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【第4回】世界におけるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の取り組み ~国際社会で揺れ動くSRHR

2022.10.12

連合総研 DIO9月号(9月1日発行)に掲載された記事に、加筆したものです。

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツへの道のり ③

今回は、国際社会が人類共通の目標として掲げた持続可能な開発目標(SDGs)におけるSRHRと、SDGsの前身となったミレニアム開発目標(MDGs)について詳しく見ていきます。

(3)ミレニアム開発目標(MDGs: 2001 ~2015)と持続可能な開発目標(SDGs: 2016 ~2030)

2000年に国連で採択されたミレニアム開発目標(MDGs)は当初、保守派による政治的バックラッシュを受けて、女性の健康を決定づけるRHRに関して言及することなく、妊産婦の健康の改善という内容に意図的に限定したことが厳しく批判されました。その後、妊産婦の健康を保証するためには、リプロダクティブ・ヘルス・サービスの普遍的アクセスが必要であるとして、多くの研究者、NGO、関連団体の強い働きかけがなされました。その結果、2005年に「2015年までにリプロダクティブ・ヘルス(RH)に対する普遍的アクセスを実現する」というターゲットが加えられましたが、この目標に対する指標が正式に確定したのは、2007年のことでした[23]。MDGsの最終評価では妊産婦死亡やRHサービスへのアクセスについては、国・地域間で格差が大きく、未達成のアジェンダとしてSDGsに引き継がれました[24]

2016年から2030年までの国際的合意である持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)は、ICPD(1994年にカイロで開催された国際人口開発会議)の行動計画と北京会議の行動綱領を踏襲して策定されています。SRHR分野の達成すべき目標とターゲットが、SDG3(健康)とSDG5(ジェンダーの平等)に明確に言及され、ジェンダーの平等、女性のエンパワーメントとともに、SDGsの達成に不可欠な要素として位置付けられました。

2019年11月に国連人口基金(UNFPA)、 ケニア政府、デンマーク政府が共催し、170カ国の政府機関、市民社会、ユース団体、企業などから約 8300人が参加したICPD+25 ナイロビサミットでは、25年の進展と未だに残るSRHRの課題が確認されました。特に深刻な課題が3つ挙げられています。1)2億2000万人の女性が、必要とする家族計画サービス(避妊手段)を手にいれることができないこと、2)適切なケアがあれば予防可能であるにも関わらず、妊娠、出産、安全でない人工妊娠中絶によって、1日に800人の女性が命を失っていること、3)ジェンダーに基づく暴力、児童婚や女性性器切除(FGM)などの健康や命を損なう有害な慣習が続いていることです。

さらに、女性、女児、若者はじめ、多様な人々を取り巻くSRHR、ジェンダー、エンパワーメント、イノベーションなどが幅広く議論され、若い世代はじめ、当事者が政策の決定プロセスに加わる重要性が危機感をもって議論され、各国の政府、国連・国際機関、市民社会が、人権としてのSRHRの推進に、強い決意とコミットメントを表明しました[25]

その後、国際社会は新型コロナウイルス感染症という未曾有の世界的パンデミックを経験し、その中で女性と女児のSRHRも、後述するように、危機的状況を迎えることになります。しかし、その前に、SRHRの動向のほか、国際保健にも大きな影響を与えてきた米国のメキシコシティ政策(GGR:グローバル・ギャグ・ルール)について触れておきたいと思います。

 


 
[23] Lucia Berro Pizzarossa, “Here to Stay: The Evolution of Sexual and Reproductive Health and Rights in International Human Rights law”, Department of Transboundary Legal Studies, University of Groningen, 9712EA Groningen, The Netherlands, p10.

[24] UN Department of Public Information、国連ミレニアム開発目標報告2015、https://www.unic.or.jp/files/14975_2.pdf

[25] ジョイセフもICPD+25に参加し、本会議場でNGOとしてのコミットメント発表の機会を得た。https://www.joicfp.or.jp/jpn/2019/12/24/44987/

 


 

用語・注釈
リプロダクティブ・ヘルス (カイロ会議「行動計画」7.2より)
リプロダクティブ・ヘルスとは、人間の生殖システム、その機能と(活動)過程のすべての側面において、単に疾病、障がいがないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指す。したがって、リプロダクティブ・ヘルスは、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力をもち、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由をもつことを意味する。
リプロダクティブ・ライツ (カイロ会議「行動計画」7.3より)
すべてのカップルと個人が、自分たちの子どもの数、出産間隔、出産する時期を自由に責任をもって決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという権利。また、差別、強制、暴力を受けることなく、生殖に関する決定を行える権利。さらに、それを可能にする情報と手段を得て、その方法を利用することができる権利。女性が安全に妊娠・出産でき、また、カップルが健康な子どもをもてる最善の機会を得られるよう適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利が含まれる。 
以下は、公益財団法人ジョイセフがわかりやすい説明を試みたもの
ジョイセフWEBサイト 説明ページへ
セクシュアル・ヘルス
自分の「性」に関することについて、心身ともに満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること。

リプロダクティブ・ヘルス
妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシュアルな人(無性愛、非性愛の人)問わず、心身ともに満たされ健康にいられること。
セクシュアル・ライツ
セクシュアリティ「性」を、自分で決められる権利のこと。
自分の愛する人、自分のプライバシー、自分の性的な快楽、自分の性のあり方(男か女かそのどちらでもないか)を自分で決められる権利。
リプロダクティブ ・ライツ
産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利。
妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られ、「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利(自己決定権)。
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