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性と恋愛2021 ―日本の若者と親世代の意識調査― 注目ポイント・ダイジェスト解説

2021.10.18

プレス向け発表会
2021.10.6 @Zoom

性の「生きづらさ」や、「孤独」が見える調査結果。若い世代には変化の兆しも。

ジョイセフの「I LADY.」は、日本の10~20代を対象にSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)に関する幅広い情報提供を行い、一人ひとりのアクションのきっかけをつくるプロジェクトです。
 
日本に生きる私たちの「リアルな性への意識と行動」について、I LADY.は2019年より2年毎の調査&発表を開始しました。
 
今年は「性と恋愛2021」として、国内在住で恋人・パートナーができたことがある5338人(15~64歳)を対象に調査を実施しました。男女別に、10~20代までの若者世代と30代以上の大人世代でデータを比較。ジェンダーマイノリティーも含めた性別間の意識差や、世代間のギャップが浮かび上がりました。
 
オンラインで行われたプレス発表会では、多くの項目から、特に注目したい調査結果をピックアップして紹介しました。アドバイザーである産婦人科医の遠見才希子さん・調査票監修を担当した大阪芸術大学客員准教授の谷口真由美さんからもコメントをいただいています。
 
日本は世界の中でも、性に関して特異な状況にあると言われています。各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数も156カ国中120位と、先進国の中で最低レベルにあり、ジェンダーを問わず生きづらさを抱えている実態が今回の調査からも見て取れます。
 
その現状を私たち自身が気づき、みんながもっと幸せに生きられるように変えていきたい。そんな思いで実施した「性と恋愛2021」について、5つの分野ごとに、特に注目したいポイントを解説します。
 

I LADY.事務局 櫻井彩乃

①リアルな恋愛観

プロポーズされたい女性たちに対し、男性の意識は変わりつつある:
世代を問わず、女性の大多数が、男性からのプロポーズを希望しています。一方、男性は世代間で意識の違いが見られました。女性からプロポーズしてほしい男性は、30代以上の大人世代で8.4%にとどまりましたが、20代以下の若い世代では18.0%にのぼりました。
姓(名字)について、若い世代は柔軟:
相手や状況に応じて自分の姓を変えてもいいと考えるのは、大人世代の男性では47.7%ですが、若い男性では63%でした。

②性・セックスの意識

「セックス=気持ちいい」は男性だけ:
セックスへのイメージは、世代を超えて男性は「気持ちいい」という回答が一番多く、6割を占めました。女性は5位までに「気持ちいい」はランクインせず、スキンシップが1位。若い世代では「愛が深まる」が2位、大人世代では「子づくり」が2位でした。
気が乗らないのに性交渉に応じる女性:
若い女性の46.5%、大人女性の実に63.5%が、気が乗らないのに性交渉に応じた経験があります。一方の男性は、大人世代で約40%、若い世代は26.4%でした。

③避妊・性感染症の本音
④セクシュアル・ヘルスについて

避妊の主導権は男性にある:
特に大人世代では、4割以上が避妊なしの性行為を経験しており、その理由として男性は「コンドームをつけると快感が損なわれるから」が多く、女性は「相手に言いづらかったから・避妊したいと言ったが相手がしてくれなかったから」という回答が上位でした。
大人・若者とも、男女双方で「避妊しなくても大丈夫だと思った」という回答が2割前後にのぼりました。妊娠した場合は「何も考えていなかった」と男性の2割以上、女性では13.8~18.8%が回答しています。そして、若い男性の10.5%が「中絶するつもりだった」と答えました。
緊急避妊薬(アフターピル)について、若い世代の9割以上が知っている:
緊急避妊薬(アフターピル)について、若者世代の92.1%、大人世代では68.3%が聞いたことがある/知っていると答えました。
若い女性の4人に1人がピル(経口避妊薬)の服用経験あり:
若い女性は4人に1人、大人世代では7人に1人がピルの服用経験ありと回答。しかし大人世代では避妊方法としてのみ認知される傾向にあり、若い世代では「月経をコントロールできる」「月経痛がやわらぐ」といった婦人科系の治療の側面としても5~6割の女性が認知していました。
ピルを服用していない理由についても世代間のギャップがあります。大人世代では副作用への心配や、パートナーがコンドームをしているからという回答が上位になり、若い世代では「費用が高額だから」が1位でした。
性や体の悩みについて、男性は相談できない:
婦人科・泌尿器科の悩みについての設問では、男性の5~6割が「相談する相手が誰もいない」と答えました。女性は母親や友達に相談するという回答が多く寄せられましたが、医療従事者に相談する人は少なく、医療へアクセスしづらい現状が浮かびます。女性は「生理の貧困」問題にも直面しており、4人に1人が生理用品が高いと感じていました。
子宮頸がんへの備えに対する世代間格差:
子宮頸がん検診は大人世代の74.3%が受けているのに対し、若い世代では35.3%にとどまります。逆にHPVワクチンの接種率は若い女性が28.6%、大人世代では13.1%でした。

