知るジョイセフの活動とSRHRを知る

アフリカ4カ国の経験と知恵を方法論に。 各国のメンバーがザンビアに集い、学び合った 「持続可能な保健推進プログラム」とは?

2022.3.7

2022年2月、アフリカ4カ国の保健行政やサービスを担うメンバーがザンビアに集合しました。各国がジョイセフとともに進めるプロジェクトの中で培った独自性や強みを持ち寄り、学び合うワークショップを通して、それぞれの国でのSRHR関連サービスの持続可能性と自立発展につなげていきます。

5年間の計画を立ててアフリカ4カ国で進めてきた「アフリカの妊産婦と女性の命を守る~持続可能なコミュニティ主体の保健推進プログラム」(武田薬品工業株式会社の「グローバルCSRプログラム」支援)が、2022年に最終年を迎えました。

これまでの4年間、ジョイセフはケニア、タンザニア、ガーナ、ザンビアのそれぞれの国で「人づくり」を中心に据えた支援活動を行い、その国・その地域に合わせたプロジェクトを進めてきました。

ジョイセフが常に目指していること。それはジョイセフの支援が終了しても、プロジェクトで実現した質の高いSRH(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス)のサービスが、変わらず地域の人々に提供され続けること。コミュニティが自立し、自分たちの力で健康を守っていける「持続可能な仕組み」が、その地域に残されることです。

アフリカ4カ国各地のプロジェクトの独自性や強み、経験を分かち合い、共通の学びとして今後に活かしていけるよう、ジョイセフは2022年2月、地域主体のSRHRプログラムで大きな成果を上げていたザンビアを開催地として、知識と経験の共有ワークショップを実施しました。

このワークショップにおける目標のひとつは、お互いからの学び合いにヒントを得て、「プロジェクト終了後も自立して発展を続けていくための、パワフルな活動計画をつくること」です。

フィールド視察からの学びをまとめる

 
新型コロナ感染症の影響を受けているのは、アフリカも同じです。参加者の感染対策も求められる中でのワークショップ開催は簡単ではありませんでした。
それでも、国は違えど、同じ立場・同じ志を持った人たちが集まり、「見て・感じて・話す」ことには大きな意味があります。同じSRHRの問題に取り組む同志として、お互いにエンパワーする。そんな効果も期待されていました。

生理用品を買うために自分を売る少女たち。
その過酷な現実を、プロジェクトを通して変えていく。

各国の代表が自分たちの経験を持ち寄り発表する中で、一番心に残ったストーリーがありました。ケニアのプロジェクト地区のひとつ、キベラスラム(ナイロビ最大のスラム)に暮らす思春期の少女の話です。

プロジェクトで行った中間調査によると、10代の少女の望まない妊娠の理由のひとつが、生理用ナプキンが手に入らないことだったそうです。生理用ナプキン=パッドを買うお金を稼ぐためにセックスをしている少女たちがいるのです。この状況を変えるため、プロジェクト地では資金調達に関して、コミュニティメンバーのトレーニングを実施しました。キベラの若者たちは、「パッド・ドライブ」という、学校に通う少女たちのための生理用ナプキンの配付・提供するための募金運動を開始しました。

その恩恵を受けたという女性、ローズさんの話を紹介します。

「月末になると、私は自分と妹の生理用品を買うために、男性に尽くすことをしていました(注・男性とセックスしてお金を得るという意味です)。ある日、友人が私のところにやってきて、月経と月経衛生について教えながら生理用品を配付しているピア・エデュケーターがいることを教えてくれました。私はそのピア・エデュケーターを探し、あるイベントに招待してもらいました。
そのイベントでは月経や月経衛生について教わり、自分の体について多くを学び、ナプキンのパックを受け取り、適切な使用法を教えてもらいました。ナプキンをもらうために何もする必要がなかったので、とても助かりました。それ以来、私はいつどこでピア・エデュケーターが活動をしているのかフォローしていますし、これまでに5人の友人を招待しました。彼女たちもこの活動から恩恵を受けています。」(ローズ)

生理用ナプキンが自分の体のことについて知るひとつのきっかけになり、同時にローズさんの人生を少なからず変えるきっかけになりました。
そして私たちプロジェクトチームにとっても、彼女の体験を知ることは、あらためて支援している一人ひとりの人生に思いを馳せる機会になりました。

※ピア・エデュケーターとは、保健の知識や情報を同世代の仲間たちに伝える若者ボランティアです。

行政トップも、草の根の保健ワーカーも、ボランティアも。一緒に学ぶことで、新しい可能性が見えてくる。

このワークショップには、プロジェクトに関わるさまざまな人々が参加しました。保健省の母子保健政策をつくる行政のトップ、郡の行政官、保健施設で働く助産師・看護師、保健ボランティア、薬局の人など、国の中枢から草の根まで「女性の命と健康を守る」というミッションを持つ人々が一堂に集まる、貴重な学び合いのチャンスだったのです。

プログラムの中では、4カ国の経験と情報を交換するだけでなく、ザンビアのプロジェクト地域を実際に訪れ、地域主体のSRHRプログラムを視察しました。

視察地のひとつであるザンビア・コッパーベルト州ムポングウェ郡カルウェオ地区のワンストップサービスサイトは、2016年に建設された。ワンストップサービスサイトでは、女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する良質な保健サービスを一カ所で提供。住民の手でメッセージがペイントされたマタニティハウスは、SMAG(地域ボランティアの母子保健推進員)が掃除を担当し、きれいに使われている。

