
地方から、日本の未来を変える!
〜「性やからだ、そして生き方」の悩みを個人の問題から「社会の課題」へ〜
2026.9.10
- 活動の現場から
- ジョイセフフレンズ通信
ジョイセフフレンズの皆さま、いつも温かく継続的なご支援をいただき、心より感謝申し上げます。 2026年4月よりジョイセフの職員になり、国内アドボカシーを担当しています式 美樹(しき みき)です。
今回は、ご挨拶を兼ねて、なぜ今ジョイセフが「地方自治体へのアドボカシー(政策提言・対話と協働)」に力を注いでいるのか、私自身の経験も交えながらお話しさせてください。
カンボジアでの経験から、「SRHR」の大切さを知る
私はジョイセフに入職する前、10年ほど他のNPOでカンボジアの地雷除去跡地における復興支援に携わっていました。
学校建設やインフラ整備に取り組むなかで、強く感じるようになったことがあります。それは、道路や学校などの「ハード」を整えるだけでは、本当の意味で地域の人々の暮らしを豊かにすることはできない、ということです。
人が安心して生き、学び、働き、自分の将来を選び取っていくためには、自分の身体や性について必要な情報やサービスにアクセスできることが欠かせません。つまり、性と生殖に関する健康と権利(SRHR:Sexual and Reproductive Health and Rights)が守られることも、持続可能な地域社会をつくるための大切な基盤なのです。
例えば、地雷が多く残り開発が遅れていた農村地域では、日々の食費さえ十分に確保できない家庭も少なくありませんでした。そうした環境で暮らす少女たちにとって、ナプキンなどの生理用品は決して当たり前に手に入るものではありません。生理のたびに学校を休まざるを得なかったり、生理や身体の変化について十分な知識がないために、不安や困難を一人で抱え込んでしまったりすることもありました。
また、早く結婚して子どもを産むことが女性の幸せだという価値観が根強く、若年での妊娠も珍しくありませんでした。妊娠や避妊、性感染症について正しい知識を得る機会が十分でなければ、意図しない妊娠や性感染症に直面したときに、どこに相談すればよいのかさえ分からないことがあります。
こうした経験から、私は「教育や情報、必要なサービスへのアクセスさえあれば、防げたかもしれない困難がある」という問題意識を持つようになり、大学院に進学してジェンダーや人間の安全保障について学び直しました。そこで改めて実感したのは、SRHRの課題は決して途上国だけのものではなく、日本にも大きく残されているということでした。

「先進国・支援国」日本にも残るSRHRの課題
日本は長年、世界各地の開発を支援してきた国であり、いまも「先進国」と呼ばれています。一方で、性や生殖・身体について正しく学ぶ機会や、性や生殖に関連する必要な医療や相談へのアクセス、ジェンダー平等など、SRHRの観点から見ると、まだ十分に保障されているとは言えない課題が残されています。
特に、「知ること」はSRHRを実現するための大切な権利の一つです。
ユネスコやWHOなどが共同で策定した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、包括的性教育を、子どもや若者が年齢や発達段階に応じて、身体、性、ジェンダー、人間関係、同意、避妊、性感染症、権利などについて体系的に学ぶための教育として位置づけています。
それは、「性行為について教える」ことではありません。
- 自分の身体を知ること。
- 自分と他者の境界線を知ること。
- 相手を尊重すること。
- 暴力や被害から自分を守ること。
- 必要なときに相談できること。
- そして、自分の身体や人生について、自分で考え、選択すること。
包括的性教育は、こうした力を育てる学びです。
つまり、「知ること」はSRHRを実現するための大切な基盤なのです。
私自身も、月経の悩みや、妊娠、不妊、更年期など、人生のさまざまな場面で、「自分の身体のことなのに、知らない」ということで不安を感じてきました。
「知っていれば、もっと安心できたかもしれない」
「正しく学ぶ機会があれば、違う選択ができたかもしれない」
と思うことがあります。
SRHRはすべての人が自分らしく生きるための基盤であり、それを保障することは、個人の努力だけではなく、社会や政策の役割なのだと強く感じるようになりました。
誰もが性や身体について必要な知識を得て、必要なケアにつながり、自分の人生を自分で選択できる社会をつくりたい。
その思いから、私はジョイセフに入り、現在はその実現に向けて、特に地方自治体へのアドボカシーに取り組んでいます。
なぜ今、「地方自治体」の変革が大切なのか?
SRHRを実現するためには、国の政策や制度を変えることがもちろん重要です。
一方で、私たちが実際に暮らしの中で利用するのは、学校、保健センター、医療機関、相談窓口、福祉サービスなど、地域にあるさまざまな仕組みです。
つまり、国が掲げる理念や政策を、一人ひとりの暮らしの中で実現するためには、自治体の役割が欠かせません。
例えば、包括的性教育を地域で進めるとしても、学校、教育委員会、保健・医療、子育て支援、若者支援など、さまざまな立場の人や組織が関わります。
また、都市部と人口減少が進む地域では、医療機関へのアクセスや相談先、学校での取り組みなど、必要とされる支援も異なります。
だからこそ、「すべての人のSRHR」という共通の目標を持ちながら、それぞれの地域の実情に合った政策をつくることが重要です。
その政策を地域で動かしていくうえで、大きな役割を担うのが地方議員の皆さんです。市民の声を聞き、地域の課題を議会に届け、条例や計画、予算、行政サービスなど、具体的な政策につなげていく。
だからこそ、ジョイセフは今年から、地方議員の皆さんとともにSRHRを地域から進める取り組みに力を入れています。

