【実施レポート】国連 健康の権利に関する特別報告者 来日記念講演『尊厳を実現する原動力としての健康』院内集会 @ 衆議院第一議員会館

2026.7.27

  • SRHR for ALL アクション!
  • 実施レポート

公益財団法人ジョイセフは、国連「到達可能な最高水準の身体及び精神の健康の享受の権利(以下:健康の権利)」に関する特別報告者であるトラレン・モフォケン医師(南アフリカ出身)を日本に招聘し、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)や包括的性教育をテーマとしたさまざまなイベントを開催いたしました。

7月8日(水)17:30より、衆議院第一議員会館(東京都千代田区)にて、院内集会『国連健康の権利に関する特別報告者来日記念講演「尊厳を実現する原動力としての健康」』を実施し、国会議員やその秘書ら関係者を含め、現地60名・オンライン120名の合計約180名の方にご参加いただきました。

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演の様子

本会では、モフォケン医師による基調講演に加え、『SRHR for ALL アクション!』メンバー8団体によるリレートークおよび国会議員によるリレートークを実施。SRHRの国際基準と日本の現状とのギャップを可視化し、立法府の構成員である国会議員に対して、課題認識を持ってもらい、包括的性教育(CSE)ないし人権ベース・科学的根拠に基づく性教育の学習指導要領導入に向けた協力を促しました。

【開催概要】
日時/2026年7月8日 (水)17時半‐19時
会場/衆議院第一議員会館 国際会議場/オンライン ※ハイブリッド開催
主催/公益財団法人ジョイセフ
共催/SRHR for ALLアクション!
後援/国連広報センター

【オープニング】

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演で開会挨拶をするジョイセフ栗林

はじめに、司会を務める栗林桃乃(公益財団法人ジョイセフ)が、開会のご挨拶に続き、ジョイセフとメンバー団体がともに推進する『SRHR for ALLアクション!』について説明いたしました。

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演で後援挨拶する根本かおる国連広報センター長

続いて、根本かおるさん(国連広報センター所長)より、後援のご挨拶をいただきました。
「健康の権利に関する特別報告者は、2002年に国連によって設置された専門家のポストで、健康を人権として捉える観点からさまざまな提言を行っています。過去には2012年に、当時のアナンド・グローバー特別報告者が、東日本大震災時の福島第一原発事故による健康への影響を調査するために来日しました。そしてモフォケン医師は今回、SRHR、すなわち性と生殖に関する健康と権利について議論するために来日してくださいました。言うまでもなく、健康は私たちひとりひとりの人生の礎です。単なる医療サービスの問題ではなく、健康は人間の尊厳、自立、平等、ウェルビーイング、そして社会参加と深く結びついた人権そのものです。誰もが必要な健康医療サービスにアクセスできる権利を持っています。そして自らの身体や人生について自己決定できるということも、健康の権利の重要な要素です。だからこそ本会のテーマであり、医師として長年女性の健康と権利の向上に取り組んでこられたモフォケン医師の専門であるSRHRは、健康の権利の中核をなしているといえます。
世界では近年、女性や若者のSRHRをめぐり、前進も見られる一方で、権利の後退を懸念させるようなバックラッシュが各地で起こっています。とりわけ、移民、障害者、LGBTQ+といったマイノリティの立場に置かれた人々ほどその影響を強く受けています。国連本部で公開された『SDGs進捗報告書 2026年版』でも、健康に関するゴールのSRHRに関するターゲットはわずかしか進捗が見られないというカテゴリーに入っています。こうした時代だからこそ、健康を人権の視点から見つめ直し、誰ひとり取り残さない社会の実現に向けて対話を続けることが重要だと考えます。日本はこれまで、国際保健分野において、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進などで世界をリードし、評価を得てきました。国連としても、日本が引き続き国内外で健康と人権を推進する重要な役割を果たしていくことを期待しております。 モフォケン医師は世界各地の現場に足を運んで当事者の声に耳を傾けながら、健康の権利とは何か、そしてそれを実現するために私たちには何が必要なのかを提言してこられました。本日の議論が実り多いものとなることをお祈りします」

