『SRHR for ALL アクション❕』初年度アクション振り返り報告【第2回年次会合実施レポート】
2026.6.26
- SRHR for ALL アクション!
- 実施レポート
日本でSRHRを推進するため、多様な活動を実践している市民社会アクターが連帯し、それぞれの専門を通して『包括的性教育の義務教育への導入』および『刑法性犯罪改正』という2つのミッション達成を目指すプラットフォーム『SRHR for ALL アクション!』。5月末、神奈川県某所にて第2回年次会合を行いました。

メンバー14団体のうち13団体の代表者が一堂に会し、『SRHR for ALLアクション!』初年度における活動報告に加え、今年度の活動計画を発表。お互いの活動に関する相互理解をグッと深めたほか、メンバー同士の親密な交流コラボ企画の立案、具体的なアクション計画策定といった展開も生まれ、全体を通して非常に有意義な会となりました。本レポートでは、各メンバー団体の活動報告や今後の予定をダイジェストでお届けします
参加団体 ※順不同
#なんでないのプロジェクト
NPO法人ピルコン
一般社団法人Spring
SOSHIREN女(わたし)のからだから
一般社団法人Tネット
DPI女性障害者ネットワーク
滞日ネパール人のための情報提供ネットワーク
一般社団法人NOTOTO.
アクション琉球・沖縄
公益財団法人ジョイセフ(事務局)
また、今年から以下の団体が新たに加入し、活動の輪をより広げていくこととなりました。
認定NPO法人ピッコラーレ
Be the Change Okinawa
NPO法人Sisterhood
認定NPO法人ReBit
※一般社団法人“人間と性”教育研究協議会は都合により不参加
メンバー団体の初年度活動報告・直面している課題・今年度の活動計画について
【新規加入】認定NPO法人ピッコラーレ
右:中島かおりさん(代表理事)・左:土屋麻由美さん(副代表理事)
助産師として数多くの妊娠・出産の現場に立ち会ってきた中島さんと土屋さん。「社会や家族とのつながりを持てず、本当に大変な妊娠・出産に命懸けでたったひとり立ち向かわなければならない女性たちをとにかくどうにかしなければならない」と痛感し、2015年に妊娠葛藤相談窓口『にんしんSOS東京』を設立してから10年が経ち、その活動はますます多様化しています。
「ネットカフェや友達の家を転々としながら妊娠を続けている女性がいます。子どもの虐待死は0歳児が最も多いという調査結果も出ています。社会から断絶されて孤立する妊産婦をひとりでも減らしたくて、豊島区の空き家活用事業を活用して、2020年に『若年妊婦のための居場所ぴさら』を作りました。でも、ぴさらを卒業した子たちが再び生活が不安定になって、暴力被害に遭ったり、性風俗産業に戻っていったり、子どもが育てられなくて児相に預けたりというさまざまな問題があります」(土屋さん)
「中絶後のことを相談できる窓口として『PUPU』を運営しています。これまで寄せられた中絶にまつわる相談事例やデータをまとめた『中絶白書』も作成中です。『助産師なのに中絶を応援するのか?』と言われることもありますが、子どもを産むか産まないかを決めるのは女性の権利。私たちは中絶という辛い経験を背負って悩み苦しみ続ける女性に寄り添います」(中島さん)
【新規加入】Be the Change Okinawa
親川裕子さん(代表)
沖縄県内外の大学でジェンダー、平和・人権論などの非常勤講師を務める親川さん。現在は、1950年代、米軍統治下における沖縄で実践された国際福祉(国際養子縁組・無国籍児)に関する論文に取り組んでいます。
「『SRHR for ALLアクション!』では、沖縄県内で発生した性加害事件の裁判傍聴活動から、性暴力加害者の『不処罰』の実態を明らかにすべく調査研究を行っています。「不同意性交等罪などの性犯罪事件、性犯罪裁判の傍聴活動をとおして若年被害者など、実態の深刻さを痛感する日々です。改正されたとはいえ、そもそも性犯罪は起訴率の低さなど、不当な『加害者不処罰』の現実がありますし、現刑法では量刑が軽すぎます。再発防止策も十分ではなく、被害者救済にまったくつながっていません。そのうえ在沖米軍人による事件となれば、日米地位協定や日米合意など政治の問題が横たわり、被害者救済への道程がより複雑化してしまいます。傍聴活動からより課題を明らかにすべくこれからも活動を続けていきます」
