ひとジョイセフと一緒に、世界を変えていく「ひと」

政策提言を通じて 世界の女性に貢献したい

ジョイセフ アドボカシーマネージャー

斎藤 文栄

2021.4.2

写真:ムハンマド・ナシリUN Womenアジア太平洋地域事務所長と北京+25地域準備会合CSO会議(バンコク)にて

これまで、NGOや国連、国会、政府などいろいろなところでずっとジェンダーに関わる仕事をしてきました。

一番長かったのは国会議員の秘書で、配偶者暴力防止法など、国内におけるジェンダー関連の政策づくりを担当していました。とても充実していましたが、一方で、本当に一人ひとりの生活を良くすることに繋がっているのだろうか、という疑問を感じていたのも事実です。

そんな疑問を抱いたまま、配偶者の転勤で英国に移住した機会に、エセックス大学大学院に進学し、国際人権法を学びました。国際人権には自由権と社会権というものがあり、私が興味を引かれたのは社会権。

国家による自由と言われますが、社会的・経済的弱者が人間に値する生活を営むことができるように、国家の積極的な配慮を求めることができる権利のことです。あるとき社会権の教授が、妊娠・出産が理由で亡くなる人数は、死刑によって亡くなる人の数よりも多い、当時の数字で100倍ほどと教えてくれました。衝撃的な数字でした。

この話が頭から離れなかった私はいつしか、女性のからだや命を守る仕事をしたいと考えるように。
そんなとき、ジョイセフがアドボカシーグループのスタッフを募集していることを知り、入職を決意したのです。

成果はすぐに見えてこない。でも続けること。
その先に現状を変えるきっかけがある。

私が現在関わっているアドボカシーとは、政府や議員に対して政策提言をすることです。ジョイセフのアドボカシーは、特にセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツに対する日本政府の政策的・財政的な支援を増やすことを目的としています。

アドボカシーの仕事の内容を見た時、これなら私の経験を活かして現場に貢献できると感じました。途上国へ行けなくても、途上国を含め世界の女性たちに何らかの形で貢献をするためには、こういうやり方もいいのではないか、と考えたのです。

声を上げないと世の中は変わらない、声を上げることで変わる、というのがアドボカシーの基本です。
ただ、日本は、海外に比べ社会運動に対する興味・関心が低い気がします。私自身、ずっとアドボカシーに関わっていますが、自分たちが動いていることは実を結ぶのか、と時折、疑問を持つこともあります。

それは政策という、あまりにも大きなものに立ち向かっているからです。アドボカシーの活動は、言うなればトライアンドエラーの繰り返し。何十年と政策を変えようと運動してきても報われずに疲れてしまった、という人もたくさんいます。それでも私たちは、世界で必要としている人がいる限り、声を上げ続けます。女性が選択できる社会を、世界中でセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツを実現するという目的に向かって、アドボカシーを続けます。

ジョイセフのアドボカシーグループは、国際的なネットワークの中でジェンダー問題に取り組んでいます。もちろん国内のジェンダー問題についてもアドボカシーしています。

特徴的なのは、アドボカシーをジョイセフだけでやっているのではなく、さまざまな団体とネットワークを組みながら動いていることです。ひとつの団体があげる声は小さくても、皆で声を上げれば大きな声になります。市民社会全体でアドボカシーをすることが大切だと思っています。

ジョイセフは、最近は、ジェンダーの課題に興味を持ってくれた若い世代を積極的に支援しています。

2019年には、国内で声を上げた若者を国際会議に送り出しました。Women Deliver(ウーマン・デリバー)という、ジェンダー平等や女性の健康に関する世界最大級の国際会議がバンクーバーで開催されたのですが、そこに日本人のユースの女性2人を送り出したのです。

彼女たちは現地で、世界の人々と議論し、日本がいかにこの分野で遅れているかを実感して戻ってきました。帰国後にはその時の体験や思いを、各所で話し、次のアクションへとつなげてくれました。

これまで日本では、若い世代が主役となってジェンダー課題に取組むことがなかなかありませんでした。しかし時代は確実に変化しています。日本や海外で若い世代が声を上げ、社会課題の解決に立ち上がる姿がメディアなどを通じて知られるようになってきました。

このようなことの積み重ねが今、若い世代に「ジェンダーの課題に取り組むのがカッコいい」という雰囲気を生み出しているように感じています。そして彼らの思いや行動は、間違いなく社会の変革する力になっています。

これからはアドボカシーの時代。
次の世代に向け、取り組みを広めたい。

世界でのこのような潮流を見ていると、これからは間違いなくアドボカシーの時代になると思います。特に若い世代には興味のある人が多いと思います。

2020年は政府の男女共同参画基本計画の改正期でした。そこで、ジョイセフでは、「#男女共同参画ってなんですか」というプロジェクトを起ち上げました。

これは男女共同参画基本計画の改正に合わせて政府が募集するパブリックコメントに声を届けようという、若い世代による、若い世代向けのプロジェクトでした。

プロジェクトでは若い世代がSNSを中心に声を上げてくれて、1カ月半の間に1000以上のコメントが集まりました。今まで若い世代の声がこれだけパブコメに集まったことはないのではないでしょうか。

さらにプロジェクトの参加者が、集まった声をもとにユース提言を作成し、男女共同参画担当大臣に直接届けることもできました。パブコメやユース提言で届けた意見が、実際に新たな政策として入りました。若い世代がアドボカシーをやると、こんなに大きな成果が得られるのだと、改めて若い世代の可能性を感じた瞬間でもありました。

日本は、海外に比べれば、まだまだジェンダーについての理解や取組みが遅れています。国内でもジェンダー平等に対する理解が進まないと、どんな動きも一過性で終わってしまいます。

そのためにも今回のように、若い世代が動くための支援をするといった、人の土台づくりは不可欠です。海外では10代や20代がアドボカシーに興味を持ち、活動しています。

彼らは、もはやアドボカシー活動の中心を担っているのです。「#男女共同参画ってなんですか」のプロジェクトがきっかけとなり、日本もそうなっていくことを期待しています。私たちでは手が届かなかったところを、ユースだからこそのやり方で一気に変えていってくれる。その可能性にワクワクします。

アドボカシーは私たちのような組織の人だけが携わるものではなくて、誰もが「自分ごと」として取り組んでいって欲しいと思います。それは勇気を出して自分の声を上げることから始まります。一人ひとりの声が集まって世の中が、誰もが自分らしく生きられるように、生きやすいように変わっていったら素敵だと思います。

ジョイセフでは、海外や日本のプロジェクトの現場で拾い上げた女性たちの声を、政府や国会議員にも届けることで政策を動かしていきたい。アドボカシーをすることで、いろいろな国や地域で生きる女性たちに支援が届くように。

そんなふうに現場に貢献していきたい。やれることはまだまだあると感じています。

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