
11年ぶりのザンビアで見えた、「選べる未来」を支えるジョイセフの活動 【国際ガールズ・デーに寄せて】
2026.10.9
- 活動の現場から
- ジョイセフフレンズ通信
- 特集!
ジョイセフの栗林桃乃です。いつもご支援ありがとうございます。
11年ぶりに、アフリカ・ザンビアを訪れました。
11年前の私は、大学4年生の21歳。そしてジョイセフのマンスリーサポーター「ジョイセフフレンズ」の一人。当時は支援者として、ジョイセフの活動地を訪れました。

大学4年生の栗林(当時新築の出産待機施設の壁に名前を書いてもらいました:2015年9月)

そして今回、ジョイセフの職員として同じザンビアへ。
立場も自分の知見や意識も変わったからこそ、以前とは少し違う景色が見えました。
正直に言えば、11年前は私自身まだ世間知らずの学生で、今ほど活動の背景や、地域の中で起きている事象まで完全に理解して見れていたわけではありません。
それでも、以前訪れた場所を再び歩く中で、いくつもの変化を感じました。
11年前に訪れた出産待機施設が、今も使われ続けていること。施設の周りには以前より人の往来が増えたようにも感じました。ザンビアの国の動きにより、安全な出産のために第一子は病院で産む事が呼びかけられた事で、助産師等の専門知識を持つ人の介助と医療資機材のある場所で出産することが広がり、ある保健施設のスタッフから「今では自宅で出産する人の方が少ない」と聞きました。
そして、今回特に変化を感じたのが、GBV(ジェンダーに基づく暴力)について地域の人たちが言葉にするようになったことです。
11年前の訪問では、少なくとも私自身がカップルや家族間、女性に対しての暴力の課題について現地で話を聞く機会はほとんどありませんでした。しかし、今回インタビューをさせていただいた方々からは、「暴力はよくない」「これまでのよくない風習や文化に対して考え方が変わってきている」という言葉を聞きました。
もちろん、課題がなくなったわけではありません。それでも、長年にわたってジョイセフをはじめ、さまざまな機関や団体が地域の人たちと対話を続けてきた中で、以前は当たり前とされていたことについて、「これは変えた方がいい」と地域の人自身が声にできるようになっている。
ジョイセフが建設してきた施設やインフラが維持されていることだけではなく、人々の意識や、地域の中で交わされる言葉も少しずつ変わっている。そのことが、11年ぶりに訪れた私にはとても印象的でした。
今回、もう一つ強く心に残ったのは、それぞれの地域に「この地域をもっとよくしたい」「誰かのために力になりたい」と動いている人たちがいること。そして、その人たちとジョイセフがしっかりと連携を拡大していることです。
ザンビアにおいて、これまでの長い活動で作り上げてきた地域の人々との信頼関係や、地域の人々の命と健康を守るための共通の思い。現在ジョイセフは、そんな強い基盤の上で、母子保健だけでなく、若年妊娠やGBVを予防をするための活動に取り組んでいます。
地域の人々と保健施設をつなぐ保健医療従事者や地域保健ボランティア。


同世代に性や健康について伝える若者「ピアエデュケーター」や学校の先生たち


カップルや家族、女性たちの地域の相談役でマリッジカウンセラーと呼ばれる人たち

地域のありとあらゆる困りごとやトラブルを聞いて解決につなげようと奮闘する地域の伝統的リーダーたち※
※チーフと呼ばれる部族長のもとで各地域を代表し、住民の相談や地域の課題への対応を担うリーダー。地域住民がふさわしい人物を推薦し、チーフが任命します。推薦される人には、その地域に一定期間暮らし、住民から信頼され、ほかの人の模範となる人物であることが求められます。

その他、地元の警察や教会の牧師さんなど、地域住民に密接な人々との連携が広がっています。
ジョイセフは何かを「してあげている」のではありません。
地域のことを一番よく知る人たちと、「どうしたらみんなが健康で、もっと暮らしやすい地域になるだろう」と考え、その人たちが力を発揮できるように支えていく。一緒につくっていく。そんな活動が、長年の連携を通じて地域に根づいていました。
ジョイセフはザンビアで、
- 安全に出産ができる施設や暴力の被害にあった女性のため施設の建設
- 地域保健ボランティアの養成
- 保健医療従事者や教員、地域で影響力のある方々への研修
- 若者への啓発活動
- 収入創出のための縫製技術の研修
など
たくさんの活動を実施してきました。

一見すると、それぞれ別の活動に見えます。私自身も資料だけで見ていたときには、別々の活動に見えていた事もあります。
でも今回、一人ひとりの暮らしに触れると、そのすべてがつながって見えました。
そのことを強く感じた出会いの一つが、16歳のメモリーさんです。

メモリーさんは、サッカーをするのが大好きな女の子。祖母と叔母と暮らしています。経済的な理由で制服や靴など通学に必要なものを用意することが難しくなり、学校を中退、家事の手伝いをしています。それでも「学校に戻って勉強したい。将来は看護師になりたい」と話してくれました。
「自分の体や健康について困ったことがあったら、誰に相談しますか?」と聞くと、答えは祖母と、ジョイセフが養成した母子保健推進員でもある叔母。
内容によってどちらに話すかを選びながら、自分の悩みや困ったことについて「どんなことでも話せる」と感じているそうです。
祖母は、自分の身を守るためのアドバイスもしています。その一つが、「男の子との関わりには気をつけるように」というもの。孫を大切に思う気持ちから、10代での妊娠や暴力、性感染症などから孫を守りたいという意図だと説明がありました。