【新規加入】NPO法人Sisterhood
(左)小笠原千秋さん(代表理事)・(右)片山枝美さん
高校の司書として働いていた小笠原さんが、女性どうしの連帯を意味する言葉である“Sisterhood(シスターフッド)”を冠した団体を立ち上げたのは2022年のこと。小笠原さん・片山さんが暮らす山形県は、女性の賃金が全国ワースト2位で女性の経済的自立が難しい、3世代(親・子・孫)同居率が高く旧来型の家制度や家父長制が温存されやすいといった特徴を持つ、保守的なエリアとして知られています。
「司書時代、いじめ・性・進路・ヤングケアラーといったさまざまな問題に悩み、図書室や保健室にしか居場所のない生徒たちにたくさん接してきました。また、私自身もハラスメント体験を誰にも相談できずに生きてきました。家庭や職場で被害に遭っても『自分が悪い』と思い込まされ、声を上げにくいという実態が、山形の女性たちが地域の中で活躍しづらい一因だと考えています。旧態依然としたジェンダー秩序の中で同様の生きづらさを抱える性的マイノリティの人々や障害を持つ人々とも連帯していきたくて、Sisterhoodを作りました。居場所のない若年女性たちがほっと一息つけるようなフリースペース『Mayflower』を設け、夜ごはんを一緒に作って食べる会を開いたり、心理士が常駐するユース保健室を運営したり、就活スーツ無償貸出事業を実施したりしています。ゲスト講師とともに女性支援の学びの場づくりも行ってきました。志をともにするさまざまな立場の人たちと連携し、山形を誰しもが生きやすい地域社会にしていくために、活動の輪を広げていきたいと考えています」(小笠原さん)
【新規加入】認定NPO法人ReBit

左・中島潤さん(事務局長)・右:藥師実芳さん(代表理事)
2009年より、LGBTQ+の人々が自分らしく「学ぶ・働く・暮らす」ための教育事業、キャリア事業、行政・福祉事業、アライシップ(※)事業を展開しているReBit。
「LGBTQ+の子どもたちのうち、約7割が幼少期にいじめや暴力の被害に遭い、かつ半数近くが過去1年以内に希死念慮を抱えた経験があるという調査結果が出ています。しかも、教員養成課程でLGBTQ+について学んだ経験があると答えた教職員の割合はわずか13%。当事者の子どもや若者にとって、学校は安全な場所ではないのです。そこでReBitでは、児童生徒向けの授業、教職員や教育委員会への研修、調査・教材作成、学校への伴走支援を通じて、LGBTQへの理解を深め、安全で包摂的な学校環境を先生方とともに育んでいます。授業や研修の実績は1700回を超えました。2024年度からは、小中学校のすべての保健体育の教科書にLGBTQ+について記載されるようになっています」(藥師さん)
「どうやったら『排除されてしまうような子どもたちがいない学校』を作ることができるのか。子どもたちにも先生たちにも正しい情報を届けられるよう、さまざまな活動に取り組んでいます。ぜひみなさんともつながりたいです」(中島さん)
※アライシップ(Allyship):社会的に差別や抑圧、疎外を受けやすい立場の人々(マイノリティ)に対して、当事者ではない人が理解を示し、積極的に支援・擁護する行動や姿勢のこと
#なんでないのプロジェクト
左:福田和子さん(代表)・右:髙橋知春さん
「なんでないの?」という素朴な疑問から解決策を探り、当たり前の権利(SRHRとジェンダー平等)を実現することを目標に、性を通じて傷つくのではなく、人生が豊かになれる社会をつくることをコンセプトに掲げて啓発活動に取り組む#なんでないのプロジェクト。(諸課題は残りつつも)緊急避妊薬のOTC化を実現したばかりですが、『SRHR for ALLアクション!』2026年の活動として特に力を入れているのが、SRHRに取り組むユースのコミュニティづくりとその拡大です。