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演で開会挨拶をする宮路拓馬衆議院議員

次に、宮路拓馬 衆議院議員・衆議院環境委員会委員長による開会のご挨拶をいただきました。
「外務副大臣時代に、国際協力そして地球温暖化問題を担当していました。確かに日本はこれまでUHCおよびグローバルヘルスの分野で大きな貢献をしてきました。今、SRHRについては大きなバックラッシュの時が訪れていますが、日本はこうした時にこそ真価を発揮してきましたし、これからもブレずSRHRの推進に先頭に立って取り組まなければならないと実感しています。
私自身、元はこうではありませんでした。地元は鹿児島です。保守王国、男尊女卑のムードが色濃く残るエリアだと言われます。自民党の議員です。男性ばかりです。そんな中でもこれまで、女性の健康、障害福祉、そして子ども・子育てといった分野に力を入れて取り組んできました。最初は眉をひそめて見られていました。マイクを通して女性の健康、とりわけ生理や更年期といった課題を提起していたら、地元で支援者のみなさんから『なぜそんなことを訴えるんだ、鹿児島の議員らしくもっと農業や社会資本整備のことを考えろ』と言われました。しかしブレずに訴え続け、緊急避妊薬(アフターピル)やフェムテック分野に取り組んできました。そして今、SRHR、包括的性教育の必要性を、今日ここに集まっていらっしゃる仲間のみなさんとともに取り組み、訴えています。空気は確実に変わってきました。あの鹿児島でも市民権を得てきましたから、社会の空気は必ず変えられると思っています。日本はこれからも健康、UHCそしてグローバルヘルスの分野において、世界の国々や国際組織とともにあることをみなさんにお誓いいたします」

【基調講演】「尊厳を実現する原動力としての健康」

モフォケン医師は、すべての人が等しく持つ尊厳と健康が深く結びついていること、さらに身体の自己決定権の大切さについて触れながら、日本政府や国会に期待することを話しました。

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演で発言するトラレン・モフォケン医師

「SRHRは『幸福を追求する権利』として、日本国憲法で約束されているものだと考えます。私がジュネーブで発表した最後の報告書も、この尊厳を主題としました。病気をせずに生きていくことに加え、尊厳を持って幸福な生活を送ることこそ真の健康であり、それは憲法で約束されている権利なのです。
私は独立した人権の専門家です。国連総会または人権理事会に対し、これまでさまざまな人権をめぐる問題についてーーたとえば生活におけるじゅうぶんな衣食住、暴力のない生活、デジタルの権利、コロナ禍における権利といった報告書を出してきました。その中で気づいたのが、SRHRが人権に明確に基づいているということです。健康の保護というのは、国が監視や管理するのではなく、どのような状況下で暮らしていても、平等な形で市民に機会を与えていくということです女性だけの、障害者だけの、LGBTQ+だけの問題でも、国民の自己責任で解決すべき問題でもありません。
国会議員のみなさんには、医療・保健分野に関する法律や政策が、臨床現場において、尊厳のケアや実質的な平等の実現につながっているか、さらに脆弱な人々を作り出していないか、よく観察していただきたい。当事者のいちばん近くにいる医療従事者が政策決定プロセスに参加することも非常に大切です。日本の医療は非常に発達していますが、それを持続可能な形で推進していくためには、当事者のニーズとマッチしなければなりません。
また、日本が国連加盟国として、自国における健康の権利をどれだけ実現しているのか、どういった自己評価をしているのかをもう一度見直していただきたいです。政府によるSDGs目標達成報告を見れば、国際的にはうまくいっているのだと評価できるかもしれません。しかし、自国の中に存在する不平等の現実にもしっかりと目を向ける必要があります。『人口の7割をカバーできているからよし』ではないのです。人権の観点から考えると残りの30%は権利を脅かされています。『誰ひとり取り残さない』という考え方を徹底してください」

