分断ではなく連帯をー私たちはつながり直す【Women Deliver 2026参加レポート2/2】

2026.6.27

  • SRHR for ALL アクション!
  • 実施レポート

『SRHR for ALL アクション!』各メンバー団体による現地でのアクション! と参加者の学び

WD2026会場では、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)、思春期の若者の健康と権利、児童婚・強制結婚や女性器切除(FGM)、ジェンダーに基づく暴力、気候変動の影響、インターセクショナルな活動のありかた、そして活動を続けるための資金の課題など、さまざまなテーマについて議論が交わされました。

『SRHR for ALL アクション!』メンバーも、2度のトークセッションを通じて日本のSRHRの現状を訴えました。それぞれ異なるバックグラウンドや課題を抱えるメンバーが、SRHRでつながりながら、慣れない英語を駆使して必死に声を届けようと努力している姿をお互いに見守る中で、非常にエンパワーされる貴重な時間となりました。

Women Deliver 2026会場でスピーチする#なんでないのプロジェクトの福田和子さん

『SRHR for ALL スタンディングアクション! in WD2026』では、留学生を含む滞日移民女性、障害者、トランスジェンダー、先住民、ユースなど、日本での課題を訴え、周縁化されがちな人々を可視化し、SRHR実現のために自分たちが実践している活動をリレースピーチ形式で紹介しました。オーストラリアを拠点に活動するセックスワーカーのためのアソシエイト『SCARLET ALLIANCE 』のステージを拝借し、多くの海外アクティビストに耳を傾けていただきました(大感謝!これぞ国際連帯です)

Women Deliver 2026のIPPFブースで車座セッションに望むSRHR for ALL アクション!メンバー

2日目は、ジョイセフが東京連絡事務所を務めるIPPF(国際家族計画連盟)出展ブースの一角にて、包括的性教育導入における日本でのバックラッシュをテーマに『SRHR for ALL アクション!』車座トークセッションを実施。ポケット避妊教室(緊急避妊薬を薬局でプロジェクト)やジョイセフエプロン(ジョイセフ)といった、各メンバー団体が活動に使用している教材を世界中のアクティビストらにお披露目する貴重な機会となりました

また、各々が個別に関心のあるテーマのセッション(分科会)に参加し、多くの収穫を得たようです。参加者に特に印象に残ったエピソードや学びを聞きました。

日本は本当に“先進国”といえるのか?(SOSHIREN女(わたし)のからだから)

Women Deliver 2026会場でスピーチするSOSHIREN女(わたし)のからだからの村田真莉子さん

「SOSHIRENは『中絶は女性の権利だ』と訴え続けてきている団体なので、中絶にまつわる日本の現状を話すことが多かったのですが、参加してずっと心にあったのが『はたして日本はホンマに先進国なんか?』という疑問です。東南アジアの国々による中絶のセッションに参加して、どの国も中絶に関するスティグマがあるけれど、法律では認められているため、中絶の権利は主張できるんです。ところが日本では、中絶が認められていないうえにスティグマもあるという二重苦構造。とてもモヤモヤしました。やっぱりなんとかしなくてはなりません」(村田真梨子さん/SOSHIREN女(わたし)のからだから)

市民社会と政府は敵どうしではなく、社会制度をともにつくるパートナー(ピルコン)

「市民社会は、単に政府に意見し要望する側なのではなく、社会制度をともにつくるパートナーであり、政府に説明責任を果たさせる主体は私たちにあるという認識が生まれました。『目標実現のために、あなたは主体となって何をするのか?』を常に問われ続けたことが印象的でした」(染矢明日香さん/NPO法人ピルコン 理事長)

Women Deliver 2026会場でスピーチするピルコンの染矢明日香さん

「SRHRという国際的な概念を、自分たちのローカル文化や価値観に合わせて翻訳したり、調整したりして実践する取り組みに注目しました。インドのTeenbookという団体では、若者自身がメディアとなって包括的性教育のコンテンツづくりに参加し、自分たちの経験・カルチャー・ニーズを反映させたアイディアを出すワークショップを開催していてとても興味深かったです。性をタブー視するのではなく、ポジティブなストーリー仕立てにして発信すると、より多くの人に刺さるのではないかと思いました」(染矢さん)

モンゴルと日本社会の共通点:家父長制と出生主義に晒される女性とクィア(Tネット)

「モンゴルと日本の共通点として、家があり家族がいて、そこで生殖の再生産が行われる仕組みと、それを国家がすごく気にしていることが挙げられます。しかもモンゴルは北にロシア、南に中国と覇権主義的国家に挟まれている立地。社会主義政党の一党独裁を打破して今の民主主義体制があるので、対外的な圧力も強い。モンゴル人としてのアイデンティティをとても大事にしているんです。日本も似たような状況ですよね。政府としては「純粋な」日本人に健康な子どもを産んでほしいと思っている。モンゴルは人口を増やすための国家施策にとても熱心で、女性たちに対し、出生主義的な圧力が継続的にとても強いとのこと。結果として、家制度の中で出産を期待される女性たちに対する暴力が深刻化したり、産まないという選択肢が奪われていたり、当然LGBTQI+の人たちも差別や迫害を受けがちになります」(高井ゆと里さん/Tネット アドバイザー)