 
たとえば、ルアンシンバという地域の人々は、外部からの資金ではなく、自分たちで資金を集めてマタニティハウス(出産待機施設)を建設しています。
カルウェオという地域では、2016年に建てられたワンストップサービスサイトを、保健スタッフ、母子保健推進員(SMAG)、地域運営委員会の人たちの努力と工夫でよい状態で管理し、質のよいサービスを届け続けています。

プログラムに参加した人々は、このような具体例を実際に見学し、現地で学ぶことにより、自分たちの強みや弱い部分を再認識し、自立的に発展していくための活動計画づくりに役立つ多くの具体的なヒントを得ていました。

同じくカルウェオ地区のワンストップサービスサイトで、助産師さんが行う両親学級を見学。

もう一つの視察先、ルアンシンバでは、スポーツを通じた若者のエンパワメントプログラムを視察した。

 
さらにワークショップの中で、ピア・エデュケーター、保健医療従事者、保健ボランティアなど、それぞれの国で同じような立場の活動をしている人同士でQ&Aをするセッションを設けました。

参加者の皆さんは、お互いの課題や成功事例などを分かち合うことで、自分たちの状況に応用できる方法論を生み出している様子でした。「自分たちでもっとできることがある」「自分たちの場合にはあの場所やグループを活用できるな」など、大きな気づきを得てエンパワーされている様子でした。

プロジェクト地区ごとに分かれ、他国からの学びを活かして、活動を継続していくための計画を作る。

コロナ禍でのワークショップ運営が、現地パートナー団体のスキルアップにつながっていく。

今回、エンパワーされたのはワークショップ参加者だけではありません。企画・運営を通して、ジョイセフの現地パートナー団体であるPPAZ(ザンビア家族計画協会)のスタッフも、大きな刺激と学びを得たようです。

ジョイセフは今回のプログラムで、PPAZとともに、企画・準備・運営の役割を担いました。特筆すべきは、特にワークショップ中、全体の実施運営をPPAZのンドラ事務所のスタッフが前面に出て実施したことです。これまでこうした地域・国際ワークショップはジョイセフのスタッフが中心となって実施してきましたが、今回、この役割を現地に手渡すことをひとつの目的として設定したのです。

PPAZのンドラ事務所のスタッフは、もちろんザンビア国内では多くの研修やワークショップ、会議を実施してきた経験がありますが、国際的なワークショップや会議の企画運営は初めてです。

コロナ禍で一気に進んだハイブリッド型のワークショップの実施は、機材や通信状況の制約もあり、うまくいかない部分もありました。それらも含め、今回経験を積んだことは、次の機会に大いに活かされると信じています。

ンドラ事務所で、今回ワークショップのディレクター役を担ったアリスさんは、「ワークショップに必要な物のアレンジや準備など、学ぶことが多いとてもワクワクする仕事でした」と感想を寄せてくれました。

参加者が肩書きから離れ、対等な関係性の中で皆が参加して作り上げるワークショップを実現するために、机の配置、席のアレンジ、参加者のグルーピング、グループワークが混乱なく進むための指示の方法、模造紙やカードの使い方、思考を深めるための質問の設定など、いろいろなテクニックをジョイセフは長年にわたって積み重ねてきています。今回、その方法を現地で活動するスタッフたちと共有していく絶好の機会になったと思っています。

フィールド視察に向け、47名の参加者は8グループに分かれてインタビュー用の質問を準備した。「迷子」にならないように、紙を貼る位置や、カードの使い方を工夫して行った。

ワークショップで得た気づきと学び、そして作り上げた活動計画をたずさえて母国へ。ジョイセフは、これからも伴走していきます。

ワークショップ参加者からは、多くの声が寄せられました。
「フィールド視察から、ザンビアの住民主導の保健活動を学んだ」
「自分たちの仲間に学びを伝えます」
「好事例を学び合い、共有するプロセスの中で、私たちのプロジェクトがコミュニティの人々によい影響を与えていると再確認できた」

ガーナから参加した一人であるオフォスさんは、毎日のように、ガーナのプロジェクト関係者に、メールで報告や学びを共有していたそうです。
「ザンビアの地域の人たちは本当に活動にコミットしている! 自分たちも本当の持続可能性を考え、今後を見据えたプロジェクトを計画していきたい」と熱く語っていました。

これから、各国の参加者はこのワークショップを通して作成した活動計画を持ち帰り、それぞれのプロジェクト地域の仲間たちと計画を練り、その実現と持続可能性について検討し、挑戦していきます。

5年間のプロジェクト期間が終わっても、これまで積み重ねてきた絆・つながりが終わるわけではありません。これからも連携し、コミュニケーションしながら、「誰一人取り残さない世界」の実現を目指して歩んでいきます。

これからも、皆さまのあたたかいご支援・ご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
 


 

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1日約70円・毎月2000円で、これだけの支援が可能になります。継続支援により、多くの女性の命と健康を守り続けることができます。

たとえば、ザンビアでは1年間で12人の女性が、設備の整った施設で助産師の介助を受け、安全に出産することが可能になります。
アフガニスタンのように、男性医師に肌を見せられない保守的な地域の女性のために、女性の医師や医療スタッフが対応する診療体制を用意できます。たとえば、36人の女性が、女性医師のもとで安心して医療サービスを受けられます。
12~13歳といった低年齢で結婚を強要され、毎年のように出産を余儀なくされている少女たちが、避妊を含む家族計画の知識を得たり、ピルやコンドームを手に入れることができます。
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