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演で発言するトラレン・モフォケン医師

「日本は法的・国際的に3つの責任を負っていると考えています。
第1に、健康への権利を尊重するということ。国民が健康実現に対するニーズを欲した時、国家が平等なアクセスを妨げてはいけませんし、法律で定められていなくても、現場で実際に差別的な行為がある場合は是正しなくてはなりません。
第2に、健康の権利を守ることです。国連加盟国は、国民に対し、誰もが平等にヘルスケアにアクセスできることを保障する必要があり、そのために立法し、適切な処置を実行しなくてはなりません。民間など第3者によるヘルスケア提供も平等に保障する責任があります。
第3に、国民の健康を実現する義務です。これは国家が、国内の政治的・法的システムにおいて、できれば立法を通じて、健康の権利をじゅうぶんに認識し、それを実現するための計画をはかる必要があります。健康の実現には政治によるリーダーシップが必要です。たとえば薬などは、企業の慣習やプレッシャーに左右されることなく、適正な価格や方法で国民に提供されなければなりません。そして健康・医療政策は、きちんと予算をつけて保障する必要があります。社会が危機や資金不足に陥った時、真っ先に予算削減対象となるのが、若者向けサービス・SRHRサービスであり、NGOや市民社会団体も苦しい状況に置かれがちになります。脆弱な人々が困難に晒されないよう防ぐのが政治の役割です」

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演の様子

「最後に、若者についてお話しします。若者の健康の権利こそ、平等に保たれなくてはなりません。若者たちが、社会の中で適切なコミュニケーションをとりながら対人関係をきちんと築ける健全な大人に育つことができる社会は、国際的にも医療制度の成功モデルとなります。そうした若者たちの支えとなるのが包括的性教育です。CSEを受けていれば、若者は困った時に信頼できる大人に相談することができます。人生にはさまざまなことが起きます。多くの女性や少女が困難な状況に置かれています。思いがけない妊娠によってその後の人生を台なしにしてしまうといったことがないようにしなければなりません。健康実現の鍵となる医療へのアクセスは、国家が構築するシステムに頼っていますので、それを保障する責任が国家にはあります。
市民として、自分の国のどこにギャップがあるのか、どこに課題が残っているのか、政策や敢行を用いてどうやったらそのギャップを埋められるのかを常に模索する必要があります。日本は素晴らしいイノベーションを生み出してきた国です。女性たちのリーダーシップにもっと投資してはいかがでしょうか? そうした女性たちが今後世界のリーダーとなってグローバルヘルスに参加できる仕組みを本気で整えてはいかがでしょうか? 私たちはこうした『自立性』の実現にもっとコミットしなければなりません。それを支える包括的性教育にコミットしなければいけません。 そしてお互いを支え合う社会を作らなければいけません。
誰もがみな、異なるカルチャーのもとで生きていますが、人権はすべての人が等しく共通して持つものです。みなさんの立場からそれぞれ尊厳に投資をしてください。そうすれば、日本は市民社会からエンパワーされてどんどん育まれていきます。 日本という国のビジョンを支える若者が育っていきます。尊厳には健康が必要です。健康には尊厳も必要です。年齢や性別を問わず、在留資格を問わず、 すべての人が健康への権利にアクセスできるよう、みなさんで一緒に最善を尽くしましょう。日本が今後も幸福と尊厳を最前線に掲げる国でいることを強く望みます」

【リレートーク】アクション! メンバー8団体による問題提起

続いて、『SRHR for ALL アクション!』メンバー8団体から各々の活動紹介を兼ねて直面する課題を国会議員に訴えるインプット・プレゼンテーションを実施し、日本のSRHR実現のためには、包括的性教育の早期実現が不可欠であると訴えました。

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演で発言するDPI女性障害者ネットワークの藤原久美子さん

「ここ数年、日本のSRHRを取り巻く状況には確かに前進が見られます。刑法性犯罪改正、子どもに対する性暴力防止法の成立、『生命の安全教育』の拡大など、性暴力防止に関する制度や教育が整えられてきました。また2026年2月には緊急避妊薬の薬局販売が始まり、若者が相談できるユースクリニックの取り組みも地域ベースで広がりつつあります。一方で、子どもたちに必要な性に関する学びが十分に届いているとはいえません。私たちの調査では『学校の性教育について満足している』と答えた人はわずか18%にとどまっています。“はどめ規定”の存在により、教員が学校現場でどこまで教えていいのか判断に迷うといった声も多く聞かれ、性教育における事実上のブレーキになっています。性教育を充実させることは、子どもを性急に性交に向かわせる ことではありません。科学的に正確な知識を理解し、自分と相手を守る力、困った時に相談する力を育むものです。性教育は子どもたちの安全と尊厳を守るインフラであり、セーフティネットです」(染矢明日香さん/ピルコン)

