スタッフブログ

MENU

MENU

10代の女の子の望まない妊娠を防ぎたい。 ―夏の募金での支援対象国がガーナに決定

2026.10.16

  • 活動の現場から

ジョイセフ事務局長の山口悦子です。
2026年夏、ジョイセフは夏の募金の呼びかけを行い、世界の10代の女の子の望まない妊娠を防ぐための活動に多くのご支援をいただきました。

今回集まったご寄付は、ガーナのアッパー・マニャ・クロボ郡で10代の望まない妊娠を防ぐ活動に活用することになりました。

私は8月9日から16日まで、この活動地を訪れ、皆さまの寄付が現場でどのように生きているのか、確かめてきました。

アッパー・マニャ・クロボ郡はガーナの中でも特に貧困層が多く、クリニックなどの保健医療インフラも大幅に不足しており、若年妊娠が非常に多いことが課題となっていました。性や妊娠、避妊について正しい情報や医療・ケアを得る機会は限られており、困ったときに相談できる大人の存在や場所も十分とは言えません。

地域の保健施設 外観(アニャボニ亜郡)

地域の保健施設 内観
(カウンセリング後に利用者が休んだり簡単な治療をする場所、アニャボニ亜郡 )

こうした状況を受け、ジョイセフは次のような取り組みを行おうとしています。

①人材養成と啓発活動
学校や地域でピア・エデュケーター(地域の若者から同世代へ予防啓発を行う人材)を養成し、地域の若者から若者へ、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)の啓発や避妊具・薬の普及や医療機関への受診を促す地域保健活動を実施します。
②医療従事者への研修
医療機関で、若者が利用しやすい環境で、必要なケアを提供できるよう、医療従事者へ研修をします。
③地域のみんなで「支える」仕組みづくり
町の薬局のスタッフ、地域のリーダー、宗教指導者、親、商店や美容室の店主、教員、行政まで、若者の日常に関わるあらゆる大人を巻き込み、地域をあげて若者たちの健康を守り、1人1人が自分らしく生きられるよう支える環境を作ります。地域全体が協力することによって、若者たちに必要な情報やケアが届き、望まない妊娠を防ぎ、思い描く将来の夢を諦めずに、地域で安心して生活し続けられる仕組みを作ろうとしています。

ガーナで10代の望まない妊娠を防ぐために奮闘する現地スタッフ

この規模の関係づくりや調整は、日本人スタッフだけでは到底できません。地域のニーズを丁寧にすくい上げ、こうした多様な関係者との信頼関係を築き、若者が安定した収入を得られるようスキルを身につける見習いの受け入れ先を見つける。これらはすべて、現地を知り尽くしたスタッフがいてこそ可能になることです。多言語・多文化のガーナでは、なおさらです。一度啓発すれば終わりではなく、養成した人材がその後もきちんと活動できているか、地域にどんな変化が生まれているかを継続的に見届ける必要があり、そこにも現地スタッフの存在が欠かせません。

今回いただいたご寄付は、ジョイセフの現地での活動を支えるカギである現地スタッフの人件費として活用されます。

例えばこの事業のプロジェクト担当のガーション。彼は以前、ジョイセフの事業でピア・エデュケーターをしていました。まさにこの事業地で育ち、住民のことをよく知っています。その強みを活かして、今はプロジェクトを実施する担当としてコミュニティでの細やかな調整を一手に担っており、彼なしでは私たちの事業は立ち行かない場面が数多くあります。ピアエデュケーターの先輩としても、現役のピアエデュケーターたちの悩み相談やアドバイスにも応じています。これまでの経験と、プロジェクト担当としての経験を積み重ねてきたこの1年で、彼が驚くほど頼もしく成長した姿を目の当たりにし、感無量でした。今後の活躍が心から楽しみです。


ガーション・ベビ
ジョイセフ ガーナ事務所 フィールドオフィサー

私とジョイセフとの出会いは、2021年8月。ピア・エデュケーターとして、学校や地域で若者に性や健康について伝える活動を始めたことがきっかけでした。

活動を続ける中で、若者たちが正しい情報や必要な医療サービスを得ることの難しさを知りました。同時に、地域の人たちと信頼関係を築き、若者と一緒に考えながら活動することの大切さも学びました。

ピア・エデュケーターとして経験を重ねた後、ジョイセフのスタッフとなり、現在はプロジェクトの現場を担当しています。自分自身が地域のボランティアだったからこそ、現場で活動する人たちの思いや、地域の人々が置かれている状況を理解しながら仕事ができることは、私の強みだと思っています。

私が目指しているのは、若者が性や健康について正しい情報を得て、自分で考え、自分の未来を選べる地域をつくることです。偏見や不安を感じることなく必要な医療サービスを利用でき、10代の妊娠や性感染症などを減らしていきたいと考えています。

