SRHRにJ(ジャスティス)の視点を【Women Deliver 2026参加レポート1/2】

2026.6.27

  • SRHR for ALL アクション!
  • 実施レポート

『SRHR for ALL アクション❕』チームは、2026年4月27日〜29日の3日間にわたってオーストラリア・メルボルン(先住民の言葉ではナーム)にて開催された国際会議『Women Deliver Conference(ウィメン・デリバー・カンファレンス) 2026』 (以下:WD2026)に参加してきました。日本におけるさまざまななSRHR課題の解決、とりわけ包括的性教育の導入・性暴力防止に向け多様な目的と視点を持って活動している私たちのミッションは、世界におけるSRHRの潮流を知り、同じ志を持つ人々とネットワークを構築し、日本での活動や支援に生かせるノウハウを学ぶことでした。

Women Deliver 2026の会場フラッグ

Women Deliverって?

Women Deliver(ウィメン・デリバー/以下WD)とは、ジェンダー平等・女性のエンパワーメント・そしてSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ/性と生殖の健康と権利)実現のため、2007年から3年ごとに開催されている国際会議です。今回は、世界189カ国から6,000人を超える人々が集まり、会議・分科会・展示会・交流会などさまざまなイベントを通じて学び合いながら連帯を深め、最後に『メルボルン宣言』を採択して終了しました。

2019年からWDに参加し、今回が3回目となる福田和子さん(#なんでないのプロジェクト)は、「ジェンダー平等に取り組む多くの人が集まります。市民社会で活動するアクティビストに加え、政府、国連、NGO、財団、国によっては王族や大統領までやってきて、みんなで性やジェンダーについて話すなんてすごく貴重な機会じゃないですか? 『変えよう!』というモチベーションにあふれた人たちが集まるため、特に参加が楽しみな国際会議のひとつです」と語ります。

『SRHR for ALL アクション!』参加団体とそれぞれのテーマ

Women Deliver 2026会場でSRHR for ALL アクション!のバナーフラッグを掲げて記念撮影に応じるメンバーたち

#なんでないのプロジェクト(SRHR for ALL)
NPO法人ピルコン(性教育)
Tネット(性的マイノリティ、とりわけトランスジェンダーのSRHR擁護)
SOSHIREN女(わたし)のからだから(堕胎罪・安全な中絶アクセス)
アクション沖縄(先住民の権利・性暴力根絶)
DPI女性障害者ネットワーク(障害×ジェンダー×SRHR)
滞日ネパール人のための情報提供ネットワーク(移民女性×SRHR)

気候変動対策なくしては、ジェンダー平等は実現しない

覇権主義・排外主義的な国家の台頭による国際情勢や経済の不安定化、気候変動、など、国際情勢が急速に変化している状況を鑑み、むしろ「私たちの手で新しく作り替えていこう!」という意思のもと、具体的な施策や解決策を探ろうとするセミナーやセッションが多く見られました。とりわけ気候変動危機とジェンダー平等を結びつけて考えている人々の多さに圧倒されました。世界のあちこちで紛争が起き、気候変動の影響を大きく受けるというダブル・トリプル、さらに幾重ものパンチを喰らうのは、男性よりも女性、マジョリティよりもマイノリティ。もともと周縁化(※)されている人たちがより脆弱な立場に追い込まれています。どうしたらよりインクルーシブな気候危機対策が考えられるのか、今後どのような声をあげていくべきか。多様なバックグラウンドを持つ国々のアクティビストが集結するWD2026だからこそ深められた課題のひとつでした。

※周縁化:特定の個人や集団が社会の主流から外れ、政治的・経済的・文化的な影響力や機会を制限されるプロセスのこと。LGBTQI+や障害者といったマイノリティの人々、低所得層、若者や高齢者などが議論の場から遠ざけられ、社会構造の“ふち(周縁)”に追いやられる現象で、社会学や福祉などの分野で頻出します

SRHRに『Justice(ジャスティス)』の概念を=SRHRJ

Women Deliver 2026のIPPFブースでのセッションで、「JUSTICE」のボードを掲げるアクション琉球・沖縄の神谷めぐみさん

SRHRに『Justice』という概念を取り入れた『SRHRJ』の実現を模索するセッションが多かったのもWD2026の特徴です。日本語だと『正義』と翻訳され、勧善懲悪的な強い印象を感じられる方も多いと思いますが、SRHRの文脈で語られる視点『Justice』は『Fair(フェア/平等・対等)』というニュアンスを帯びていると感じました。

