コミュニティエンパワメントによるジェンダーに基づく暴力(GBV)対策事業

ザンビア活動分野ジェンダー / 女性のエンパワメントアプローチヘルスプロモーションライフコース・アプローチSDGs5.ジェンダー平等を実現しよう17.パートナーシップで目標を達成しよう

プロジェクト名 コミュニティエンパワメントによるジェンダーに基づく暴力(GBV)対策事業
実施国 ザンビア
活動の目的 ジェンダーに基づく暴力(GBV)の予防およびケアへのアクセスが向上し、GBVを受けた数が減少する
実施地域 ザンビア共和国セントラル州カピリ・ンポシ郡
対象人口 356,921人
実施期間 2023年3月~2026年3月(3年間)
スキーム等 外務省NGO連携無償資金協力
共同実施機関(現地) カピリ・ンポシ郡保健局、IPPFザンビア(PPAZ)
背景 ザンビアでは、2011年に反ジェンダーに基づく暴力(GBV)撤廃法が施行されたが、GBVザンビア国保健統計(DHS)2018年の報告によると、同国では、15-49歳の女性の36%が、15歳以降に少なくとも1回、身体的暴力を受けたことがあり、18%が調査前の12か月間に身体的暴力を経験している。さらに、既婚女性(15~49歳)の47%が、性的、精神的暴力を配偶者やパートナーから受けている。身体的暴力による傷害も含め、性的暴力が重大かつ長期的な健康被害をもたらし、HIV/エイズなどの性感染症、若年妊娠による難産、精神的にも長期にわたり苦しむことが多い。また、社会的に被害者への偏見により、家庭や地域社会から疎外され孤立するという問題が生じることもある。

これらの背景には、男性が優位とされるジェンダー不平等の考え方に基づく固定観念やジェンダー間の不均衡な関係が挙げられる。また、GBVの要因として、経済的な収入の低さや貧困、アルコール飲酒、夫婦関係の期間などの関連性が報告されている。経済的に自立をしていない女性は離婚が難しく、夫婦関係を維持せざるを得ない。本事業では、女性のみならず、男性、そしてコミュニティ全体がジェンダー平等やジェンダー規範についての意識を変えていく必要性や女性の経済的自立支援のための活動が求められている。また、僅かながらもパートナーや家族から暴力を受ける男性もおり、本事業ではこうした男性もケアの対象から排除しない。
カピリ・ンポシ郡の郡保健局によるGBVの報告件数は、2019年20,614件、2020年22,824件、2021年17,960件と報告されている。また、プロジェクト対象5地区では、2019年1,068件、2020年1,125件、2021年978件である。2021年のザンビア警察による報告では、ルサカの798件に続いて、セントラル州とイースタン州が264件と次に多いGBV報告がされている7。また、この地域で聞き取り調査を2022年7月に15-59歳の男女合計145名(女性90名、男性55名)に行った結果、過去1か月以内に物理的、精神的、性的、経済的な暴力を経験したと答えたのは合計126名(86.9%)、そのうち女性は77名、男性は49名であった。126名のうち、77名(61%)が配偶者やパートナーによるものであると報告された。

主な活動 3つの成果目標を達成するためにそれぞれ以下のような活動を実施する。

成果1ジェンダー平等や社会・文化的規範形成に向けた啓発教育の強化を通じ、コミュニティにおけるジェンダーに基づく暴力の防止意識が高まる
  • ジェンダー平等・GBV(法制度も含む)に関する指導者研修
  • ジェンダー平等・GBVについての知識や意識、行動についてのヒアリングの実施
  • 保健ボランティア、若者ピア・エデュケーター(PE)、コミュニティ保健委員会、学校教師へのジェンダー平等・GBV研修
  • GBV予防のためのコミュニケーション戦略構築・メッセージづくり・ツール作りワークショップ
  • 男性のエンゲージメントを図るための戦略ワークショップなど

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    成果2.ジェンダーに基づく暴力(GBV)に関するケアやサポートの提供体制が構築される
  • 女性センター・GBVワンストップセンター・セーフスペースの建設および資機材の供与、コミュニティ参加型ペインティングワークショップ・開所式
  • 保健医療従事者への能力強化研修(ジェンダー平等・GBV被害者サービス、クライアントフレンドリーサービス、施設環境改善のための5Sなど)
  • 保健医療従事者、警察官、保健ボランティアへのGBVに関する被害者・加害者等のカウンセリングスキル研修
  • AntiGBV委員会の設立およびケア・精神的社会的、法的サポートへのマッピング作りおよび役割
  • 伝統的リーダー、警察官へのジェンダー平等・GBV、コミュニティサポート強化に関する研修
  • コミュニティパラリーガル(弁護士補助)育成研修など

  • 成果3.女性の経済的自立支援のためのエンパワメント強化
    • コミュニティ保健委員会へのオリエンテーションと年次レビュー会合
    • 女性センター・GBVワンストップセンターの運営維持管理システムづくりワークショップ
    • 生計向上スキルおよびファイナンシャル管理研修など

    現地からの声 ルアンシンバ ヘルススタッフ
    フェイス・ムソニ、看護師
    Faith Msoni, Nurse

    私はこのGBVプロジェクトが円滑に推進されるよう、ルアンシンバ保健センターの看護師として積極的に参加し、GBV予防とケアやサポートがコミュニティの人たちに行き届くように役割を果たしたいです。私たち保健センターのスタッフはGBVタスクフォース委員会のメンバーであり、現在建設中のザンビアで一番大きいとされる女性センターを拠点に、コミュニティの人々の前向きな行動の変化を促進するために全力を尽くしていきたいと思います。

    ボストン・ムワカ、母子保健推進員(SMAG)
    Boston Mwaka, SMAG

    SMAGメンバーとして、SRHのみならず、GBVについての情報を発信し、コミュニティを巻き込んで、特に女性や女児を支援します。自分の地域のコミュニティは家族同様、GBVの予防に向けて、地域での啓発教育活動を強化していきます。伝統的リーダーや教会のリーダーは、コミュニティレベルでの意思決定に大きな影響力を持っているので、コミュニティのさまざまな課題について、彼らと一緒に協力して活動していきたいと思います。