女性の参画から先住民族の主権実現へ(アクション沖縄)

Women Deliver 2026会場で、琉球の伝統衣装を着て世界の先住民族参加者と記念撮影するアクション琉球・沖縄の神谷めぐみさんと、滞日ネパール人のための情報提供ネットワークのガンガ・デビ・ダンゴールさん

「『What does “unceded land”mean?(私たちは私たちの土地を譲ったことなどない)』というメッセージに惹きつけられました。WD2026の開催地となったメルボルンは、先住民族であるWurundjeri Woi Wurrung(ウルンジェリ・ウォイウルン)の人々の言葉で『Narrm(ナーム)』とよばれており、彼らはNarrmの伝統的所有者です。多くの先住民族にとって、土地は単なる不動産や財産ではありません。土地は文化・言語・祖先・コミュニティ・アイデンティティと深く結びついています。彼らは自分たちのことを『First Nation』とよび、常にセッションをリードしていました。アボリジニやトレス海峡諸島民といったオーストラリアの先住民族の人々が、植民地支配下時代から今なお残る医療制度について数多くの問題提起をしていました。『メルボルン宣言』と併せて『First Nation Indigenous Women Statement』が発表されましたが、この声明では、女性の参画から先住民族の主権へと議論を発展させた点で非常に画期的だと感じました。単に女性を政治や社会に参加させようというのではなく、自分たちを傷つけてきた政治や制度自体を自らの手で変革していく権利があると主張しており、大変勇気づけられました。日本では、先住民族主導でこのような会議を開催するのも、沖縄で琉球民族であることを主張して生きていくのもまだまだ難しい状況にありますが、今後の活動のさまざまなヒントを得たと思います」(神谷めぐみさん/アクション沖縄)

国際会議はもっと障害者の包摂を(DPI女性障害者ネットワーク)

Women Deliver 2026のIPPFブースで記念撮影に応じるDPI女性ネットワークの藤原久美子さんと南由美子さん

「聴覚障害のある私と、視覚障害のある藤原久美子さん、脳性まひのため手足が不自由な川合千那未さんの3人で参加しました。実は補聴器を忘れて渡航してしまい、現地の方々に相談したところ、メルボルンの街中に補聴器を取り扱っている店があって、すぐに調達することができて驚きました。また、WD2026の情報保障面も大きく評価できます。国際手話通訳や英語の字幕がついているセッションが多く、また会場専用アプリ・音声認識アプリ・翻訳アプリなどを活用すれば英語が苦手でもだいたいの情報を得ることができ、特に困ることなく参加できました。

Women Deliver 2026のメルボルン宣言採択前に掲示された世界の障害女性参加者からの抗議メッセージボード

「ただ、『メルボルン宣言』の採択プロセスにおいて約650人のコミットメントがあり、その中に障害女性がどれほど含まれていたのかが気になって、最終日に障害女性たちで『待った』をかけたという経緯がありました。ここまでインクルーシブな視点を持ち、情報保障をきちんとやっている国際会議においても、障害者はやっぱり周縁化されがちな存在なんですね。あらためてひとりずつ要望を伝えました。次回以降はあらかじめ障害女性もコミットメントに含めていただきたいと思っています」(南由美子さん/DPI女性障害者ネットワーク)

月経教育を移民女性の予想外妊娠の予防に役立てたい(滞日ネパール人のための情報提供ネットワーク)

Women Deliver 2026で月経ブレスレットを着用した滞日ネパール人のための情報提供ネットワークのガンガ・デビ・ダンゴールさん

「Wash Unitedという団体が出展していたMenstrunation Bracelet(月経ブレスレット)に着目しました。月経中に身につけるアクセサリーで、月経周期を視覚的にとらえることができるため、体調の変化や妊娠の可能性を見極める目安となります。移民女性には、宗教的な理由でいきなり性教育を施そうとしても抵抗のある人々が多くいますから、こうしたツールを活用して避妊対策につなげるアイディアは素晴らしい。ただ価格が高かった(1本💲20〜80)ので、日本で展開する場合は、もっとリーズナブルにしたり、協業してくれる企業を探すなどして、移民女性たちが入手しやすいよう工夫が必要だと思いました。
WD2026には大勢の男性が参加し、自らセッションをリードしているのも印象的でした。SRHRJを実現するためには、女性たちが声を上げるだけでなく、男性を巻き込んで味方につける『Positive Mascurinity(ポジティブ・マスキュリニティ)』の考え方も非常に大切だと感じました。月経にまつわる課題も、妊娠・避妊・中絶も、DV・性暴力も、男性を包摂することによって社会変容が実現すると思います。
また、在留資格の有無にかかわらず、ジェンダーに基づく暴力の被害を受けた女性を等しく支援する制度のある国がありました。年間予算が2,000万円ほどあり、高度な専門知識を持った女性たちがサポートしてくれるそうです。日本でも内閣府のDV相談窓口がありますが、在留資格の問題もありますし、運営体制が男性中心で市民団体とうまく連携できているのか疑わしく、実質的な支援につながっているかというとまだほど遠い現状にあります。移住民が暮らしやすいSRHR社会実現のためには、一時的ではなく長期的な支援が必要で、さらに実際の支援現場とどう連動させるか、根本的な仕組みを考える必要があると思います」(ガンガ・デビ・ダンゴールさん/滞日ネパール人のための情報提供ネットワーク)