「全5回からなるイベント『私たちが本当に欲しい性教育カイギ』を開催しています。Proud Futures、地方女子プロジェクト、SRHRユースアライアンスといった各団体にご協力をいただき、4月に実施したキックオフイベントには150名ほどの一般参加者が集まりました。以降、特に関心を持ってくださったユースのみなさんと一緒に、政府主導で進められているプレコンセプションケア(プレコン)についてさまざまな角度から分析し、プレコンが抱えるリスクを浮き彫りにし、どうしたら誰も傷つけない、私たちが本当に必要とする包括的性教育が実現するのかを考えるプロジェクトを推進中で、最終的にはガイドブックを作成したいと思っています。あえて和室に集い、みんなで畳の上に座ってワイワイと楽しく活動しています」(福田さん)
NPO法人ピルコン
左:染矢明日香さん(理事長)・右:菊池愛子さん
『SRHR for ALLアクション!』の活動として、2026年2月、性教育や緊急避妊薬に関する一般市民の意識の実態や社会的ニーズ、性教育における“はどめ規定”の影響を明らかにするため、全国の10〜60代約5000人を対象としたWebアンケート『性教育と緊急避妊薬に関する意識調査2026』を発表したばかりのピルコン。10年に1度とされる学習指導要領改訂に向けた中央教育審議会(中教審)の答申を8月に控え、6月23日(水)に院内勉強会「子どもを性暴力から守る教育を広げていくための課題と展望 〜学習指導要領改訂に向けた現場からの提起 〜」を開催し、発信を強めています。
「アンケート調査分析の結果、学校における性教育は充実してきている一方でいまだ不十分であり、若者や保護者の求めるニーズとギャップがあることがわかりました。性に関して信頼できる情報源がなく、相談しづらさを抱える人が多くいることや、“はどめ規定”(義務教育では妊娠の過程や性交について扱わない)・包括的性教育・緊急避妊薬といった言葉や概念の知名度がまだ低く、必要な時に必要な情報が行き渡っていない実態も明らかになりました。妊娠・避妊・性的同意に関する教育が、子どもや保護者のニーズに即して小中学校で確実に実施されるよう、学習指導要領の改訂において明確に位置づけるべきですし、 若者世代が安心して信頼できる、性に関する情報源、相談・支援を受けられる環境整備を進めることの大切さを痛感しています」(染矢さん)
「保護者層は子どもに対し、より早い段階での性教育を求めていますし、“はどめ規定”撤廃については前向きな発信をするメディアも数多くあります。一方で、文科省・中教審や国会において、学習指導要領改訂における具体的な方向性は十分に示されていません。私たちは引き続きロビイング活動を継続し、小・中学生向けの包括的性教育教材作成や、今回全国のユース向けの相談支援やユースクリニック事業を行う実践を調査・分析した『ユースヘルスケア/ユースクリニック白書』の配布などを通じて、あきらめずに声を上げていきたいと思っています」(菊池さん)
一般社団法人Spring
延川美沙さん
性暴力被害当事者団体として日本で初めて法人化されたSpring。被害当事者が自らの体験を語ることで、被害実態に即した刑法性犯罪規定となるよう、政策提言やアドボカシー活動を実施しています。性被害を経験した人生を“社会資源”ととらえ、刑法改正をはたらきかけ続ける精神力と実行力には本当に頭が下がります。
「『SRHR for ALLアクション!』の活動としては「2023年の刑法改正から2年が経ったのをめどに、2025年8月、日本・韓国・台湾・香港の東アジア4エリアの専門家が集い、各国の性犯罪に関する法制度や運用の実情を共有するパネルディスカッションを実施しました。性犯罪の公訴事項撤廃と長期事件の捜査・立証のあり方、YMY(Yes Means Yes:行為者が相手の積極的・肯定的な同意を確認しなければ処罰される )型規定の導入と“同意”の社会意識化、デジタル性暴力への包括的規制と被害者支援体制の構築、市民社会によるアドボカシー戦略と政府との連携などを話し合い、『東アジア性犯罪法比較白書』も作成しました。
