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② 1984年 国際人口会議

2021.3.17

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リプロダクティブ・ヘルスが誕生してから2021年の現在に至るまでの変遷をポイントを抜粋しながら、シリーズで紹介しています。

1984年―国際人口会議 (International Conference on Population)、メキシコシティ

この会議では、1974年以降、家族計画に関する知識も情報・手段へのアクセスも一段と普及したことが認められた。

各国政府は、家族計画や母子保健が、個人とカップルの人権に寄与するものであり、人口学的手段としても有効であるとして、これを支持した。しかし、「世界出産力調査(World Fertility Survey)」の途上国に関するデータによると、もう子どもは欲しくないと考えている妊娠可能年齢の女性のうち、避妊薬(具)を入手できているのは半分にすぎなかった。

このデータは「満たされないニーズ」(unmet needs)、つまりカップルが避妊を望んでも避妊薬(具)が手に入らないという問題を、初めて明らかにした。
「出産可能年齢のカップルが今後10年間で大幅に増えるため、多くの国がかかえる家族計画の満たされないニーズは、対策を怠るとますます増大するだろう」。Paragraph 10(h)

男性
男性の役割も重要な要因であることが明らかになった。この会議では以下のことがうたわれた。「女性に十分に社会参加できる自由を提供するために、同様に必要なことは、男性が女性とともに家族計画、育児、その他すべての家庭生活の責任を分担することである。これらの目的を達成することは、人口政策を含む開発目標を達成する上で不可欠である」。 Paragraph7
人工妊娠中絶
安全でない中絶がもたらす危険は妊産婦死亡の主な原因であるという認識から、以下の勧告がなされた。「女性が中絶しないですむよう適切な手段を講じること。中絶は、いかなる場合も家族計画の手段として推進されてはならない。また中絶に頼らざるをえなかった女性には、可能な限り人間的な処置とカウンセリングを提供すること」。 Recommendation 18(e)

出産間隔をあけることも妊産婦死亡を減らす方法として強調された。各国政府には以下の要請がなされた。「母子保健プログラムにおける健康を守る手段として、家族計画を支援すること。それによって、女性の生涯における早すぎる出産または遅すぎる出産を減らし、出産間隔を延ばし、子ども数を減らすこと。また産後および/または授乳期の女性のニーズに特に配慮すること」。 Recommendation 18(f)

非政府組織(Non-Governmental Organizations:NGOs)
1984年の国際人口会議では、農村と都市とを問わず、女性と男性が避妊薬(具)にアクセスできる手段を、できるだけ早く増やすことが求められた。そのために、地域に根ざした配布(community-based distribution)や「ソーシャル・マーケティング」(補助金により運営される小売販売)のような新しい概念が導入された。

さらに重要なことは、女性グループとNGOの一層の参画を促したことである。会議では、彼らが家族計画サービスを拡大し効果を高める上で、変革の大きな力になることが認められた。 Recommendation 28

思春期の若者
思春期の家族計画ニーズは、この会議で初めて取り上げられ、情報と適切なサービスの必要性がうたわれた。「政府は、思春期の若者が家庭生活と性教育を含め、適切な教育を受けられるよう保障しなければならない。その際、親の役割と権利・義務に対し、また個人の価値観や文化的価値観の変化に対し、十分配慮しなければならない。思春期の若者には、各国の変化しつつある社会・文化的枠組みに則して、適切な家族計画情報とサービスが提供されなければならない」。Recommendation 29
メキシコシティ政策(Mexico City Policy)
男性の役割や思春期のニーズに対する認識、および家族計画の満たされないニーズ削減を目指すNGOの活用は、いずれも1984年のメキシコ人口会議の重要な成果だったが、この会議は別の理由から歴史に名をとどめることになった。

米国のレーガン政権(当時)が、会議の最中に非常に問題の多い政策を発表したのである。それは、いかなる手段であれ、中絶にかかわりのある組織には、米国の資金を拠出しないという政策だった。

その対象には、選択の自由を保障する立場から女性に公正な情報を提供している組織まで含まれた。「メキシコシティ政策」、通称「グローバル・ギャグ・ルール」(Global Gag Rule:GGR、口封じの世界ルール)として知られるこの拠出制限政策は、家族計画分野に深刻な影響を及ぼし、数多くの主要な家族計画組織が、1985年以降、1993年にクリントン政権が同政策を撤回するまで、米国の資金援助を受けられなくなった。2001年ブッシュ(ブッシュJr.)大統領は、GGRを復活させた。

* 国連国際人口会議「勧告」は以下参照
Recommendations for implementation of World Pop. Plan of Action (1984)

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