「Springでは、性犯罪の公訴時効について抜本的な見直しを求めています。性暴力被害者には、被害を申告することが困難な現実があり、平均で数十年を要すると示す研究もあります。しかし日本では、不同異性高等罪の公訴時効は15年、未成年時の被害であっても33歳までにまでしか措意できません。一方で、ドイツでは50歳まで、フランスでは48歳まで公訴が可能で、韓国やアメリカでは時効自体が撤廃されています。また、2028年に始まる刑法性犯罪改正に向け、性的同意なしに性交した場合に処罰されるというYMY(Yes Means Yes)型の法規定導入を求めています」(田所由羽さん/Spring)

「日本では今、性についてきちんと学べない一方、妊娠出産のための体作りなどを学ぶ『プレコンセプションケア』が政府によって推進されています。私はこの3カ月間、多様なバックグラウンドを持つ日本全国のユース15名とともに、約20時間かけてプレコンサポーター養成講座を履修しました。内容について議論した結果、今のプレコンは社会の中でより周縁化されている人々の尊厳を削りかねず、男女二元論、性別役割分担や優生思想の再生産、本来取り組むべき社会課題の透明化、少子化の自己責任化といった課題を浮き彫りにするものだと危機感を持ちました。排外主義や軍拡競争へと傾きつつある今の世界で私たちが早急に実現すべきは、自分も相手も大切にし、毎日の暮らしに潜む偏見・差別・暴力にあらがい、SRHRにJ(ジャスティス/正義)の概念を加え、より公平で平和な人権の守られる社会を構築していける、そういう力を育む真の包括的性教育を実現することだと思います」(福田和子さん/#なんでないのプロジェクト)

「2015年に妊娠葛藤相談窓口『にんしんSOS東京』を立ち上げて以降、利用者は15000人を超えました。365日、相談だけでなく、医療機関への同行や生活支援も行っていますが、現場で感じるのは『妊娠の出口は出産だけなのか』という制度上の矛盾です。日本の現行制度は、出産する人しか救われないものがほとんどです。しかし妊娠の先には、流産や中絶といった選択肢をとらざるを得ないケースもあります。妊娠葛藤を生み出す原因は個人だけに由来しません。包括的性教育がないことが根本原因として存在し、避妊へのアクセスが難しい社会の状況が問題です。お金の有無、理解ある家族やパートナーの有無、仕事の有無といったさまざまな要因で妊娠の先を決めざるを得ないという不平等な現状があります。また、妊娠を自己責任と捉える社会の中では、中絶に対するスティグマも非常に強いです。日本政府が推進するUHCの中において、妊娠・出産・避妊・中絶についてももっと保障するべきです。必要な時に、必要な情報と医療にきちんとアクセスでき、自分の人生を自分で選択できる社会にしたいです」(中島かおりさん/ピッコラーレ)

「SRHRの界隈には2つの亡霊がいます。ひとつは堕胎罪です。刑法第212条には『中絶した女性は懲役1年に処する』とあり、中絶の手助けをした人や医療関係者も処罰されます。しかし相手の男性は何も問われません。1907年、女性にまだ選挙権がない大日本帝国憲法の時代にできた法律が、119年経った今でもほぼ同じ中身で存在しています。そしてもうひとつが1948年に成立した優生保護法です。人口の質が落ちてはいけないと、50年近くもの間、障害や病気を持つ人に不妊手術を強制してきました。6年前に『不良な子孫の出生防止』という障害者差別の条文だけをカットして、母体保護法になりました。謝罪も保証もしない国に対して被害者たちが裁判を起こし、ちょうど2年前の7月3日、最高裁が違憲判決を下しました。しかし、中絶に関しては堕胎罪はそのまま、そして母体保護法で禁止されたままです。配偶者同意がなければ中絶できない、中絶方法の選択肢が非常に少ない。3年前に承認された経口中絶薬を取り扱う病院はまだ少なく、実質的には外科手術しか選べません。手術費用も非常に高額です。こうしたハードルの数々が、中絶を経験した人に強烈なスティグマをもたらしています。中絶もSRHRも人権です。産むか産まないかを自分で決め、自分らしい人生を生きていくために必要な権利です。中絶を犯罪ではなくケアの対象と考え、日本に住む誰もがサポートされる仕組みを今こそ作る時ではないでしょうか」(大橋由香子さん/SOSHIREN女(わたし)のからだから)

