みんなを思う、誰もが慕う。アリスは 頼れる「お母さん」のようなリーダー。Alice Sinyinza from Zambia

IPPFザンビア(ザンビア家族計画協会:PPAZ)
ンドラ支部 プロジェクトマネージャー 
アリス・シンインザ Alice Sinyinza

ザンビアでジョイセフが展開する「ワンストッププロジェクト*」。
女性の健康づくりを促進し、リプロダクティブヘルスに関わる質の良いサービスと情報を一カ所で提供できる「ワンストップサービスサイト」を各地に整備しています。
今回紹介するのは、協力団体のザンビア家族計画協会(PPAZザンビア)ンドラ支部のプロジェクトマネージャー、アリス・シンインザさん(47歳)。
 
ハコモノを作って渡すだけの国際協力ではなく、ザンビアの人々に使われ、愛され、育まれる、現地での運営と人材養成を含めた「オーナーシップ」へ。
ジョイセフが目指した理想の実現に、現地との架け橋となったのは、一見もの静かなアリスの内に秘めた情熱と、常に前を向く生き方でした。
 

(ザンビアプロジェクト マネージャー 船橋 周)(2021年)

 
*ワンストッププロジェクト:
「妊産婦・新生児保健ワンストップサービスプロジェクト」(2014-2017)
「ワンストップサービスサイトによる生涯を通した女性の健康づくりプロジェクト」(2018-2020)

敏腕マネージャーの後を継いだ
シャイなアリス

ザンビアの首都ルサカから車で北へ5時間、第三の都市ンドラにジョイセフのオフィスがあります。ここにはジョイセフが1980年代からパートナーとして協働してきたザンビア家族計画協会(PPAZ)のンドラ支部があり、アリスはスタッフ総勢7名をまとめるマネージャーとして活躍しています。

今のアリスは頼もしいリーダーで、みんなのお母さん的存在。でも、初めて会った頃はおとなしくて、辣腕で鳴らした当時のマネージャー・ジョセフの後ろで、いつも自信なさげにしていました。

そのジョセフがなんとザンビアの国会議員に転身し、退職。代わりにマネージャーに抜擢されたのがアリスでした。そのタイミングで、ちょうど私も就学前の息子を連れてンドラに駐在することに。アリスとは同世代だったうえ、息子同士も同じ年頃だったので、仕事上のパートナーであると同時に‟ママ友達”としても助け合うようになりました。

電気技師への憧れを手放して
「女性の健康」に貢献することを志す

アリスは大家族の長女。家の手伝いや弟妹の世話をする働き者で、将来は電気技師になりたかったそうです。しかし20歳の時に転機が訪れました。2歳下の妹が、出産後まもなく、生後1カ月の子どもを残して亡くなってしまったのです。

妹の死に直面した辛い時期を支えてくれたのは地元の助産師でした。この経験をきっかけに助産師を志したアリスは、看護学校に通い、さらに学んで助産師の資格も取得。保健センターで助産師として働いた後、縁あってザンビア家族計画協会に就職しました。

ザンビアでは医療従事者が慢性的に不足しています。たとえば人口14万人くらいの郡には医師が2名、助産師は20数名しかいません。郡内の各保健センターにつき、助産師1名と看護師若干名が配属されています。アリスは助産師として多忙を極める中、現状を変えたいと思い、保健衛生のより大きなフィールドに関わる仕事を志したのでしょう。

彼女が家族計画協会の職員に応募した時、面接をした前マネージャーのジョセフは「おとなしいけれど、誠実で、心の中に情熱がある」とアリスを評して言いました。前向きで正直、そして人々の心に寄り添うアリスは、いつしか私たちジョイセフスタッフやザンビアの人々にとって、頼りがいがある‟お母さん”のような存在になっていきました。

そんなアリスが研修で日本に来た時のことです。来日した他のザンビア人研修員たちが見慣れない日本の食べ物を敬遠する中、アリスだけ生魚のお寿司に挑戦したばかりか、「おいしい!」と全部平らげたのには驚きました。一人で電車を乗り継いで新宿まで買い物に出かけたり、勇気も行動力もあるのです。

おとなしいと思われていたアリスでしたが、実はこんなふうにワクワクすることが大好きな人でした。やがて彼女はマネージャーとして経験を積み、意欲的に新しいことに挑戦し、みずから楽しんでまわりを巻き込んでいくような「彼女らしいリーダーシップ」を発揮することになります。

