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【急務!カンボジアで生活習慣病が深刻化】ジェンダーで異なる「治療の壁」とは。

2025.6.9

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  • ジョイセフフレンズ通信

ジョイセフフレンズのみなさま

ジョイセフの浅村です。今日はカンボジアからお届けします!

「あえて言うなら、甘辛煮にした子持ちししゃも……」
これは、私が人生で初めて食べた“蜘蛛(くも)”の味の感想です。

カンボジアは今、昆虫食ハイシーズンを迎えており、今回チャレンジ精神で蜘蛛に挑戦。ちなみに前回は蚕のサナギとアヒルの舌。

最初はさすがにちょっと躊躇しましたが、せっかく命をいただくなら感謝して美味しくいただきたいものです。「これ、食べるとパワー出るよ!」と現地の人に言われたとおり、午後の猛暑(35℃超!)もどこ吹く風で乗り切れた気がします。

そんなカンボジアで今、ジョイセフは生活習慣病(NCDs=非感染性疾患)とジェンダー(※) に関するJICAの調査に専門家として関わっています。

※ジェンダーは本来、女性と男性という2極に限定されるものではなく、多様な性自認が存在しますが、本調査では統計的な分析の妥当性および既存データとの比較可能性を確保するため、女性と男性の2極のみを対象としています。


この調査のテーマはずばり、
「糖尿病や高血圧などの慢性疾患を抱える患者に対して、ジェンダーがどんな影響を与えているのか?」。つまり、女性と男性、それぞれが医療を受ける際にどんな困難を抱えているのか。その違いが見えてきたら、どうやって対応していくべきか――ということを探っているのです。

生活習慣病というと、かつては先進国の課題と思われがちでしたが、今や糖尿病や高血圧、がんで本来の平均寿命よりも早い年齢(30〜70歳)で命を落とすケースが、世界中で深刻化。カンボジアでも国家戦略として対応が急がれています。

今回の小規模調査では、カンボジア・コンポンチャム州に住む糖尿病患者42名(男女)にインタビューを実施。すると、こんな傾向が浮かび上がってきました。

「検査や治療に行くのが負担に感じる」女性は52%、男性は23%。
女性の76%が「自分で運転できないので、移動手段を手配する必要があり、かつ、お金もかかる」と回答。一方、同じ理由を挙げた男性はわずか13%。

逆に男性は、「仕事が忙しく、職場の許可を得るのが難しい」という声が多数。コンポンチャム州では工場が多く、兼業農家として働く人も多いため、仕事との両立が課題になっているようです。

さて、私の朝のルーティンといえば、市場の麺屋さん。活気あふれるこの市場には、漢方薬のような薬草を売る店もあり、なんと干した小さなサル(!)まで売っていました(これは…確実にワシントン条約違反ですね)。そこで売られていた“糖尿病に効く”という薬草を、病院に行くのが億劫な女性たちが、買い物ついでに購入しているとのこと。効果の真偽は定かでなく、保健省は医療機関での診療を推奨していますが、こうした選択肢があるのもカンボジアの現実です。

調査の結果は、現地の医療関係者が参加するワークショップで共有しました。

参加者からはこんな声が!
「男女でこんなにちがいがあるとは知らなかった」
「もっと地域に近づくためにアウトリーチ活動(患者が病院に来るのを待つのでなく患者のところへ出向くこと)を強化しないと」
「村の保健推進グループと連携をさらに深めたい」
「職場で治療の許可が得やすいよう働きかけが必要」

さらに、調査の結果を4つの村の地域保健推進グループにもフィードバック。そこでも新たな提案が次々と生まれました。

「交通費の負担で通院できない人のための周知活動」
「村の基金を交通費支援に使うアイデア」
「医療費が不安な人へ保険制度の案内」
「もっとジェンダーについて学びたい!」

今後は、これらの提案をまとめて7月にプノンペンで最終共有セミナーを実施予定。今回は保健省と女性省と一緒に進めてきましたが、このセミナーには労働省や内務省も招待し、定期検査や治療のしやすい職場環境や、地域保健推進グループと医療従事者との連携強化を目指します。ちなみに、カンボジアの素晴らしい点のひとつは、各省庁に「ジェンダー主流化推進グループ」が設置されていること。このセミナーをきっかけに、各グループの横のつながりが強まり、ジェンダーを意識した現場の改善が進むことを願っています。

調査そのものは小規模でしたが、カンボジアの生活習慣病対策に、ほんの一滴でも貢献できたなら嬉しい限り。そして、ししゃも風味の蜘蛛を食べてから、次はどんな味覚と課題に出会えるのか……ちょっと楽しみだったりします。

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浅村 里紗
1984年に入職後、アジア・南太平洋、アフリカ、中南米でSRHRを推進する国際協力プロジェクトに従事。特にコミュニティにおける妊産婦保健、思春期保健、男性参加等の推進活動やヘルスプロモーション分野の教材開発と教材活用研修に係る。また、80カ国を超える約1200名の開発途上国の指導者を対象に母子保健を中心としたSRHR分野の研修事業を実施。趣味は、版画制作、サイクリング(愛車Root One)、ローカル電車の旅、水泳、写真(愛猫2匹)