ひとジョイセフと一緒に、世界を変えていく「ひと」

妊婦やお母さんたちに、ファッションの選択肢を

ヴィリーナジャパン CEO

青木 愛

2022.12.6

青木愛さんが2006年に立ち上げたセレクトショップの「VIRINA」(ヴィリーナ)は、妊婦や子育てを頑張る女性たちのための衣類や小物を海外から輸入したり、自社ブランドで製作して販売しています。
 
もともとはファッションエディターとして、US版『エル・ガール』や『エル・ジャポン』の編集部など最前線で活躍し、アメリカで第1子を出産。その経験がきっかけとなり、「お母さんたちを応援したい」とヴィリーナを立ち上げました。
 
立ち上げの当初から、売上の1%を毎月寄付いただき、ジョイセフスポットとして店頭への募金箱の設置やお客様へのジョイセフの紹介など、さまざまな方法で世界の女性や母親をサポートしてくださっています。
 
今回は青木さんに、ヴィリーナ立ち上げの経緯や女性の支援への想いを伺いました。

妊娠したら経済活動から外されてしまう。そんな状況を変えるために

-最初に、VIRINA(ヴィリーナ)とはどんなお店なのか教えていただけますか?

ヴィリーナは、妊娠中や育児中の女性向けに衣服やファッション小物を扱っているショップで、海外メーカーの製品のほか、自社ブランドの製品も扱っています。いずれも壊れにくく手入れしやすく、価格も抑えめ。さらに、ファッション性の高さと着やすさを大切にしています。

例えば、シルエットがきれいなマタニティウェア、足にフィットして歩きやすいバレエシューズ、子どもが引っ張っても切れないポーチのショルダー紐、撥水加工を施してコーヒー染みがつかないTシャツなど、おしゃれに長く使っていただける商品を揃えています。

歩きやすく軽いバレエシューズ。リボンは子どもが引っ張っても解けないように作られている


 
-立ち上げまで、どのような経緯があったのでしょうか?

ヴィリーナを立ち上げる前は、日本のモード系ファッション誌の編集者として、アメリカ・ニューヨークの支社に勤務していました。いま私には4人の子どもがいて、第1子はニューヨークで妊娠・出産したのですが、ニューヨークと日本で妊娠・出産を経験したことで妊婦の社会的な立場が両国で違うと痛感しました。

ニューヨークではマタニティウェアの品揃えは豊富で、プレゼンの場にも着ていけるような白いシャツやシルエットがきれいなロングドレスなど、妊娠してからも社会の一員としてビジネスを回していける衣服が揃っていました。

でも日本では、どの服も色がピンクやブルーなど淡い色で、ゆったりとしたデザインで……。ビジネスの世界でもファッションの世界でも、妊娠した途端に、経済圏から外されてしまうように感じたのです。妊娠しても着たい服を着続けられるように、ニューヨークで見た妊婦の選択肢の多さを日本で広めるために、まずファッションを輸入することにしました。

-そんな青木さんの考えに賛同されるお客様も多そうですね。

広告はほとんど出していないのですが、おかげさまで、お友達やお知り合いにご紹介くださるお客様もいらっしゃいますし、ヴィリーナを長くご利用くださるお客様もいらっしゃいます。お子さんがお腹のなかにいるときから大学生になるまでご愛用いただくことも多いんですよ。

妊娠してもおしゃれを楽しめて、お母さんになっても子育てがしやすいとお客様に喜んでもらえて、売上の1%をジョイセフに寄付することで世界の女性にも喜んでもらえて、私もうれしいという、”三方良し”が実現できているように思います。

妊婦や出産にまつわる格差の体験が、ジョイセフを通した支援につながった

-ヴィリーナ立ち上げ当初からジョイセフへの寄付をしてくださっていますよね。

ニューヨークでは、どの起業家も、企業経営で利益を得るだけでなく、得た利益を社会に還元することを考えています。そういう方たちと接していた経験もあって、経営と寄付をセットで考えることは、私にとってごく普通のことでした。

ジョイセフのことは、妊婦や母子に関わる活動や団体を寄付先として探していて知りました。顔が見える関係性を築けるところが良かったので、ジョイセフの規模感や情報の出し方の温度感は理想的でした。


 
-事業との関わりももちろんあると思いますが、女性や母子の支援という考えにこだわった理由などはあるのでしょうか?