⑤自分の人生を自分で決められるか

若い人ほど、ライフプランを早く考え始める:
はっきりと世代間ギャップが現れた設問は、自分の生き方、ライフプランを考え始めた年齢です。若い世代は43.9%が19歳までに人生プランを描き始めるのに対し、大人世代では15.4%にとどまりました。
自分で決める。でも、自信はない:
自分の人生で大きな決断をする時は、若い世代の女性を除いて、「自分」を頼りにするという回答が最も多くなりました。その一方で、自分の決断に「自信がない」と答えた人が全体の4割近くを占めています。
「男女どちらでもない」性自認を持つ場合の生きづらさ:
進路や職業を決める際、性別を理由にあきらめた人は、若い男性で18.9%、若い女性では15.1%です。しかし、男女どちらでもない性自認を持つ人(全体の8%)に限れば、40.2%が性別を理由に将来への希望をあきらめていました。ジェンダーに縛られる現状において、性的マイノリティーの生きづらさを意識する必要があります。

専門家と共に考える
調査結果の「注目ポイント」

産婦人科医の遠見才希子さんは、若い世代でアフターピルへの認知度や理解が広がっていることに注目しました。世界では緊急避妊薬が広く普及していますが、日本では「若い女性の認知度が低い」などの理由で認可が見送られてきた経緯があります。
この10月、4年ぶりにアフターピルの市販化に向けた議論が厚生労働省で再開されました。今回の調査を契機に、アフターピルに関する前向きな議論につながることが期待されます。

調査票を監修した大阪芸術大学客員准教授の谷口真由美さんは、全体を通して見えてくる「男性の一人よがり」を指摘しました。「嫌よ嫌よも好きのうち」という言葉が象徴するように、女性の「ノー」が理解されないことに、谷口さんは警鐘を鳴らします。
避妊においても、女性の意思が尊重されず、女性側も嫌われることを恐れて「ノー」と言えない傾向があります。男性も女性も、大切に思っているはずのパートナーに、本当の気持ちを伝えられないことがあるのです。

特に大人世代の男性は相談相手もおらず、「男らしくあれ」というジェンダーの呪縛の中で、孤独を深めている可能性があります。この孤独は、自ら死を選ぶ自死ともつながっていると考えられるでしょう。そして性的マイノリティにおいては、さらに孤独は深まります。今回の調査でも338人が性自認について「男女どちらでもない」と回答しました。

私自身は20代の若者世代であり、若者を代表してパブリックコメントを行政に届ける活動も行っています。(#男女共同参画ってなんですか
まわりのユース世代から多く寄せられるのは、包括的性教育やジェンダー教育を求める声。性による受験や就職の不平等、ステレオタイプの押しつけを社会からなくしたいという、切実な願いです。
*包括的性教育:知識やスキルだけでなく、ジェンダー平等や性の多様性も含め、誰もが幸せに生きるための人権を基本とする性教育。

女性だけでなく、男性もジェンダー格差によって追い詰められています。「男は強くなれ」「大黒柱なのだから」「デート代は出して当然」などと言われるのが苦痛という男性は少なくありません。
ジェンダーから解放されて、「人として」尊厳をもって生きたいと願う人が増えていると感じます。

どの性を自認していても、あらゆる人がSRHRを尊重されながら、幸せに生きられる社会を目指すために。
今回の意識調査を通して、私たち一人ひとりが現状に気づき、変化への行動を起こすきっかけにしたいと思います。 

(櫻井彩乃)

 

性と恋愛2021 調査データ
Author

I LADY.事務局
I LADY. は、これまでジョイセフが培ってきた知見を生かし、特に日本の10~20代を対象にグローバルな視野でSRHRに関する幅広い情報提供を行い、一人ひとりのアクションのきっかけをつくるプロジェクトです。Love Yourself(=自分を大切にする)、Act Yourself(=自分から行動する)、Decide Yourself(=自分の人生を、自分で決める)をメッセージに掲げ、活動を展開しています。