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性と恋愛 2023【セクシュアル・ヘルスについて】

2023.10.6

今の若者のリアルな恋愛観・結婚観は?性やセックスについてどう思う?避妊や性感染症、子宮頸がん、HPVなどの正直な感覚は?
I LADY. が国際ガールズ・デー(10月11日)をきっかけに、全国の若者5800人に対して調査を実施。その結果をご報告します。

調査目的 恋愛、性、セクシュアル・ヘルス/ライツなど、パートナーとの関係性も含めた日本の若者の意識調査
調査対象 全国(47都道府県)の15-29歳のこれまでに恋人・パートナーができたことがある5800人 (未既婚不問)(男性2350人/女性3156人/男女どちらでもない294人)
調査手法 インターネット調査
調査日程 2023/8/9(水)~8/17(木)
調査会社 株式会社電通マクロミルインサイト

セクシュアル・ヘルスについて

性に関する情報源は半数以上(51.0%)がネットやSNSと回答。

子宮頸がん検診の受診については、定期的(1~2年毎)に受診しているのは約5人に1人(20.2%)と少ない割合。
受診しない理由としては「受診にお金がかかるから」(22.1%)、「面倒だから」(21.9%)、「どんな検査をするかわからず怖いから」(20.7%)が多く、検診の必要性への理解や検診に関する情報の不足が原因となっていた。

HPVワクチンの認知度については、女性で約4割、男性では約2割に留まった。

性に関してどこで情報を得てる?〈複数回答〉

性に関する情報源は主にネットやSNS

「あなたは、性に関する情報や知識をどこで得ていますか。または、どこで得たことがありますか。〈複数回答〉」という質問に対し、全体の約半数(51.0%)が「ネットやSNS」と回答しました。男性では、「アダルトビデオ・サイト」33.7%「友だち」30.6%、女性では「友だち」37.0、「恋人・パートナー」30.8%の回答が次いで多くありました。

性の相談全般について相談相手はいる?

婦人科・泌尿器科の悩みについて相談相手はいる?

月経の悩みは?<複数回答>

月経の悩みについて、適切な対処は取れている?

子宮頸がんという病気があるのを知っている?

子宮頸がん検診、受けたことある?

「子宮頸がん検診」を受診していない理由は?

「HPVワクチン」って知ってる?

HPVワクチンの認知度は、女性で約4割、男性では約2割

「あなたは、『HPVワクチン』というのがあるのをご存知ですか。」という質問に対し、「知っている」と回答したのは女性41.6%、男性20.2%とワクチンの認知度自体が低く、接種対象年齢の若者に正しく情報が届いていない現状が明らかとなりました。

HPVワクチンを接種したことある?

「HPVワクチン」を接種していない理由は?

産婦人科医・稲葉可奈子さんからのコメント

印象的だったのは、ピルの月経コントロール、避妊の効果については4-5割が理解しているのですが、33%(10代女性では44.5%)は値段が高いと思っていること。ピルを服用していない理由の1位は「お金がかかる」で、この割合は過去と比較して上昇しています(2021年38%→2023年45%)。2位は「副作用が心配」で、効果については認知が広まってきているものの、事実と異なるネガティブな噂は訂正されていない実態が明らかとなりました。実際には、保険診療で処方されるとジェネリックなら約600円/月、もちろんそれを高いと感じる方もいるかもしれませんが、外来で患者さんにお話しすると「そんなに安いんですか!」と驚かれることが多く、どうやらオンライン処方の広告をみて毎月3000円以上かかると思ってらっしゃるようです。

ピル服用率が20%との結果は、臨床現場の感覚よりも多い印象なので、SRHRをテーマとしたアンケートに回答しようと思う時点でバイアスがかかっている可能性は否めません。それを考慮すると、実際には本結果よりもピルについての認知は低いかもしれません。

また、子宮頸がんはHPVワクチンと子宮頸がん検診で予防することができますが、20代後半の36%は未受診。HPVワクチンは過半数が未接種。特に20代後半の子宮頸がん検診を受けない理由は、「面倒だから」33.5%に続いて2位が「お金がかかるから」31.3%。(※画像は全調査対象:15-29歳の数値を示しています)実際には、自治体から補助がでることが多いのですが、ピルが費用を理由に敬遠されているのと同様、必要な情報が対象者に届いていない可能性がうかがえます。国民の健康に寄与するにためは、制度整備だけでなく正しい情報の普及啓発も不可欠と改めて感じました。

もう一点、非常に印象的だったのは、「避妊せずに性交渉してもし妊娠したらどうするつもりだったか」の回答として、2021年以降「産む/産んでもらうつもりだった」が減少、「中絶するつもりだった」が増加していること。経済的な事情か、心理的な将来への不安か、タイミング的にはコロナ禍以降ですが、果たして本当にコロナ禍が影響しているのか、理由までは本調査からは分かりませんが、子どもをもつことへのハードルが以前よりも上がってきていることがうかがえます。一方で、避妊をせずに性交渉した理由の1位は「大丈夫だと思った」、そのほか「妊娠すると思っていなかった」「なにも考えていなかった」「自分には関係のないことと思った」と、男女ともに妊娠を自分事と捉えられていない人が未だ多い。また、「緊急避妊薬を飲めばいいと思った」が増加傾向となっており、間違った認識で知られるようになってしまっており、性教育の重要性を実感します。

稲葉可奈子
産婦人科専門医・医学博士。京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。産婦人科診療の傍ら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを、SNS、メディア、企業研修などを通して発信。双子含む四児の母。みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表 / みんリプ!みんなで知ろうSRHR 共同代表 / メディカルフェムテックコンソーシアム 副代表 / フジニュースα・Yahoo!・NewsPicksコメンテーター。


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