【平成29年度人口問題協議会・第2回明石研究会】 「国連世界人口推計2017年版」をどう読むか(前編)

2017年8月17日

  • 活動レポート
  • 明石研究会

世界人口は今から30年前の1987年に50億人に達しました。現在、世界人口は76億人で、依然増加を続けており、2050年には98億人と推計されています。
国連はほぼ2年おきに人口推計を発表しています。2017年6月21日に国連が発表した「世界人口推計2017年版」について、明石研究会では、世界人口の将来について分析報告と討論を行いました。
今なお増加傾向にある世界人口は、特にアフリカ諸国が高い人口増加率を示しています。人口構成では、開発途上諸国は巨大な若者人口を抱えつつも、どの国にも例外なく人口高齢化の波が押し寄せています。

日 程:2017年7月31日
テーマ:「国連世界人口推計2017年版」をどう読むか
発表者:阿藤 誠
(国立社会保障・人口問題研究所名誉所長、人口問題協議会代表幹事)

講演の概要は次のとおりです。

阿藤 誠

次の5つの項目に沿ってお話ししたい。いずれも主要資料は、
United Nations Population Division, World Population Prospects, the 2017 Revision ( https://esa.un.org/unpd/wpp/Download/Standard/Population/ )。

  1. 世界人口の増加:アフリカ人口のシェア拡大続く
  2. 地球規模の高齢化:ユース・バルジ/人口ボーナス
  3. 人口増加・高齢化-出生率低下が決め手
  4. 国際的な移民の動向
  5. 世界人口推計の上方修正は止まったか?

 

1.世界人口の増加:アフリカ人口のシェア拡大続く

今回の人口推計によると、世界人口は世紀末に110億人を超える。
世界全体ならびに開発水準別人口の推移(中位推計による)は図1に示すとおりで、前回2015年推計の傾向とほとんど変わらない。

注:開発途上国は世界銀行基準で一人当たりGNI がおよそ11000ドル以下の国。世界193カ国中153カ国。
後発開発途上諸国(LDCs)は、そのうち国連開発計画委員会が3基準(内ひとつは一人当たりGNIが992ドル(2012年))未満)に該当すると指定した国。2017年に47カ国。

 
① 世界人口は2015年現在74億人。過去12年間で10億人増加した。今後13年で10億人増加し、2055年には100億人を超え、2100年には112億人となる。

② 2100年までの世界人口増加(38.0億人)の99%は途上地域で起こる。

③ 途上地域の中でも後発途上諸国(48か国)の増加は大きく、2015年の9.6億人から2055年の21億人、2100年の32億人に増加する。

出生率仮定の違いによる世界人口の推移と開発水準別人口増加率

将来的な世界人口の推移は、出生率の仮定値の違いによるところが大きい。出生率を低位・中位・高位というシナリオを仮定してみると、2100年における世界人口は、出生率中位推計(将来の合計出生率(TFR)が2.1に収斂すると仮定)の112億人に対して、出生率高位推計(将来のTFRが中位+0.5と仮定)では165億人、出生率低位推計(将来のTFRが中位‐0.5と仮定)では73億人と大きな違いが出る。

世界の開発水準別の人口増加率は、次のような特徴をもつ。
① 世界全体の人口増加の勢いは1960年代の後半(年率2.05%)をピークとして以後弱まってきており、直近(2010-15年)では年率1.19%(8300万人)である。

② 世界人口は、今後世紀末に向けてゼロ成長に近づいていくとみられているが、後発開発途上諸国の増加率は大きく、直近で今なお2.39%である。

世界の主要地域別人口の推移

世界の主要地域別人口の推移を見ると図2のようになる。

グラフからわかるように、アフリカは最大の人口増加地域である。
① 現在最大のアジア人口(2015年で44.2億人)は2055年の52.7億人をピークに減少を始める。
 
② それに対して、アフリカの人口は直近の11.9億人から急激に増加を続け2100年には44.7億人に達し、アジア人口に接近する。
 
③ ヨーロッパ、ラテンアメリカの人口は今後減少時代に入るが、北米の人口は増加を続ける。
アフリカの人口シェアの拡大が顕著であり、直近ではアジアは世界人口の60%、アフリカは16%にとどまるが、2100年には43%対40%となる。

世界の主要地域別人口増加率

次に世界の主要地域別人口増加率をみると、アフリカの増加率が著しく高い。

① 主要地域別には、アフリカの人口増加率は直近で年率2.59%であり、アジア、ラテンアメリカ及びカリブ海諸国(以下ラ米)を大幅に上回る。

② ヨーロッパはおよそ10年後、アジア、ラ米は2060年代に人口減少が始まるが、アフリカは今世紀末でも0.66%で増加する。

人口大国10カ国の動向

世界の国別人口トップテンの動向を見ると、図3のように近々中国とインドの人口が逆転する。またナイジェリアの伸びが著しい。1950年の人口ランキングでは3位の米国のほか、日本の5位を含むドイツ、英国、イタリアなど5つの先進国が10位以内に入っていたが、2100年には米国のみとなり、逆にアフリカが5ヵ国を占める。