もちろん、周囲の大人が「気をつけなさい」と伝えるだけでは十分ではありません。祖母や叔母の見守りと合わせて、妊娠や避妊、性感染症について正しい情報を知り、自分で選択でき、必要なサービスを利用できる環境が今後もメモリーさんが健康で自分らしい未来を実現させるためには必要です。
それでも私が強く感じたのは、その土台に、「何かあったら、この人になら話せる」と思える大人の存在があることでした。
将来の夢は、看護師だと話してくれたメモリーさん。
「身近にロールモデルはいる?」と聞いたとき、メモリーさんが挙げたのは、地域の保健施設で働くスタッフでした。
自分を守るためのことを教えてくれる大人がいる。
困ったときに相談できる大人がいる。
そして、「こんなふうになりたい」と思える大人がいる。
地域にいる人たちの存在そのものが、一人の女の子が自分らしい未来を思い描くことにもつながっているのだと感じました。
祖母もまた、メモリーさんが学校へ戻り、学び続け、夢をかなえて、よりよい人生を送ってほしいと願っています。さらに、地域の女の子たちがサッカーなど地域の活動に参加できる機会がもっと増えてほしいとも話していました。
「孫を守りたい」という思いと、「学校に戻ってほしい」「夢をかなえてほしい」という願い。
その両方を持って、身近な大人たちが1人の女の子を見守っています。

別の地域で出会った20歳のリーズさんは、18歳のときに妊娠しました。

3か月間、月経がなかったことで、自分の体の変化に気づき、保健施設へ行きました。そこで検査を受け、妊娠していることがわかりました。相手は当時のパートナーでした。そのときの気持ちを尋ねると、「怖かった」と話してくれました。
体の変化に自分で気づき、地域の保健施設に行き、検査を受けることができた。それは、とても大切なことです。
でも私は同時に、その前後には、本来どんな選択肢があったのだろうと考えました。
妊娠する前に、避妊について十分な情報や手段にアクセスできるチャンスがあったのか。自分の身体に異変を感じた時、一人で悩み辛かった時間はどれほどあったのか。妊娠が分かったとき、その後について考えるための情報や選択肢をどこまで知ることができていたのか。学校を辞めなくてもよい方法はなかったのか。
今回のインタビューでは、そこまでは聞いていません。だから、リーズさんが何を悩み、望んでいたのかを、私が代わりに語ることはできません。
ただ、「自分の体の変化に気づけること」「相談できること」「保健施設につながれること」のさらに先に、「十分なサポートや情報を得たうえで、自分で選べること」ががいかに大切で、必要なことかを再認識しました。
リーズさんは現在、妊娠を機に学校を辞め、可愛い1歳10か月の娘さんを、一緒に暮らすお母さんに手伝ってもらいながら育てています。妊娠・出産後は以前ほど友人と交流しなくなり、家で子どもと過ごす時間が増えたと、さみしそうに語るリーズさんの顔が忘れられません。
一方で、これからの生活について尋ねると、縫製などの何か技術を身につけ、仕事や収入につなげていきたいという希望を話してくれました。今後ジョイセフとの活動にも是非関わってくださったらいいな、と思いました。

メモリーさんにも、リーズさんにも、「これからこうしたい」という思いがあります。
でも、夢や希望を持つことと、それを実際の選択肢にできることは、現状同じではありません。
体や性について正しい情報があること。
安心して相談できる人がいること。
必要な医療や保健サービスにつながれること。
学んだり、スキルを身につけたりする機会があること。
家族や地域がその選択を応援すること。
地域で活躍できる場があること。
自分で収入を得る力を持つこと。
一見、違う課題に見えるかもしれません。
でも、一人の女の子、一人の女性の暮らしから見れば、すべてつながっています。
そして私は今回、問題が起きてから支えるだけではなく、一人ひとりが常に必要な情報や人、サービスにつながり、自分で選択できる地域そのものを、地域の人たちと一緒につくっていくことに、ジョイセフの活動の大きな特徴と意義があるのだと感じました。
その地域にもともといる「人」を大切にし、その人たちと一緒に、暮らしの中から少しずつ環境を変えていく。
11年前、支援者だった私が見ていたジョイセフの活動を、今回は職員として、その背景や活動を支えている人たちの存在、そして一人ひとりの命と健康、そして自分らしい生き方を選ぶ権利への意識や行動が変化している地域の様子まで見ることができました。
10月11日は、国際ガールズ・デーです。世界中のすべての女の子の健康と権利が守られ、ジェンダーの格差に阻まれることなく幸せに生きられるよう、国際社会が呼びかけ合う記念日です。
世界のどこに生まれても、女の子たちが自分の体や心、自分の人生、自分の未来を自分で選べるように。
一人ひとりが望むことが、実現可能な選択肢として増える社会にしていきたい。
そのための土台を、ジョイセフは地域の人たちと一緒につくり続ける。
皆さまからいただいている毎月のご支援は、そんな息の長い活動を支える力になっています。
これからもご支援、ご協力をどうぞよろしくお願いします!

ムコルウェ地区の出産待機施設は開設から約14年。地域保健委員会の方や母子保健推進員の方、保健施設のスタッフたちが今も大切に維持、運営しています。
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- 栗林桃乃
- 国内外のジェンダーの課題に興味を持ち、大学時代〜現在ジョイセフフレンズとしてジョイセフの支援をしている。いつかジョイセフで活動をと志し、2022年にジョイセフに入職。前職はホテリエ。接客で身につけた対人スキルと2年ほど広報・企画として働いた経験を活かし現在はジョイセフで活動中。国内支援者連携窓口、思い出のランドセルギフト事業統括。日本の若者を性に関する悩みや課題から解放したい思いでI LADY. の活動もサポート。性にとらわれない生き方を実践したい。パートナーとコーギー犬との3人家族。趣味はパートナーと走るロードバイク。