活動を通じて、もう一つ強く感じるようになったことがあります。それは、若者の健康の問題と、貧困や仕事の機会の少なさは切り離せないということです。

特に若い女性が、収入を得るための技術や機会を持つことは、自信や自立につながり、自分自身の健康や将来について選択する力にもなります。だからこそ、健康について伝えるだけでなく、若者が仕事につながる技術を身につけ、将来への目標を持てるよう支えることも大切です。

縫製の技能研修を受ける女の子たちと

今回の夏の募金を支援してくださった皆さまに、心から感謝しています。

皆さまのご支援があることで、私たち現地スタッフは、本当に必要とされている場所へ出向き、若者の声を聞き、必要な情報を伝え、医療サービスや生活を支える活動へとつなぐことができます。

現地スタッフを支えることは、単に人件費を支払うことではありません。地域の言葉や文化、人々の暮らしを理解し、信頼関係を築きながら、支援を実際の変化につなげる人に投資することだと思っています。

皆さまの支援は、確かにここガーナの地域に届いています。

すべての若者が、健康で充実した未来をつくるための知識、自信、技術、そして機会を持てるように。これからも地域の人たちとともに、一歩ずつ活動を続けていきます。


10代の望まない妊娠を防ぐキーパーソンを仲間に!

現地スタッフの働きが実を結んだ例が、今回新たに啓発の担い手として加わった、地域で唯一の公共交通手段であるバイクタクシーの運転手たち、オカダ・ライダーです。

彼らは日々、地域のあらゆる人をバイクに乗せて移動するため、様々な人に情報を届けられる地域のインフルエンサーです。同時に、現金収入のある彼らは若い女の子たちにとって身近な憧れの存在でもあり、これまでは望まない妊娠の相手になってしまうケースも少なくありませんでした。近年はこの地域で薬物の問題も増えており、オカダ・ライダーが主要な運び手を担うケース、中には反社会的勢力とつながりを持つ人もいるとも聞いています。

私自身、ずっとオカダ・ライダーたちをジョイセフとともにSRHRを広げ、地域の人々の命と健康を守る活動をする仲間に迎えたいと思ってきました。今回、現地スタッフの頑張りで、その願いがようやく形になりました。

研修を受けたライダーたちは、その学びをすぐに仲間のライダーに伝え、自分たちの手で仲間への啓発を担えるような体制を整えていました。

教材を使用して仲間に啓発するライダーの方

「こういう機会があって、本当に嬉しい。もっと早く自分たちを巻き込んでほしかった。」

「大人から若者まで、あらゆる人に若者のSRHRについて伝えていきたい。自分たちにしかリーチできない人達も沢山いる!」

「コンドームに使用期限や傷つけにくい開け方があることを知らなかったし、コンドーム以外の避妊方法は、性感染症の予防には効果がないことも初めて知った。他のライダーにも伝えようと思う。」

「お客さんを乗せている間に、若年妊娠や性感染症について話している。お客さんが興味を持ってくれたら、降ろした後にも少し時間をもらって、写真なども見せながら情報を伝えているんだ。」

と話す彼らの熱量に、私自身、背中を押される思いでした。これも、現地スタッフが地道に彼らとの信頼関係を築いてきたからこそ生まれた変化です。

皆さまからのご寄付が、ガーナではこうして現地スタッフの人件費として活用され、ガーションのようなスタッフ一人ひとりが地域の人たちを巻き込み、若者に正しい情報が届き、相談できる相手ができ、必要なサービスにつながっていく――その土台を支えています。

10代の女の子たちが望まない妊娠をせずに、自分で自分の人生を選べる明るい未来につながっています。これからも現地のスタッフたちや活動を応援していただけますと幸いです。

改めて、この夏のご支援に、心より御礼申し上げます。国内でも様々な災害が起き、多くの方が大変な状況に置かれている中で、海外にも目を向け、支援の手を差し伸べてくださったことに、深く感謝しております。皆さまと一緒に、これからも国内外ですべての人のSRHRが保障される世界を目指して活動を強化してまいります。

山口 悦子
ジョイセフ事務局長。2004年にジョイセフ入職後、一貫してアジアとアフリカでSRHRを推進する国際協力プロジェクトに従事している。特にHIV/エイズ、妊産婦保健、男性参加、若者のエンパワーメントといった分野で、コミュニティを中心とした仕組みづくりに携わる。JICAのHIV/エイズ専門家としてガーナで5年の経験、JICAインドネシア事務所の保健分野の企画調査員経験を持つ。第二の故郷はガーナ。趣味は犬(ガーナ生まれ)とテニス。