第1子の出産時に、病院で貧富の差を体感したんです。アメリカは国民皆保険制度ではないので、お金がない人にとっては「いかに安く産むか」が大事です。お金をかけない分、病室は大部屋で病院側も全くケアをせず、出産から2日間で退院することもあります。その一方で、お金のある人達は個室を選び、手厚いケアを受けています。

私は当時、「1人目だからお金をかけてもいい」と考えて個室を希望しましたが、入院初日は空きがなくて大部屋に泊まりました。大部屋では、ナースコールをかけても誰も来てくれないし、立ち上がれなくても自力で用が足せるようにベッドの側にトイレが設置されていて、気持ちのいい環境ではありません。ところが、翌日移った個室では待遇がまるで違いました。「同じ日に同じ病院で出産する人でも、こんなに格差があるのか」とショックを受けたんです。

国ごとの違いにも興味を持ったので調べてみると、アフリカでは産院の衛生環境が整っていないばかりか電気が通っていなかったり、何10キロも先にあったりして、出産で亡くなる方もいる、もっと壮絶な環境であることを知りました。そこで、母子を支援したいという信念を固めました。

-ジョイセフを知ってからは、どのようにアプローチいただいたのでしょうか。

直接電話をかけて事務所に伺い、プレゼンしました。店舗で扱うマタニティウェアを寄贈してはどうかと提案しました。

でも、「衣服は現地の人にサイズが合わない可能性があり、もともとの文化も産業も尊重したい。それよりはビタミンのサプリ、教育資金、インフラ整備などにつながるお金が良い」という返事をいただいたのです。そこで、本当に役立つものを届けることができるのなら、と“売上の1%の寄付”を継続する形での支援に決めました。

最初は、1%はとても少額になってしまうのではないかと心配していたんですが、会社が大きくなるにつれて寄付額も増えてきました。結果的に、継続することを前提に1%にしてよかったと思います。

-2021年3月末までの累計で、2358万6769円も寄付いただいています。寄付つき商品も開発・販売してくださっていますよね。

チャリティグッズや普段の寄付金を、アフガニスタンやザンビア、タンザニア、その他の地域での、診療や出産施設の建築・改修、スタッフハウスの新設、ソーラーパネルの寄贈など、さまざまな活動に役立てていただいています。

お客様たちにも、ヴィリーナとジョイセフはちゃんと寄付を形にしてくれるという実感を持っていただくことができて、ジョイセフフレンズに加入してくださったり、店頭に置いている募金箱にもお金を入れてくれます。千円札を入れてくださる方もいるんですよ。

ミャンマー・エヤワディ地域の助産院兼診療所(左)の隣に、スタッフハウス(右奥)をヴィリーナと他2社の共同支援で建設

アフガニスタンとウクライナの子どもたちを支援するチャリティバッグ

-2022年8月5日から、チャリティバッグを販売されていますよね。今回はどのような企画なのでしょうか?

ヴィリーナ16周年を記念する企画です。発端は、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの侵攻でした。

ウクライナの子どもたちを支援したいという想いからチャリティ企画を考えたのですが、ジョイセフのスタッフの方から、「ウクライナをきっかけに、同じように深刻な状況にある国にも目を向けてほしい。アフガニスタンもタリバンによる2021年8月の権力掌握から干ばつ、新型コロナウイルス感染症の拡大、食料危機などで支援が必要な状況です」と聞きました。

そこで、このチャリティバッグの売上を半分ずつ、特定非営利活動法人 子供地球基金とジョイセフに寄付し、両国を支援することに決めました。

バッグの側面には、両国の女性と子どもたちが安全に暮らしてほしいという願いを込めて、「Peace begins with a Smile」というメッセージをプリントしています。私自身も子どもが4人いるので、子どもたちが傷つくのには本当に心が痛みます。

中央にあるのがチャリティトートバッグ

次の10年は、子どもたちと一緒にさまざまな国を直接訪問したい

-これまでの16年間、ビジネスをされてジョイセフもご支援いただいてきたなかで、今後やりたいことなどはありますか?

ビジネスは、ファッションで女性を幸せに、というモットーを引き続き大事にしながら、大きく育てていきたいです。

世界の妊婦と母子の支援については、次のステップに進んでみたいなと思っています。実は、まだ一度も現地を訪問したことがないんです。お金を現地で効果的に使ってもらうという意識をもち、私自身の生活の基盤と会社があるなかで無理のない範囲でやれることを最大限やってきたつもりですが、次の10年間はさまざまな国の現状を直接見て想いを深めていったり、もうちょっと何かができたらと思っています。

それから、子どもたちも落ち着いたら、一緒に現地へ行って支援のサポートをしたり、現地の様子を見せることができたらいいですね。私と同じようなことを考えている親御さんもとても多いので、チャリティを兼ねたキッズ企画みたいなものをジョイセフが企画してくれたら喜ぶと思います。

今後、チャリティはトレンドになると思います。ジョイセフは、実質支援やさまざまなイベントを実施されてきているので、たくさんの人を巻き込んで、メディア露出もどんどん高めて、支援の裾野をもっと広げていってほしいです。

4歳の娘さんと

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