研修員たちとオンラインでつながり、母子栄養改善研修を開催

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2020.12.11

 ジョイセフは2014年度から毎年、開発途上国の保健省などから行政官を受け入れ、課題別研修「母子栄養改善」を開催しています。しかし2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて、研修員を日本国内に受け入れることができません。そこで、インターネット経由で9カ国をつなぎ、1週間のオンライン研修とその後のフォローアップ、2021年に予定されている訪日研修を組み合わせる、新しいスタイルの研修運営にチャレンジしました。

 9カ国から集まった10名の研修員は、10月26日から31日までの6日間、ジョイセフの研修担当スタッフや講師を務める専門家とともに、オンラインのセッションに参加。ビデオ・オンデマンドによる講義とオンライン会議ツールを使ったディスカッションを交え、母子栄養改善政策の基礎や保健医療スタッフやボランティアを通じた地域での活動、民間企業との協力などについて学びました。

 その上で、自国の状況を踏まえて3日間、3週間、3カ月のスパンで目標を決めて活動するミニ・アクションプラン(MAP)を作成。11月2日から4日の3日間を、アクションプランの実行に向けた最初の活動に当てました。11月5日に行われたのは、3日間の活動結果を報告するセッションです。

 母子栄養研修のキーワードの一つは「1000日間の栄養改善」。世界にはScaling Up Nutrition(SUN)という 栄養改善の国際的な行動枠組があり、妊娠から生まれた子どもが2歳になるまでの1000日間の栄養改善強化は、その内の重要課題の一つです。ジョイセフは、JICAの委託を受けてSUN加盟国を対象に本研修を実施しており、現在まで延べ24カ国・81人に研修を実施してきました。

 例えば、母乳育児の強化は、SUNの一環です。いつでも衛生的な水を使って粉ミルクが用意できる日本と違い、多くの国で、生まれたばかりの赤ちゃんにとって、母乳は最も安全で貴重な栄養源です。カンボジアやタジキスタン、モザンビークなどからの研修員は、授乳コーナーの設置、母乳育児コーディネーターの育成や指導ガイドラインづくりへの協力を得るための声かけなど、母乳育児推進のための下地づくりに向けた調整を活動計画に含めました。
 また、大きな規模で母子栄養改善政策を実施していくためには、 保健施設や地域保健局の現場スタッフはもちろん、各ポジションの責任者や行政リーダーの理解も必要です。アクションプランの実行に向けた始動の3日間では、 研修員は全員同僚や上司、地域保健行政の責任者などと面会し、母子栄養改善の取り組みに関する強化策を説明しました。ガーナからの研修員は、地域の公衆衛生担当部長とオンライン会議を行い、地域保健委員会などへの情報提供について協力を取り付けたとのことです。

 研修員たちが、わずか3日で母子保健推進のキーマンとなる同僚や上司、セクターを越えた関係者に働きかけて支援や理解、提案を受けていました。この短い期間でなし得るものとは思えないほどの進捗に、担当したジョイセフスタッフは驚きとともに強い感銘を受け、研修の成果を実感しました。今後も、各国の状況に合わせて計画を修正しながら、研修員が各自目標達成に向けて活動を続けていきます。
 ジョイセフも、定期的にオンラインミーティングを通して成果を確認し、必要に応じて情報を提供するとともに、2021年には研修員たちを日本に招いてフォローアップ研修を行う予定です。