「トランスジェンダーの人々が求めているのは、健康の権利、身体的統合性の権利、そして市民社会を安全に生きていく権利です。これらを実現するためには2つの施策が必要です。ひとつは医療措置。トランスの人々には、自分の体では作ることができない性ホルモンを補いながら生きている人たちがたくさんいますが、こうしたホルモン治療は基本的にすべて公的保険の対象から外されています。受診拒否も頻繁に起きています。2018年から、性別適合を含む手術を伴う治療に関しては健康保険適用対象となりましたが、ホルモン治療が適用外のため、結局すべて自費負担せざる得ない人が少なくありません。また刑務所や入管に収容されてしまうと治療の機会を剥奪され、大きく体調を崩す方もいます。私たちはこれを医療虐待に該当すると考えています。もうひとつは性別承認についてです。日本には性同一性障害特例法があり、法律上の性別を変更することができますが、実質的にはトランスジェンダーを病理化する内容です。3年前の改正を経てなお、外性器の形を整えていること・未婚であること・子どもがいないことといったSRHRを侵害する条件を多く含んでいます。トランスの人々が権利の主体として尊厳を持って生きられる世の中を作るために、こうした法律を変えていくことを求めています」(高井ゆと里さん/Tネット)

「私たちの団体は1986年、優生保護法の撤廃と障害のある女性の自立促進を目指して結成され、現在は障害のある女性に対する複合的・交差的差別の解消に向けて取り組んでいます。障害者は子どもを育てられないだろう、結婚も妊娠も(自ら望んでは)しないだろうといった偏見に晒され続けています。政府が推進しているプレコンセプションケアは優生保護法の再来ではないかと危機感を覚えています。若い人たちを『障害児が生まれたら大変』という恐怖で縛るのではなく、たとえどんな障害を持つ子どもが生まれても、きちんとした福祉制度のもと、尊厳を持って健康に生きていける社会にしていただきたいです」(藤原久美子さん/DPI女性障害者ネットワーク)

「外国人留学生のSRHR保障は、健康・教育・在留の権利を守ります。留学生にとって、妊娠や出産に直面した時、学業や生活を維持できるのか、在留資格を失わずにいられるのかが問題となります。2021年に名古屋入館で亡くなったスリランカ人留学生のウィシュマ・サンダマリさんの事例が象徴的です。彼女はDVを受け続け、学業継続が困難になった結果、在留資格を失い、警察に保護を求め、入管に収容されました。さらに2024年には茨城、2026年には東京で日本語学校生の中絶や孤立出産が刑事事件化した報道がされています。共通するのは、外国人留学生がDVや妊娠・出産について相談できる制度や、正しい情報、支援の不在です。特に脆弱な のは日本語学校生です。調査結果によると、滞日外国人留学生約10万人のうち、女性は約5万人です。 家族帯同は認められず、就労も原則週28時間以内です。生活費や学費をアルバイトに頼る場合、妊娠や出産で働けなくなると、生活維持と学業継続が一気に不安定になります。『妊娠したら帰国』という警告も相談を妨げています。SRHRの視点で見ると、これは人権侵害にあたります。留学生を管理の対象としてではなく、健康と教育を受ける権利を持つ主体として位置づける制度整備が求められています。将来のライフプラン教育、多言語によるSRHR情報の提供、相談体制、妊娠や出産を理由とする休学等の実態把握と不益取り扱いの防止が必要です」(田中雅子さん/滞日ネパール人のための情報提供ネットワーク)※映像登壇