2026年に入り、解散総選挙の影響はありつつ、3月から5月にかけて14名の国会議員と面談し、性暴力被害当事者の声を政策に届け意見交換するロビイング活動を行いました。6月に刑法性犯罪の公訴時効のさらなる見直しを求める院内勉強会を実施するので、みなさまもぜひご参加ください」(延川さん)
SOSHIREN女(わたし)のからだから
左:大橋由香子さん・右:村田真梨子さん
堕胎罪の撤廃と母体保護法の見直しを求めて活動するSOSHIRENは、メンバー団体の中では最も長い歴史があります。1982年8月29日「’82優生保護法改悪阻止連絡会」発足ののち、11月3日、東京・山手協会で改悪反対集会「産むのは女たち 産まないと決めるのも女たち」を実施。以降も一貫して『女(わたし)のからだは私のもの、私が決める』という主張を掲げ、人工妊娠中絶を犯罪として女性を罰する刑法・堕胎罪の廃止を訴えています。また、避妊、妊娠、出産などにおいて、国や制度による管理や介入を排し、個人の決定権が尊重されることや、障害の有無などを基準に生命を選別する考え方(優生思想)や身体を管理する旧優生保護法(強制不妊手術)に強く反対してきました。
「『SRHR for ALL アクション!』の活動として、私たちは『おしゃべりツアー』を実施しています。2025年にVol.1を茨城つくばのサッフォーで、Vol.2を岡山のスロウな本屋で、Vol.3は小田原で村田さんがやっているPodcast番組『Mellowing Coke』の公開収録イベントにゲスト出演し、2026年にVol.4を東京のエトセトラブックスで、Vol.5を沖縄・那覇のプンガポンガで開催しました。Vol.4のテーマは『女と障害とSRHR』で、SOSHIRENメンバーの米津知子さんに、1970年代初頭の優生保護法改悪問題に取り組む過程で発生した女性運動と障害者運動の葛藤を伺いました。中絶は女性の権利ですが、中絶を経験した女性は罪悪感に苛まれ、自分の経験や気持ちを話題にしづらいですよね。大きな会場ではなかなかできないけれども、こぢんまりとした空間でアットホームな雰囲気であれば、心を解きほぐしながらおしゃべりができる。そんな温もりのある空間を全国に創っていきたいと思っています」(大橋さん)
一般社団法人Tネット
高井ゆと里さん(アドバイザー)
Tネットのアドバイザーを務める倫理学者の高井さん。トランスジェンダー関連の報道があるたびに声明を出したり、正しい情報を伝えるためのセミナーを実施したりしています。特に力を入れているのが『性同一性障害特例法』の改正に関するロビイング活動や関連訴訟における要請行動、女性差別撤廃委員会 日本審査関連の活動、総選挙時の人権諸団体合同改憲への出席、トランスジェンダーに関するニュースが出た際の情報発信や声明の発出などです。今期は、トランスジェンダーに関する意識調査(1600名以上から回答・非公開)を実施し、「その人が生きている・示している性別を尊重する」という肯定的な意見が7割という結果を示しました。
「生まれた時に割り当てられた性別と異なる性で生活している人は、その人の外見や生活のあり方と、戸籍やマイナンバーカードなどの証明書類の性別の表記が食い違うため、日常生活のなかでさまざまな困りごとに直面します。たとえば、本人かどうか疑われる、就職ができない、住居を借りられない、渡航先で入国できないなどです。こうした問題を解消するために、2003年に『性同一性障害特例法』が制定されました。しかし性別を変更するためには、生殖能力の喪失と、望む性の側に近い性器の外観にすること、つまり内性器と外性器の手術(性別適合手術)が必要条件とされたのです。