女性の健康に関わる保健サービスが
一カ所で受けられる「ワンストッププロジェクト」

ジョイセフがザンビア各地で進めてきた「ワンストッププロジェクト」は、女性の健康のためのサービスです。地域に元々あった保健施設に加えて、分娩室を備えた母子保健棟、出産まで待機できる「マタニティハウス」、若者が集うユースセンター、助産師の住居、水タンク等を整備。リプロダクティブヘルスに関わる良質な情報と保健サービスを、1カ所の‟ワンストップサービスサイト”で提供できるようにしました。

私は2001年にジョイセフに就職して以来、ずっとアフリカに関わっています。ザンビアの「ワンストッププロジェクト」が始まる前は、その前身になる母子保健推進員(SMAG)の養成や、マタニティハウスの建設に携わっていました。

2011年には水も電気もなかったムタバという地区に、第1号となる「ワンストップサービスサイト」を開設。現在までにザンビア全土で5つのサイトが完成しました。危険を伴う自宅出産ではなく、衛生環境のよい施設で出産する妊産婦が増えて、現地の周産期ケアは大きく改善されました。

私はザンビアと日本を行き来しながらプロジェクトを進めてきましたが、2016年からの1年間は、先述した通りザンビア駐在でした。ちょうどアリスも現地協力団体のマネージャーに昇格したところで、お互い慣れない生活と職務に悪戦苦闘しながら、励まし合って仕事していたのを思い出します。

頼れるボスだったジョセフが去り、アリスはマネージャーの重責にプレッシャーを感じていました。「部下を育てなくては」「皆を導かなくては」ととまどう彼女に、私はよく声をかけました。たしかにジョセフは経験や政治力があった。けれどもアリスは自分らしくやればいいと思う。誠実で、前向きなアリスと一緒に仕事ができてうれしい。そんなことを伝えたのを覚えています。

私も異国での仕事と育児で悩みが多く、事務所のスタッフ皆に助けられましたし、何といってもアリスを頼りにしていました。その後私は帰国しましたが、相変わらずザンビアと行き来し(今はコロナ禍で行けませんが)、アリスと協力して仕事を続けています。

ジョイセフが伝えたノウハウが、現地に根付き、発展していく。
アリスのリーダーシップが原動力に

ワンストップサービスサイトの整備で、特に印象に残ったのはマタニティハウスです。遠方から来た妊婦さんが出産まで待機できる施設なのですが、設計の段階から現地の人々にヒアリングを行いました。使い勝手、光や風の流れ、そして動線。模型を作り、それをもとにまた話し合って案を練ります。内装はもちろん、外装も一工夫。マタニティハウスの1号目は葉っぱをカラフルな版画にして、2号目からは妊娠・出産をテーマにした壁画をデザインし、現地の人々と一緒に鮮やかな色彩で描きました。

アリスは「このハウスではどんなテーマを伝えたい?」「ポジティブなメッセージを出して行こう」と話し合いをリードし、現地の人々をどんどん巻き込んでいきます。技術とノウハウは村から村へと広がり、プロジェクトが現地に根付いていきました。

こうして整備されたマタニティハウスやワンストップサービスサイトは、単なる「外国からの援助で建てられた施設」では終わりませんでした。ザンビアの人々が愛着を持ち、みずから運営やメンテナンスも行う現地コミュニティの「オーナーシップ」へと進化し、発展し続けています。ジョイセフのノウハウをザンビアの人々に伝え、一緒にプロジェクトとして形作っていくために、アリスのリーダーシップは大きな原動力となりました。

「できるだけ多くの人と話をして、健康を守るため、ポジティブな行動をとれるようにサポートするのが私のモチベーションなの」と話すアリス。つねにコミュニティの人たちに寄り添う彼女は、厚い信頼を集めています。そして私も、こんな素敵な‟チームメート”と出会えたことに、あらためて感謝したいと思います。

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日本と途上国の女性が、フレンズという「絆」でつながる、毎月定額の募金プログラム。
金額は自由に決められます。
たとえば一日約70円、月2000円の支援で、ザンビアでは1年間に12人の女性が助産師の立会いのもと、安全に出産できます。
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