大使・国会議員と語る「ジェンダー平等と若者世代」開催報告

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2021.4.16

2021年3月31日水曜日、ジョイセフと#男女共同参画ってなんですかは、駐日欧州連合(EU)代表部主催の「ジェンダー平等と若者世代」の開催に協力しました。このイベントは3月の国際女性デー月間に合わせて、日本におけるジェンダー平等を進めていくことを目的に、衆議院第一議員会館とオンラインの同時開催(ハイブリッド式)で行われました。

本イベントにはEUをはじめ16カ国の駐日大使・臨時代理大使と、日本の各政党の青年部担当議員6名、さらに日本国内でジェンダーに関する活動を行う若者らが参加しました。当日は、第1部のみオンラインで公開し、およそ270名の参加がありました。
このイベントの模様はEU代表部のウェブサイトで公開されています。
EU代表部のウェブサイトへ

イベント当日は、世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2021年版の発表日でもありました。日本は156カ国中120位と、依然として非常に低いランキングとなっています。世界的にはコロナ禍により、これまで改善を重ねてきたジェンダー平等の成果が後退し、今の状況が続けば世界中でジェンダー平等が達成されるまで135年かかるとの報告がありました。

これを受け、イベントの主催者である駐日EU代表部パトリシア・フロア大使は、開会挨拶で「135年も待ってはいけない」という決意を力強く表明。続いて、自由民主党のあべ俊子衆議院外務委員長が「次の日本、次の世界を牽引するのが若者である」と若者たちを勇気づけました。その後、ジェンダー平等に関する5つのテーマについて、大使が各国の状況や取り組みを共有しました。

  • 駐日EU代表部 パトリシア・フロア大使

  • 自由民主党 あべ俊子衆議院外務委員長

アンナ・ヴァタマニュク モルドバ共和国臨時代理大使
―若者、教育、市民社会の役割について
法学部の学生時代に、「法学を勉強すれば裁判官のアシスタントや秘書になれていいね。裁判所の事務員にもなれるね」と言われたことがあります。弁護士や裁判官になるのは男性でなければならないという、ジェンダーステレオタイプがあったのです。若い世代の選択肢を狭める、このようなジェンダーステレオタイプを変えるために、私たち一人ひとりが行動を起こす必要があります。「女性がしてはいけない仕事」など社会にはありません。

イナ・レーペル ドイツ連邦共和国大使 
―女性への暴力、セクシャルハラスメント、性差別について
女性に対する暴力は世界中で発生しています。ドイツでも暴力のサバイバーを支援する様々な取り組みがなされていますが、暴力を予防することも重要です。そのためには社会に根深く残る「男性は支配的なジェンダーであり、女性を思い通りにすることができる」という考えを改めることが必要です。これを実現するには若者の教育が重要であり、また市民社会が大きな力を発揮することを期待しています。古い慣習を改め、誰もが平等で尊重されていることを子どもたちが実感できるような社会が必要です。

ランジャザフィ・ツィラヴ・マエリゾ マダガスカル共和国臨時代理大使
―政治における女性、政策決定のための正確な基盤について
女性の政治参加について、ジェンダー平等を牽引する国と、そうでない国の違いは何かと考えると、そのために行動しているか否かだと考えます。社会に構造的に存在する女性の活躍を阻む障壁が正しく認識され、男性がジェンダー平等の活動に参加し貢献すること、男女ともにジェンダー平等な社会作りに参加することが必要です。

メルバ・プリーア メキシコ合衆国大使
―女性の雇用、同一賃金、ガラスの天井について
女性に生まれた為に、同じ仕事をしていても低い賃金しかもらえない事や、均等な機会を得られない事が「当たり前」であってはいけません。賃金や雇用機会の差別を解消することは、女性が既存のガラスの天井を打破するために必要なのです。また、少子化問題とジェンダーに基づく賃金や機会の不平等には関連があります。それは女性だけが、家庭を取るか仕事を取るかの二者択一を迫られるからです。次世代の女性たちが、自らが目指す人間となれるよう、リーダーとしても母親としても一人の市民としても輝けるように、ガラスの天井を壊す必要があります。

ペールエリック・ヘーグベリ スウェーデン大使
―男性の役割、ワークライフバランスについて
ジェンダー平等は女性の問題ではなく、性別を問わず誰にでも関係する問題です。女性だけにジェンダー平等達成を押し付けている現状は腹立たしく思います。いくつか提案をさせてください。1つ目は会議に招かれた時、もし男性しか参加していなければ、それはなぜだろうと考えてください。合理的な理由がないのであれば、その会議は延期し必ず女性が参加するよう再調整してください。2つ目にあらゆる決断の場で、その決断により、男性と女性がどう影響を受けるのかを考えてください。、政治や経済の場であっても、友人や家族間の決め事であっても同じように考えて下さい。男女で受ける影響が異なるなら、その決断を再検討する必要があります。3つ目に、あなたが政治家であっても、外交官であっても、あるいは若者であっても、私たちは日々あらゆるメディアに囲まれています。メディアに触れるときには、誰がなぜそのニュースを発信しているのかを考えてください。スタジオで話しているのは誰か、誰がソーシャルメディア上で発言しているのか、なぜそれは男性なのか、女性が代わることはできないのか。4つ目、男性のみなさんは声を上げましょう。ジェンダーの視点から見て、何かがおかしいと思ったときには勇気をもって発言し、質問しましょう。