金銭的・身体的負担が非常に大きく、合併症や後遺症のリスクも高い手術を法律が条件として課すこと自体が許されないという指摘がされてきた中、2023年、最高裁は、『性同一性障害特例法』が、生殖能力の喪失を要件としたことについて「違憲」と判断しました。性器の外観を要件としたことについては判断が下されませんでしたが、複数の裁判所や多くの専門家が「違憲」の可能性が高いと指摘しており、法律の改正が求められています。最高裁による違憲判決が下されているにも関わらず、立法府である国会は動いていません。そうした立法不作為の解消のみならず、トランスジェンダーの人権が守られるよう、これからも働きかけ続けます」(高井さん)
DPI女性障害者ネットワーク
左:藤原久美子さん(代表)・右:南由美子さん
身体・知的・精神・発達といったさまざまな障害を持つ女性がゆるやかにつながり、種別を超えて障害女性に関する国内外の情報を収集・提供・交換することで、政策提言や、国際社会への働きかけを実践するDPI女性障害者ネットワーク。女性であること、さらに障害者であることで直面する複合差別の可視化と解消に向け、さまざまな取り組みを実施しています。『SRHR for ALLアクション!』の活動では、障害がある女性が安心して参加できる場づくりのため、『合理的配慮ガイドブック』を作成。その内容は本会合にも適用されましたが、会合会場へのアクセス・多目的トイレの数・宿泊エリアから研修会場エリアへの移動ルートの距離やバリアフリー面での施設側の不備といった課題を浮き彫りにし、メンバーどうしが都度話し合いながら調整するようすがたびたび見られました。
「旧優生保護法の最高裁違憲判決について、米ニューヨークで開催された障害者権利条約締約国会議のサイドイベントで日本の取り組みを報告しました。第2期は『SRHRリーダーズラボ』という、SRHRの概念を広めたい障害者女性のアクティビストを育成するためのプログラムを開始。会合冒頭にお見せした『合理的配慮ガイドブック』は都度バージョンアップしていきたいと思っています」(藤原さん)
「2024年7月、障害を理由に不妊手術を強制した旧優生保護法を『違憲』とし、国に賠償を命じる最高裁判決が下されました。被害者に対する補償法も制定され、国の対応は変わってきたと感じていますが、今なお複合差別に苦しむ障害女性は多く、母体保護法も堕胎罪も未だに残っています。積み残された課題はまだまだ多いと感じています。2025年10月、スイスジュネーブで開催された女性差別撤廃条約の日本審査(CEDAW)には当団体から4名が参加し、障害女性が直面する複合差別の現状を訴えました」(南さん)
滞日ネパール人のための情報提供ネットワーク
ガンガ・デビ・ダンゴールさん(代表)
自国を離れて生活するネパール人を長年研究している田中雅子さん(上智大学総合グローバル学部教員・社会福祉士・滞日ネパール人のための情報提供ネットワーク コーディネーター)など、ネパール語がわかる日本人とネイティブのメンバーらとともに、在日ネパール人向けに通訳・翻訳・相談支援事業を行っているガンガさん。生活情報へのアクセスの向上、保健・教育分野のサポート、各種セミナーの開催を通じて在日ネパール人の暮らしを支援していますが、最近は特に、留学生の孤立出産が深刻な問題になっているといいます。
「彼女たちは、日本で妊娠したら、帰国させられる、仕事を辞めさせられる、退学させられるといった誤った情報を信じており、相談に繋がらず、孤立状態に陥りがちです。妊娠・出産を理由とする不当な取り扱いは禁止されていますが、これらの誤情報が、移民コミュニティのSNSなどで広がってしまっているのです。母子保健制度は国籍を問わず利用可能とされてはいますが、言葉の壁や心の壁があるため、十分に活用されていません。同郷の友人知人など個人に依存しがちで、公共サービスにつながることができていません。私たちは『SRHR for ALLアクション!』の活動を通じ「コムスタカ外国人とともに生きる会」が立ち上げた多言語WEBサイト『日本でのにんしん』の拡散に協力しています。日本語のほか、英語・中国語・ベトナム語・ネパール語・フィリピノ語・インドネシア語・ビルマ(ミャンマー)語の7言語の担当者がSNSでWEBサイトの情報を拡散させています。どうしたら、より多くの人に情報を届けられるか、走りながら考え続ける毎日です」(ガンガさん)
一般社団法人NOTOTO.
