Mother to Mother SHIONOGI Project コミュニティエンパワメントによる母子保健推進プロジェクト

地域ガーナ活動分野母子保健アプローチ保健システム強化ヘルスプロモーションSDGs3.すべての人に健康と福祉を5.ジェンダー平等を実現しよう17.パートナーシップで目標を達成しよう

プロジェクト名 Mother to Mother SHIONOGI Project
「コミュニティエンパワメントによる母子保健推進プロジェクト」
Promotion of MNCH through community empowerment in Upper Manaya Krobo District, Ghana
実施国 ガーナ共和国
活動の目的 プロジェクト地区における妊産婦および 5 歳未満児の健康を改善する
実施地域 イースタン州アッパーマニャクロボ郡
対象人口 72,160人(アッパーマニャクロボ郡の全人口)
実施期間 2023年6月-2026年5月(3年間)
スキーム等 一般企業協力事業
共同実施機関(現地) アッパー・マニャ・クロボ郡保健局、イースタン州保健局
Upper Manya Krobo District Health Administration, Eastern Region Health Office
背景 ガーナの妊産婦を取り巻く環境
ガーナの妊産婦死亡率(2020年)は、263(出生 10 万対)と日本の約 66 倍と高く1、依然として妊産婦死亡を減少させるための取り組みが必要とされています。事業地であるイースタン州アッパーマニャクロボ郡は、道路等が整備されておらず、郡の北部にボルタ湖があり、保健施設まで船で移動するしかない地域もあります。もっとも近い保健施設までの距離が地区によっては、10~20キロもあり、母子保健サービスの利用をはばむ最も大きな課題として挙げられています。保健施設が遠い地区の妊婦の中には、医師や助産師の免許を持たない介助者のもと自宅分娩をする人も多いということです。
アッパーマニャクロボ郡における医師あるいは助産師による分娩の割合は、約45.8%(2023年郡保健局統計)で、国の掲げる目標値(90%)よりも大幅に低い状況です。SDGsの目標3およびユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成のためにも物理的アクセスの改善は喫緊の課題とされています。同郡の保健施設は計 47 施設で、その内訳は、郡病院(1)、保健センター(4)、民間の産院(1)、CHPSと呼ばれる村の診療所(41)です。また、遠隔地の保健施設は医療従事者用の寮などの宿泊施設が併設されていないため、本来提供すべき24時間体制の医療サービスが提供できない状態にあるところも多いです。

ガーナにおける5歳未満児と下痢症疾患
上に述べた状況に加え、下痢性疾患は、2021年時点でガーナにおける5歳未満児の全死亡数のうち9%を占めており、死因としては第5位に位置しています。原因としては、劣悪な衛生環境、汚染された飲料水、不適切な食べ物、貧困、非識字や短い就学年数などが挙げられています4。経口補水液(ORS)による下痢の治療についても、ガーナは他のアフリカ諸国と比較しても 48%と低い状態にあります。

主な活動 1. 医療サービスの質向上を目的とした医療施設の建設
アカテン亜郡:妊婦待機所と産科棟、
スタポン亜郡:村の診療所、保健従事者住居、井戸など
医療施設の建設と各施設で必要とされる基礎的保健医療資器材を提供します。建設した施設では、開所式及び住民参加型ペインティングワークショップ(壁を住民の絵で装飾)を開催しました。

↑アカテン保健センター産科棟の開所式

↑新たに建設されたアカテン保健センター産科棟への基礎的保健医療資器材提供

新たに建設したスタポン診療所

↑新たに建設されたスタポン診療所で、住民参加型ペインティングワークショップの様子

2023年12月に、アカテン亜郡に、初めての妊婦待機所が誕生しました。アカテン亜郡はボルタ川の両岸にまたがっており、川向こうの地域には保健サービスを受けられる施設が一つもありません。そのため、川向こうに住む人たちは、ボートに乗ってアカテン保健センターまで行く必要があります。中には、ボートで移動中にボートの上で出産したという女性もいます。出産の2週間ほど前から施設に滞在できるようになり、安心して出産の日を迎えられる妊婦待機所は保健サービスのアクセスの改善という観点から非常に重要な役割を果たします。妊婦待機所は、ジョイセフのザンビアでの「妊婦待機所」の経験を参考に建設しました。寝室(5)、キッチン(1)、ラウンジ(1)、共同のシャワールーム (2)とトイレ(2)、倉庫が設置されています。備品を整備し、2024年2月に運営を開始しました。一部屋に2人の妊産婦が滞在できるようになっており、最大10名が滞在できます。

住民による図柄とメッセージがペイントされたアカテン保健センター内妊婦待機所

産科棟を利用し、無事出産したカップル(右)

2. 医療サービスの質向上を目的とした医療従事者への研修を実施しました。

↑保健医療従事者を対象とした母子保健・待遇改善研修の様子

↑男性参加促進を目的としたママパパクラス

3. 住民の医療サービスへのアクセス改善を目的とした啓発活動促進のための諸活動

↑啓発用教材の使い方研修

↑コミュニケーション戦略は、啓発活動を担う多様な人々が協力して作成

↑啓発活動計画に基づいた啓発教育活動の実施及び
そのモニタリングの様子

4. 活動の持続性を目的とした諸活動

↑地域保健管理委員会による保健ボランティアに対するサポート強化のための支援監督指導オリエンテーション

↑プロジェクト運営委員会開催前の事前モニタリングと、
プロジェクト運営委員会の開催

現地からの声 クロク・セレスティーンさん、川向うの地域に住む妊婦

セレスティーンさんは、これまでに2人の子どもを自宅や診療所で出産しました。無事に出産できたものの、出産後に出血するなどのトラブルも経験してきました。今回、地域情報センターの案内や助産師からの紹介をきっかけに、アカテン保健センターの妊婦待機所と産科棟を利用しました。出産予定日の2日前から待機所に滞在し、夫と同じ部屋で過ごせたほか、家族も訪れて出産をサポートしてくれました。落ち着いた環境の中で出産前後の時間を過ごせたことが、彼女にとって大きな安心につながったといいます。無事に女の子を出産したセレスティーンさんは、出産中、出産後も快適な環境の中で過ごすことができ、清潔で広々とした分娩室や快適なベッドにとても満足していました。また、彼女はこの施設を友人にも勧めたいと語っており、自分の経験を語ることで他の女性たちにも安心して利用してもらいたいと考えています。