ブルキナファソでのプロジェクトが始まりました。

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2020.9.7

ヘッダー画像提供:KIMI財団

 
 国連人口基金(UNFPA)ブルキナファソ事務所とジョイセフ、KIMI財団、ブルキナファソ家庭福祉協会(ABBEF/IPPFブルキナファソ)がパートナーとなって実施する「若者の性と生殖に関する健康・権利の強化支援プロジェクト」の開始式が、2020年7月28日に同国首都ワガドゥグの国際会議場で行われました。
 開始式には、シカ・カボレ大統領夫人、アルファ・バリー外務・協力大臣やシメオン・サワドゴ国土行政地方分権化大臣など9人の閣僚、伊藤雅通臨時代理大使、UNFPAブルキナファソ事務所のオーギュスト・ジャン・マリー・ポニョン代表、国会議員や地方自治体の首長、プロジェクトの対象となる若者や保護者などが多数参加しました。ジョイセフからは理事長の石井澄江がビデオメッセージを送り、3年間のプロジェクトの開始に際し、これから人生のたくさんのドアを開けていくブルキナファソの若い人たちの今と未来を豊かにする環境づくりを、ブルキナファソの人びとと共に目指していくことを伝えました。(石井のビデオメッセージは、こちらでご覧いただけます。)
 伊藤臨時代理大使は、日本が推進するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:すべての人が、支払い可能な費用で、適切な保健医療サービスを受けられる状態)の重要性に言及し、ジョイセフが取り組むセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)は UHC実現に欠かせないとして、本プロジェクトへの期待を示しました。

開始式のようす(写真提供:KIMI財団)

フランス語圏アフリカでの新たなプロジェクト
 ブルキナファソは、人口約2000万人の西アフリカの内陸国で、マリ、ニジェールや、南はコートジボワール、ガーナなどギニア湾沿岸の国々と国境を接しています。公用語はフランス語ですが、人口の4割を占めるモシ人をはじめ、数多くの民族が住み、それぞれの言葉を話しています。ブルキナファソという国名は、モシ人の言葉で「誠実」を表す「ブルキナ」と、ディウラ人の言葉で「国」を表す「ファソ」を組み合わせて作られました。
 ジョイセフにとって、今回のプロジェクトはブルキナファソでは初めて、フランス語圏アフリカでは2件目です。その発端は2018年、同国のカボレ大統領の公式実務訪問賓客としての訪日の際に、大統領夫人にジョイセフの活動についての説明をしたことでした。この時、同国内の人々の健康のために活動するKIMI財団の設立者で理事長でもあるシカ・カボレ大統領夫人はジョイセフに強い関心をを持ち、ブルキナファソの若者、とりわけ少女たちの健康推進のために、ジョイセフの活動が役立つのではとの考えを示しました。
 翌2019年に、カボレ大統領ご夫妻はTICAD7(第7回アフリカ開発会議)に出席のため、再来日されました。そのときに、ジョイセフがブルキナファソでどんな活動ができるか、具体的な企画内容について、シカ・カボレ大統領夫人とお話する機会をいただきました。こうした経緯を経て、日本政府による無償資金協力とUNFPAの連携の下で実現したのが、今回のプロジェクトです。
 実施にあたっては、UNFPAとジョイセフに加えて、大統領夫人率いるKIMI財団、国際家族計画連盟(IPPF)の加盟協会であるABBEFが参加し、保健省、教育省などとも協力して進めていく予定です。

 ブルキナファソは、家族計画の普及に力を入れていますが、若年妊娠、児童婚、女性性器切除(FGM)などの課題が残っています。特に児童婚の問題は深刻で、今も女性の52%が18歳未満で結婚しています(出典:世界人口白書2020)。
 また、「女性が自分の体と生き方について、自分で決める権利を持つ」という考え方がまだ十分に普及していないことが、SRHRの実現を阻む壁の一つです。そこで注目されたのが、I LADY.です。
 I LADY.は「自分を大切に、自分のために行動し、自分のために決断する(Love, Act, Decide Yourself.)」をコンセプトに、日本の若い女性たちが性と生殖について自分で決断できるよう意識向上を目指すプロジェクトです。シカ・カボレ大統領夫人も、I LADY.のコンセプトを聞いて「自分で決めて行動することは大事ですね」と関心を示され、ブルキナファソ版のI LADY.教材を導入することになったのです。
 I LADY.を海外で展開するのは今回が初めてですが、ジョイセフは以前から海外でパートナー団体と共にピア・エデュケーションを実施しており、それを日本国内向けに発展させた活動がI LADY.です。海外プロジェクトの経験が日本の活動に活かされ、それが再び海外のプロジェクトとして展開していくという形で、ジョイセフにとっても新しい形の取り組みになります。

来日した大統領夫妻に面会したジョイセフスタッフ

若者を後押しする「親世代のリーダー」を育てる
 ブルキナファソでのプロジェクトの軸の一つが、「大人サポーター」の育成です。
 日本国内のI LADY.では、若い世代同士で情報を発信する「ピア・アクティビスト」を主に養成していますが、ブルキナファソではそれに加えて、若者の行動を後押しする親世代にもSRHRの理解者・支援者を養成。学校の先生や保健医療サービス提供者とともに、重要な役割を果たしてもらう方針です。
 ジョイセフはこれまでにも、フィリピンでは「親リーダー」、カンボジアではコミュニティの「大人サポーター」など、若者世代だけでなく、彼らを取り巻く大人が一緒に問題への理解を深め、課題解決に取り組む態勢づくりに取り組んできました。今回のプロジェクトでは「若者自身のエンパワーメント」「人権としてのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(SRH)」「個人が人権としてのSRHを選び取っていける環境づくり」の3つを柱としており、大人サポーターは環境づくりの軸として位置づけられています。
 プロジェクトの実施にあたり、ジョイセフからは吉留桂がコミュニケーション戦略の立案、ユース・アクティビスト(若者世代)と大人サポーター(親世代)向けの教材づくり、教材を活用したコミュニケーション活動の研修などの技術支援を行います。また、ジョイセフの開発協力プロジェクトにおいてモニタリング評価分野でアドバイザーとして活動するエマニュエル・オベンは、活動のモニタリングの仕組みづくりや調査実施への技術的な支援を担当します。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受けて、ジョイセフのスタッフは開始式に直接参加できず、今はまだ、ブルキナファソへの訪問は見通しが立っていません。そうした状況下でも、プロジェクトを進めるために2週間に1回の定期的なオンラインミーティングとメールなどでの密なコミュニケーションによって、現場でプロジェクトを実施する人たちが少しでも動きやすいように技術的な支援を行っていきます。
 現地のUNFPAやKIMI財団、ABBEFのスタッフとのやり取りを通して、吉留は「ブルキナファソのパートナー団体はとても積極的にコミットして、ジョイセフがこれまで他国で築いてきた経験に基づく提案を前向きに受け止めている。どのようにブルキナファソの文脈に合わせていくかを議論し、自分たちの活動に落とし込み発展させていくなど、一緒に仕事をしていてやりがいを感じる」と言います。ジョイセフはこれまでの38カ国での経験を活かし、ブルキナファソの新しいパートナーたちと対話を通じてプロジェクトを進めていく方針です。