左:樫田那美紀さん・右:植田幸代さん
令和6年1月1日に発生した能登半島地震からの復興を中長期的に支援するために設立されたNOTOTO.(のとと)。“多様性のある復興”を目指して、能登半島を中心に石川県全域で活動しています。珠洲市を中心に活動している樫田さんは、もともと家父長制や男尊女卑といったジェンダー課題が根強く残る保守的な雰囲気に加え 、過疎地域特有の人間関係の密度の濃さが重なり、「本音を語りにくい」といった状況が生まれていると語ります。
「能登半島では『お祭り』文化がとても大切で、地域の人々の精神的な支えと誇りになっています。しかし、祭りの場で表に出て活躍するのは男性、裏方で食事の準備をするのは女性と、祭りにおける男女の役割が明確に分けられていてモヤモヤすることも。でも、それを外からきた私たちが『性別役割分業です!』と断罪してしまうのはとても暴力的です。そこで私たちは、地域に根づいた文化の意味をていねいにくみ取りながら、地域の人とともに新たな文化を創っていくことを模索しています。女性や性的マイノリティの人々の声を能登の復興に活かしたいんです。地域や企業の要職についている男性など、マジョリティ層へのアプローチを工夫しています。DVや性暴力を語るうえで生じる壁をガリガリと削っているところです」(樫田さん)
「今年度は、加賀市を中心に性教育に関わってきた助産師がメンバーに加わりました。もともと、性の多様性・性的同意・バウンダリー(※)について、子どもたちの成長に合わせて伝えてきましたが、今のところ、教職員や保護者から苦言や苦情を受けることはなく、むしろ『自分たちではなかなか言えないことを教えてくれてとてもよかった!』と好評なんです。“ヌルッ”としなやかに実践するのがコツなのかもしれません。今回私たちのSRHR推進の第1ターゲットは幼少期の子どもの支援者(保育士など)と保護者です。幼い頃から性にまつわる情報に無防備なまま触れる子どもたちに、どのように正しい性の情報を伝え、子どもを性加害・性被害から守っていくか。比較的集いやすい幼少期の保護者や、子どもたちを支援してくださるみなさんにSRHRの考え方の大切さを伝えるのが最も有効なのではないかと考えています」(植田さん)
※バウンダリー:境界線。自分と他者との間にある、目に見えない「ここからは自分の領域」という概念。目には見えませんが、バウンダリーを設けることで、他者との心地よい距離感を保ち、性被害や不快な接触から自分を守ると同時に、相手の境界線をも尊重できます
アクション琉球・沖縄
神谷めぐみさん(代表)
2024年、米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求めて県内外148団体が賛同し、約2,500人が参加した沖縄県民大会。共同代表の一員として運営に携わった神谷さんら沖縄県民大会実行委員会は、2025年2月に外務省・防衛省など関係省庁への要請行動を行い、併せて市民集会を開催し、米兵による暴行被害者への謝罪と補償、日米地位協定の抜本的改定などを求めました。以降、性暴力禁止条例の導入に向けた取り組みを行い、沖縄から包括的性教育導入に向けたアプローチを実施しています。
「インディジナス(先住民)女性をエンパワーメントする企画として、オンライン語学講座『うちなーぐち入門』を実施しています。私たちの世代のほとんどは日本語教育を受けて育ちました。琉球諸語は“劣った言語”とされ、話した人には“方言札”を下げさせるという罰則までありました。できるだけ標準の日本語を話すことがいいことだと学校で教えられてきましたが、大人になり、あらためて琉球諸語を話せることが女性たちのアイデンティティを取り戻すきっかけとなるのではないかと考えたんです。ほかにも、性暴力根絶に向けたクローズドな勉強会を実施。福岡から弁護士を講師に招き、2026年5月、『福岡県における性暴力を根絶し、性被害から県民等を守るための条例』を学ぶ会を実施しました。これからはもっとオープンな場で対話ができるような機会を増やしていきたいです」(神谷さん)

総括として、『SRHR for ALL アクション!』の事務局を務めるジョイセフの草野洋美は「日本が抱えるさまざまなSRHR課題の解決に取り組む諸団体が集まり、各々の草の根の活動に励むとともに、包括的性教育の義務教育導入・刑法性犯罪改正という2つの目標に向かって協力するプラットフォームがこの『SRHR for ALL アクション!』です。ひとつひとつの団体が横につながることによって、SRHR推進とジェンダー平等を日本国内で実現するムーブメントにしたい」とコメントしました。
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