3:4:3の4(浮動層)を味方につけるため、ナラティブを語り続ける

Women Deliver 2026会場でTネットの高井ゆと里さんが見つけたSRHR for ALLボード

「IPPFのブースで『Narrative(ナラティブ※)』に関するセッションを受けました。包括的性教育をめぐっては『3(強く賛成):4(どちらともいえない/よくわからない):3(絶対反対)』の構図が生じている、とのこと。両端の人たちは安定しているので、真ん中の『4』の人たちがどちらにつくかが実際の政治的な勝負どころになる。ここ数年は『4』の人たちが反対派に取られていますよね。これは反対派のナラティブに『4』の人々が影響を受けてしまっているからです。たとえば『若いうちから性交渉について教えるとかえって風紀が乱れる』『学校でLGBTの話をすると子どもたちが混乱する』『LGBTは海外の文化であって、日本固有の伝統的文化を壊すものだ』『LGBTは国際社会で決定権を持つ富裕層が押しつけてくる概念で、きわめて植民地主義的だ』……といった反対派の主張が『4』の人々に響いてしまっている。彼らのレトリックは正しい面もあるのかもしれませんが、これこそがバックラッシュ言説であり、私たちはSOGIESC(※)でブチブチと区切られ、分断されてしまっている。しかし私たちには、根強い差別に苦労してきた経験と、それを示すデータ(エビデンス)があり、SRHRとSOGIESCという国際人権の視点から新たなナラティブを言語化して語る力があります。私たちはもう一度つながり直し、反対派のレトリックをぶつけられた時に、データや実体験をエビデンスとして示しながら、私たちのナラティブを語り、『4』の人々の感情を動かして少しずつこちらに巻き込んでいく必要があると思っています」(高井さん)

※ナラティブ(Narrative):英語で「物語」「語り」を意味する言葉。あらかじめ決められた筋書き(ストーリー)とは異なり、「誰が、どう感じ、どう世界を捉えているか」といった語り手の個人的な視点・経験・感情などを通して紡がれるその人自身のプロセスです。日本ではビジネス・マーケティング、医療・臨床心理、ゲーム・エンタメ分野で広く用いられています

※SOGIESC(ソジエスク:人間の性の特徴であるSO(Sexual Orientation/性的指向)・GI(Gender Identity/性自認)・GE(Gender Expression/ジェンダー表現)・SC(Sex Characteristics/性的特徴)の頭文字をとった言葉。特定の人々ではなく、すべての人が持つ普遍的な属性を指します

「女性もLGBTQI+の人々も、同じ社会構造の中で本当に苦しめられているのですから、私たち『SRHR for ALL アクション!』のプラットフォームのように、横どうしが連帯してともにたたかうべきだと私は思っています。しかし、2010年代からLGBTQI+の活動が高まってくるにつれ、女性たちから外部化されてしまったという歴史があります。さらに昨今、一部のフェミニズムの文脈を使ってトランスジェンダーの人々を攻撃する人がいます。私たちは『アクション!』の枠組みをもっと広げていかなければなりません」(高井さん)

ジェンダー平等のためのメルボルン宣言

WD2026の最終日、地域・国内の市民界が十分な資源を持ち、政治的に守られ、国際的につながり、地域に根ざして活動できることの重要性を示す『ジェンダー平等のためのメルボルン宣言』が採択されました(日本語訳はこちら)。

オーストラリア・メルボルンの夜景をバックに記念撮影するSRHR for ALL アクション!メンバー

「包括的性教育の実現を考える時も、刑法性犯罪改正の実現を考える時も、『J(ジャスティス)』の視点を忘れないことが、みんなの権利を保障することにつながるのではないかと思います。『SRHR for ALL アクション!』では、これからもメンバー同士によるコラボ企画などを通じてともに活動していきますが、WD2026におけるみなさんとの貴重な学び、そしてジャスティスの視点を携えたアクションに、これからもご期待いただけるとうれしいです!」(福田さん)

『SRHR for ALL アクション!』のInstagramアカウントでは、ショート動画によるWD2026参加レポートを公開しています。ぜひご覧ください。

WD2026参加レポート前編はコチラ