オンライン勉強会「地方議員のためのSRHR勉強会(第1回)」の様子
孤立しがちな議員を結び、地域から好事例をつくる
今年からスタートした「地方議員のためのSRHR勉強会」には、これまでに4回、多くの地方議員の皆さんが全国から党派を超えて参加してくださいました。
地域でSRHRを推進したいと思っていても、
議会でどう提案すればいいのか
行政とどう連携すればいいのか
他の自治体ではどんなことができているのか
と、一人で悩んでいる議員は少なくありません。
特に、議会の中で少数派となる立場の議員が、孤立感を抱えながら政策実現に取り組んでいるケースもあります。そこでジョイセフは、SRHR推進をめざす全国の地方議員同士がつながり、学び合い、それぞれの地域で実践するためのプラットフォームづくりを進めています。
一人ひとりの地方議員という「点」を、地域を越えて結び、学び合う「線」にする。
そして、そこに市民の声を重ね、「面」として地域社会を動かしていく。
それが、ジョイセフが地方自治体のアドボカシーを通じて目指していることです。

地方が変われば、日本が変わる!
SRHRは、一部の人だけの問題ではありません。
月経、避妊、不妊、妊娠、意図しない妊娠、人工妊娠中絶、出産、性感染症、子宮頸がん、更年期、性暴力、ジェンダー、多様な性のあり方。人生のさまざまな場面で、私たち一人ひとりが自分の身体や性について考え、選択する機会があります。
そのとき、
知らなかったから、選べなかった
相談できる場所がなかった
住んでいる地域によって、受けられる支援が違った
ということが起きない社会をつくる。
それは、一人ひとりの努力だけでは実現できません。
- 必要な情報を学べること。
- 必要な医療やケアにアクセスできること。
- 安心して相談できること。
- そして、多様な人の声が政策に反映されること。
こうした環境をつくるのは、社会の役割です。
だからこそ、SRHRを「個人の問題」から「社会の課題」へ。
そして、国だけでなく、私たちが暮らす「地域」から変えていく。
一つの自治体で生まれた好事例が、別の地域へ広がり、それがやがて国の政策を動かす力になる。
その変化を生み出すために、ジョイセフは地方議員、市民、専門家、そしてさまざまな地域の皆さんをつなぎながら、アドボカシーに取り組んでいきます。

フレンズの皆さまのご支援が、未来を変える力に
フレンズの皆さまからのご支援の一部は、こうした勉強会を継続し、地方議員の皆さんに専門知識を届け、実際の条例づくりや地域施策へとつなげるための大きな力となっています。
一人が声を上げる。
地域が動く。
地域の変化が、社会を変える。
日本のどこに住んでいても、誰もが自分の身体と性について知り、必要なケアを受け、自分らしい人生を選択できる社会へ。
その実現に向けて、これからも皆さまとともに、一歩一歩取り組んでまいります。
引き続き、温かい応援をどうぞよろしくお願いいたします。

【お知らせ】
SRHRスタンディングアクション!
9月27日(日)には、今年も、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)の推進およびジェンダー平等の実現を求める街頭デモ『SRHR for ALL スタンディング・アクション!』を東京・丸の内にて実施いたします。一緒に声をあげてくださる方はぜひご参加ください!
☑️日時/2026年9月27日(日)18:00〜19:30
☑️会場/東京駅行幸通り(東京都道404号皇居前東京停車場)※雨天・荒天の場合は前日までに室内会場連絡
☑️概要/ライトアップされた東京駅前に立場や背景、世代、性のあり方の異なる多様な人々が集まりが集い「SRHR for ALL(すべての人のSRHR)」を求める声を可視化し、社会へ届けます。『SRHR for ALL アクション!』メンバー団体のほか、SRHR推進やジェンダー平等の実現を目指して活動する団体や個人によるリレートークや、現地に来られない方から寄せられた応援メッセージの代読を行います
参加のかたちは自由です。声を上げる人も、想いを共有する人も、ともにその場に立ち連帯を示す人も、どなたも歓迎します。多様な声が響き合う、誰も取り残されない未来をともにつくる時間にしましょう。
事前参加申し込みは不要です。現地に直接お越しください。
ジョイセフYouTubeから配信も予定しています。
https://www.youtube.com/@JOICFP/videos

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- 式美樹
- 事業グループ。 民間企業を経て、地雷・不発弾処理支援を行うNPOに約10年間勤務。カンボジアの地雷除去跡地における地域復興や小学校建設事業などに従事。現場での課題意識から大学院へ進学し、ジェンダーや人間の安全保障などについて学ぶ。2026年4月よりジョイセフに入職。現在は主に地方自治体アドボカシーを担当。