① 今日1位の中国(14.0億人)は2029年に14.4億人でピークに達し、以後2100年の10.2億人まで減少する。

② 2位のインド(13.1億人)は2024年に中国を上回り、2061年の16.8億人まで増加を続け、その後減少に転ずる。

③ 世界の人口10傑のうちアフリカ諸国は、現在は1カ国、2100年には5カ国となる。

④ 今日7位のナイジェリアの人口(1.8億人)は2050年には4.1億人で3位、2100年には7.9億人となり、なお増加を続けるであろう。

人口大国のうち、具体的にわかりやすくするために中国、インド、ナイジェリアの年平均人口増加率を比較してみる。出生率でいうと中国は先進国並みで人口増加率も0.5%ほどであるが、インドは人口転換途上の国の典型で増加率は1.5%くらいである。ナイジェリアはサハラ以南のアフリカを代表する高出生率の国で、増加率も2.7%の高さである。

2.地球規模の高齢化:ユース・バルジ/人口ボーナス

人口構造は年齢3区分でみるのがわかりやすく、現在地球規模の人口高齢化が急速に進んでいると言える。

① 世界人口は1950、60年代に若年化したが、その後は生産年齢人口割合が高まり、今日、人口ボーナス期を迎えている。同時に、地球規模の高齢化が急速に進行している。

② 世界人口のメディアン(中位数)年齢は1970年の21.5歳を底にして上昇し、2015年に29.6歳となった。今後も上昇を続け2100年には41.6歳になる。

③ 先進地域は全体として高齢化が進み(2015年で高齢化率17.6%)、今後超高齢社会に向かう。開発途上地域全体としては、現在人口ボーナス期で、これから高齢化が本格的に進行する。
後発途上諸国は今なお極めて若い人口(2015年で子ども人口が40.1%)が占めており、人口ボーナス期は今世紀後半になる。

世界人口の年齢構造の推移と主要地域別高齢化率

世界人口の年齢構造の推移は、図4のようになる。


人口ピラミッドの型によって、世界全体の高齢化が読み取れ、2100年には釣り鐘型になっている(横軸はパーセントではなく実数)。

世界の主要地域別高齢化率は図5のとおりである。

ヨーロッパ、(北米)は超高齢社会に向けて急速な高齢化が進行中である。アジア、ラ米は人口ボーナス期にあり、本格的高齢化はこれから。アフリカの高齢化は今世紀後半以降に起こる。

人口ボーナス

人口ボーナスという言葉は、人口の年齢構造と経済の発展を結びつけた概念で、近年、経済人口学でよく使われている。
分子に生産年齢人口を、分母に非生産年齢人口(子どもと高齢者)にとった指標を逆従属人口指数と呼ぶが、それと一人当たりGDPとの相関を見たものが参考図1である。


資料:United Nations Population Division, World Population Prospects, 2015 Revision, https://esa.un.org/unpd/wpp/
The World Bank, World Bank Open Data, http://data.worldbank.org/

中国・インド・ナイジェリアの年齢3区分別人口割合の推移を比較すると、現在、中国は人口ボーナス期の最盛期で人的投資と外資の導入により経済発展に結びつけたが、高齢化社会が目前である。インドは人口ボーナス期に入りつつあり経済も緩やかに成長している。ナイジェリアは今なお子どもの扶養負担が著しく大きい社会であるが、石油資源が豊富であるためインドよりも経済成長が速い。

合計出生率と国家の脆弱性


資料:The Fund for Peace, Fragile States Index 2015 (http://fsi.fundforpeace.org/)
United Nations Population Division, World Population Prospects, the 2015 Revision
(http://esa.un.org/unpd/wpp/)
 
高出生率が続き若者集団の人口比が高くなると(ユース・バルジ)、経済発展が困難であるばかりでなく、治安の悪化なども含めて、国家の脆弱性が増すという見方がある。
 
*国家脆弱性指標(FSI): http://fsi.fundforpeace.org/
4個の社会指標、2個の経済指標、6個の政治指標からなる総合指標。178カ国について計測。

サハラ以南アフリカの典型例としてナイジェリアをみると、経済面では石油大国で1人当たり国民所得は上がっているが、格差是正政策指数(CRI)は世界152カ国中最低であり、国家脆弱性指標は世界178カ国中13位と高い。
 
*格差是正政策指数(CRI):https://www.oxfam.org/en/research/commitment-reducing-inequality-index
 
後編に続く

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