国際的にSRHRの概念が確立してきたのは、1994年のカイロ会議、翌1995年の北京会議以降です。この頃、当時は主にアメリカの黒人女性たちが中心となって「権利(Rights)はあってもアクセスできなければ意味がない!」「問題を根本から解決するには『Justice』が必要だ!」と声を上げるようになりました。当時、女性の権利運動の先頭に立っていたのは主に中産階級以上の白人女性たちでしたが、有色人種、とりわけ黒人女性たちの置かれた状況はより深刻なものでした。もともと経済的に困窮していたり、病院へのアクセスが悪いエリアに居住していたり、黒人である・若年であることで子どもを産むという選択肢を奪われ、中絶を強要されたり、避妊が大前提という社会的圧力があったり、出産後も安心・安全な環境で子育てができるとは限らなかったりしたのです。そもそもの社会構造が植民地主義的で、人種差別や優生思想から成り立っていたといえます。そうした旧態依然とした不平等構造を壊していかないといけない。権利が成立しても、自動的に本質的なアクセスが保障されるわけではない。そういう課題意識から『Justice』の概念がSRHRの文脈でも求められ続けてきました。世界最大級のNGOであるIPPF(国際家族計画連盟)でも、SRHRから進化した『SRHRJ』をコンセプトに掲げるようになっています。日本で活動する私たちも追随したいと思っています。

カイロ会議:1994年にエジプト・カイロで開催された国連の国際人口開発会議(ICPD)。それまでの「人口増加の抑制」という数値目標中心のアプローチから、女性の権利や人権を重視する方針へと舵を切り、世界の人口政策における歴史的な転換点となった会議です
北京会議:1995年に中国・北京で開催された第四回世界女性会議(北京会議)は、女性の健康と権利を国際的課題として位置づけ、SRH/RR:性と生殖に関する健康/生殖に関する権利を女性の人権の核心と明確化しました

『JOY(生きる喜び)』こそフェミニストによる抵抗の証

覇権主義・排外主義的な国家の台頭による国際情勢や経済の不安定化、気候変動、など、そんな世界で生きていること自体がしんどい人も多いと思います(私たちもしばしばどうしようもないほど落ち込みます)。そんな状況下でも、アクティビストたちが自ら、ささやかながらも『JOY(生きている喜び)』を見つけ感じながら生きて、声をあげ続けていくことこそが抵抗そのものだ」と発信する人も多く、とても勇気づけられました。WD2026のブース展示エリアで見かけた『What brings you joy?』と描かれたメッセージボードには、連帯・信仰・おいしいごはん・睡眠や休息・友達・ヨガ・ペット・ハグ・クィアの友達といった多くの寄せ書きがあり、日々の生活の中にある『JOY』が私たちに生きる希望をくれるのだと、胸が熱くなる思いがしました。

ユース(若者)・クィア(LGBTQI+)・障害者・少数民族etc.、周縁化されがちな人々による強力なリーダーシップ

Queer Deliver 2026に参加するTネット高井ゆと里さん

ユース・クィア・障害者・少数民族といった周縁化されがちな人々は、政策を語る議論からも弾かれがち。参加できたとしても、その場に招かれただけで肝心の意見や主張はまったく反映されないまま政策が進んでいくという場面を、私たちは非常に多く見てきました。WD2026では、そうしたマイノリティとされる人々が、単なる参加者としてではなくリーダーとして主体的に議論や対話を進めるんだという熱気があふれていました。WD2026開会式の前日には『Queer Deliver(クィア・デリバー)』というLGBTQI+の人々主導のプレカンファレンス(事前会合)が開催されており、本当に包摂的な社会を築くためのさまざまな具体的討論が行われていました。世界が分断され、多国間で協働する機会が大幅に失われ、とりわけLGBTQI+の人々の人権が危機に瀕する中、誰もが誇りをもって存在できる運動のありかたと、その重要性をあらためて学びました。

※SOGIESC(ソジエスク:人間の性の特徴であるSO(Sexual Orientation/性的指向)・GI(Gender Identity/性自認)・GE(Gender Expression/ジェンダー表現)・SC(Sex Characteristics/性的特徴)の頭文字をとった言葉。特定の人々ではなく、すべての人が持つ普遍的な属性を指します

『SRHR for ALL アクション!』のInstagramアカウントでは、ショート動画によるWD2026参加レポートを公開しています。ぜひご覧ください。

各メンバー団体参加者が得た知己をまとめたレポート後編はコチラ