【リレートーク】国会議員によるコメント

本集会にご参加いただいた国会議員からは下記のようなコメントが寄せられました。

寺田静 衆議院議員

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演を聞いて所見を述べる寺田静衆議院議員

「宮路先生とともに『生命の安全教育』推進の現場でご一緒させていただいております。やはりこの課題は必ず進めなければいけないけれども、バックラッシュが非常に大きい分野で、世界でも後退しているというご指摘があり、悲しみと怒りを覚えながら状況を見ております。日本においても、“はどめ規定”をはじめさまざまな課題がありますが、やはりきちんとした基本的な包括的性教育がなければ、子どもたちの安全は守られないと思います。『保護者の同意が得られない場合がある』といっても、私自身、子育てをしているひとりとして、子どもたちを守るために必要なことは授けなければいけない、そして子どもに害となるようなことは親にとっても選択する権利はないと思っています。包括的性教育の件も含め、日本でまた世界でSRHRの理解が深まるように微力ながら努力していきたいと思っています」

福島みずほ 参議院議員

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演を聞いて所見を述べる福島みずほ参議院議員

「2001年8月、ジョイセフスタッフと一緒に、ダーバンで開催された人権会議(正式名称:反人種主義・差別撤廃世界会議)に行きました。ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領が住まわれていたというお家に行ったり、ホームステイを体験したりしました。今日のお話を伺って分かったのは、尊厳と健康とは相互関係にあり、年齢・性別・国籍といったあらゆる属性を問わず、すべての人に必要だということ。日本国内では性教育ができていない大人に頭が痛いと感じますが、日本国憲法第13条では、幸福追求権と併せて個人の尊重を定めています。それを実現すべく、市民社会のみなさんとともにがんばります」

吉良よし子 参議院議員

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演を聞いて所見を述べる吉良よし子参議院議員

「健康とは尊厳であり、すべての人が享受できる社会と政治を実現する必要があるのだという力強いお話に大変勇気づけられました。私も包括的性教育の実現へ向けてみなさんとともに声を上げているひとりですが、若者を守るためには、自立性そして同意を大切にすることが何よりも重要で、そのために性教育は大事だと思います。先ほどもお話にありましたが、日本では学習指導要領に“はどめ規定”があるため、性的同意について学ぼうという取り組みですら教育委員会から『規定に抵触するのではないか』という意見が入り、現場で学ぶことができないという事態が報道されています。同意の大切さや、ひとりひとりが個人として尊重されることの大切さを学校で学ぶ権利が保障されていないということが若者を守れない事態につながっているわけであり、若者が自分自身を守るためには、そうした包括的性教育をきちんとすべての学校で子どもたちに実現できるよう、やはり“はどめ規定”は撤廃されるべきだと思いますし、引き続きみなさんとともに学びながら前に進めるために頑張るべく、決意を新たにいたしました」

岩崎ひな 衆議院議員

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演を聞いて所見を述べる岩崎ひな衆議院議員

「本日のテーマである『尊厳を実現する言動力としての健康』という言葉を大変重く受け止めております。私自身も子育てをする母親のひとりであり、また私自身、持病を抱えながら議員活動をしています。健康が揺らぐことが、生活・仕事・家族・将来の選択肢などに大きく影響することを強く感じております。誰もが自分の体と人生について正確な情報にアクセスすることができ、さらに若い世代に対しても正確な情報を提供することができ、みなさまが必要な支援を受けられる状態、そして尊厳を持って選択できる社会を作るということが政治の責任だと考えております。健康、そしてひとりひとりの尊厳と自己決定権を支える基盤として位置づけ、この国会での議論や政策形成にしっかり取り組んでいければと考えています。本会がすべての尊厳を守る社会の実現へ向けた大きな一歩となることを祈念いたします」

【クロージング】

最後に、山口悦子(公益財団法人ジョイセフ事務局長)が挨拶し、閉会いたしました。

衆議院第一議員会館にて開催されたSRHR for ALL アクション!主催の院内集会「国連 健康の権利に関する特別報告者」基調講演終了後に撮影されたトラレン・モフォケン医師をはじめとする登壇者らの集合写真

ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました!
今後も、日本におけるSRHR早期実現のため、ともに歩んでいただけますとうれしいです。

『SRHR for ALL アクション!』のInstagramでは、本基調講演のダイジェストレポート動画を掲載いたします。ぜひフォローしてご覧ください📱

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