大使らの発言後に、出席した若者と国会議員が、どうしたら日本でジェンダー平等を進めることが出来るかについてコメントしました。

#男女共同参画ってなんですか 代表 櫻井彩乃さん
ジェンダー平等に関する教育を若者に対して行う事が重要だと感じました。あらゆる意思決定の場に若者を参加させること、また大人が若者の声を信じて、政策に取り込んでいくことが重要だと考えています。

NPO法人ピルコン理事長 染矢明日香さん
日本で性教育の普及・啓発と、緊急避妊薬へのアクセス改善に取り組んでいます。教育の重要性を再確認しました。自分の権利が侵害されていることにも気づかない若者が多くいます。人権について、また自分たちが持つ権利について、子どもの頃から教育する必要があると考えました。

一般社団法人fair代表理事 松岡宗嗣さん
マイノリティとマジョリティ双方の視点を持つことが重要であると改めて思いました。男性・女性だけでなく、周縁に追いやられやすいLGBTQの人々、女性の中でも貧困や、障がいを持つ方、難民や移民の人たちの声をどれだけ拾い上げられるかの重要性を感じました。若者の中にもそうした交差性の視線を持った人たちが増えています。より声を上げていくと同時に、政治の場で若者の声を聴いてくれることを期待しています。

牧島かれん衆議院議員(自由民主党青年局長)のコメント
参加した若者は、今日のこの会場でロールモデルともいうべき人に出会えたのではないでしょうか。各国の子どもたちに「政治家の絵を描いて」と頼んだらどんな絵を描いてくれるだろうかと考えました。日本の子どもたちは、スーツ姿にネクタイを締めた男性の絵を描く子が多いのではないでしょうか。外交官や大使の絵であればどうでしょうか。女性が就けない仕事はないと考えます。その中には政治家も含まれますが、ジェンダーギャップ指数を見ても女性議員がまだまだ少ない状況は、政治の責任です。多様性のある政治の現場を作りたいと考えています。

高瀬ひろみ参議院議員(公明党青年局次長)
若い人に声を上げていただき、政策に取り込むことを進めています。生理の貧困、同性婚の問題など、あらゆる場面に女性や若い人がいるという事が大事です。政治に女性が参加しやすいように障壁を取り除いていきたいと思います。

近藤和也衆議院議員(立憲民主党青年局長)
男女平等が当たり前の世の中になりつつあると思いますが、ジェンダー平等とはいったい何なのか、有権者の中でもまだ理解が広がっていないところがあるのではないでしょうか。選択的夫婦別姓が話題になっていますが、世の中で議論が進んでいくと良いと考えます。

吉良よし子参議院議員(共産党青年・学生委員会責任者)
昨今の女性蔑視を巡る問題から、日本には女性差別があるという事実を突き付けられているとわかります。コロナ禍において、女性が弱い立場に置かれていることも可視化されてきています。今こそ変えていかなければなりません。変える力になるのが、今日発言をしてくれた若者のような市民の声です。LGBTQのみなさんの権利向上、同性婚について、緊急避妊薬について、また#男女共同参画ってなんですかの運動を通して。第五次男女共同参画基本計画のパブリックコメントに多くの人の声が届いたのは大変画期的な事です。国会議員としてみなさんの声をしっかり届けていきたいと思います。

福島みずほ参議院議員(社民党党首)
日本のジェンダーギャップ指数が低く、世界で120位にとどまっているという事について政治の責任を非常に感じています。意思決定の場への若者や女性の参画をもっと進めていかなければと改めて決意しました。EUを初め各国の経験から学びながら、声を上げてくれた若者が提示する問題に取り組んでいきます。

第2部は、Zoom中継を終了し、会場での議論を継続しました。第1部とは逆に、若者3名が、選択的夫婦別姓、性教育の必要性、LGBTQに関する課題や、政策提言など自らの活動について発表。出席した大使や国会議員からコメントが出され、活発な意見交換が行われました。

イベント終了後も会場の熱は冷めず、若者と大使・議員の間で意見の交換が続きました。主催したEU代表部をはじめとする各国の大使や国会議員からも一様に、ぜひ若者との対話を継続したい、今回は時間が少なかったのでもっと若者の意見を聞きたいという声が寄せられました。

大使や国会議員から率直で力強い意見と、若者への応援の言葉が寄せられたことに、ジョイセフも大きな手ごたえを感じています。多様なジェンダー、背景、経験、意見を持つ人たちが集まり、議論を交わすことで、より良い未来を作り出すことができる、そのような期待が大きくなりました。

また、リーダーとして力を発揮する女性の大使や国会議員の姿は、次世代の若者のロールモデルとなったのではないかとも期待します。ジョイセフは今後も、各国大使館や国会議員と協力し、若者のアドボカシー(政策提言)活動を支援していきます。

大活躍の若者たち。左からNPO法人ピルコン理事長 染矢明日香さん、一般社団法人fair代表理事 松岡宗嗣さん、#男女共同参画ってなんですか 代表 櫻井彩乃さん