の主要メンバーです。地域の政治経済的安定に貢献していると高く評価されています。しかし、一歩農村地域に入ると農村の地域経済の発展に必要な道路や電力、安全な水の確保等のインフラ、および医療・保健や教育等の社会システムの不足ばかりが目立ちます。農村地域の貧困率も高いままで、とくに若者の失業率は場所によっては60%を超えています。今年が最終年である国連ミレニアム開発目標(MDGs)の保健目標指標の達成も遅れているのが現実です。

妊産婦の現状

プロジェクト対象地区であるコッパーベルト州マサイティ郡とムポングウェ郡では母子保健およびリプロダクティブヘルス・サービスを含む保健サービスが質的にも量的にも不足しています。課題のひとつとしては、妊娠・出産時の緊急搬送先としてのレファーラル病院までの距離が余りにも遠いことが挙げられるでしょう。マサイティ郡については、隣接するンドラ市にあるレファーラル州立病院(第3次医療施設)までの5つの地区からの平均距離は57 km。ムポングウェ郡には、郡内にレファーラル病院はあるものの、5つの地区からの平均距離は43 kmあり、合併症が起きても保健施設まで間にあわないし、道路事情も劣悪で、緊急搬送のできなかったケースが多数報告されています。

妊産婦死亡率や新生児死亡率・乳幼児死亡率を下げるためには、さまざまなアプローチが求められます。まずは「3つの遅れ」(決断の遅れ、搬送・アクセスの遅れ、医療ケアの遅れ)を一つひとつ地道に解決していくしかないのだと考えます。

助産師が足りない

医師不足は他の開発途上国と同様です。その上、妊産婦に最も近くにいてほしい保健人材、とりわけ訓練を受けた助産師の数が全く足りません。以前にも書きましたが、マサイティ郡では人口約14万人に対して12人(17保健施設に配属)、ムポングウェ郡では人口約10万人に対して24人(16保健施設に5人配属、19人は2病院に配属)となっています。村の保健施設についても、保健人材の不足、出産に必要な基礎的な医療機材や医薬品の不足、保健医療従事者の知識や技術の不足が課題として挙げられます。あわせて保健施設でのサービスの質の低いことなども報告されています。また、助産師等の医療保健従事者が農村に居住することを好まないこともひとつの原因とも考えられます。助産師は、駐在型なので居住環境の整備が重要です。

このような状況下では、当然、医療保健施設での出産の割合も低く、プロジェクトの開始時点で平均31.5%と、ザンビア全体の保健施設での分娩割合48%(ザンビア保健統計調査2007年)より低い状態が長く続いています。また十分なセクシュアル・リプロダクティブヘルス(SRH)サービスや適切な知識・情報が不足しているために、住民は時として地域の伝統的助産師や祈祷師に頼り健康リスクをさらに高めているのです。さらに、若者への働きかけが不十分で、保健施設での若者へのサービス受け入れ態勢も不十分なこともあり、15歳から19歳までの十代の妊娠や望まない妊娠や出産も問題となっており、若者に対するアプローチも課題となっています。十代で母親になることは農村地域では普通の出来事なのですから。

また、リファーラルシステム(緊急産科ケア)も今後課題となると考えています。また、早期に異常を見つけ、適切にリファーラル病院まで搬送できるかなど、今後この地域で関係者が対策を詰めていくことになっています。そのひとつが救急車ですが、この開会式席上で近い時期に配備できることが報告され、参加者から拍手が起こりました。

日本人の温かい心が集まる

このような課題を一つひとつ解決していくことが、このプロジェクトに与えられた使命です。しかし、ジョイセフやIPPFザンビアのみでできることではありません。本プロジェクトは日本政府の支援を得ていますが、あわせて多くの日本の企業や団体、ジョイセフフレンズをはじめ多くの個人の有志の方々からのご協力もいただいています。いま、ザンビアのマサイティ郡やムポングウェ郡の農村地域に「日本の人々の温かい心」が集まっています。思いは「私たちはお母さんと赤ちゃんの命を守る」です。

2015年9月、ザンビア・ンドラ市にて報告者・鈴木良一

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