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【ミャンマー・現地レポート】安心して命を迎えられる村へ。たしかな変化が続いている

2026.7.15

  • 活動の現場から

2021 年のクーデター以降、ミャンマーでは政情不安や経済の悪化が続き、多くの人々が厳しい生活を余儀なくされています。医療体制にも大きな影響が及び、ジョイセフが支援する農村地域では必要な医療サービスにアクセスすることがこれまで以上に難しくなっています。

そのような状況の中でも、地域の母親や子どもたちの命と健康を守るため、活動を続けている人たちがいます。それが、母子保健推進員をはじめとする地域のボランティアです。

ボランティア自身も、物価の高騰や生活の不安など、困難な状況の中にあります。それでも妊産婦の自宅を訪ね、健康状態を気にかけ、医療施設での受診を勧め、ときには出産に付き添うなど、地域に寄り添う活動を続けています。

ジョイセフの現地スタッフがプロジェクト対象地域を訪れ、ボランティアや地域の女性たちから話を聞きました。そこから見えてきたのは、厳しい状況の中でも、人と人とのつながりによって支え合う地域の姿です。

今回は、スタッフが見聞きしたエピソードを通して、現地で活動を続けるボランティアたちがもたらした地域の変化についてご紹介します。

安心して命を迎えられる村へ

「妊娠しても、無事に出産できるだろうか」
これは、医療施設から遠く離れた村に住む多くの女性たちが抱えてきた切実な不安でした。

妊娠中に体調の変化があっても、助産師にすぐ相談することは簡単ではありません。医療施設までの距離だけでなく、必要な情報を得る機会も限られていたため、不安を抱えたまま出産の日を迎える妊婦も少なくありませんでした。

しかし、ジョイセフの活動によって、その状況は変わりつつあります。

ある村で、現地スタッフが女性たちに話を聞くと、口々に「母子保健推進員」の存在を挙げました。
母子保健推進員は村に暮らす住民であり、ジョイセフのプロジェクトを通じて母子保健に関する研修を受けたボランティアです。自分が担当する30世帯の中で妊娠した人がいるとわかると、自宅を訪問します。そして、ジョイセフが作成した妊娠中の過ごし方や受診のタイミングなどについての情報がまとめられたチラシを見せながら、一人ひとりに必要な情報を届けます。

女性たちは、「妊娠すると声をかけてくれて、どうすればいいか教えてくれるので安心できます」と話してくれました。以前は「どこに相談すればいいのかわからない」ということもありましたが、今では身近な相談相手がいることで、必要な医療サービスにつながりやすくなっています。

ある母親は、母子保健推進員が自宅を訪れ、子どもの予防接種を受けるよう勧めてくれたことがきっかけで、どこで予防接種を受けられるかを知ることができたと話してくれました。それまで彼女は、予防接種をどこで受けられるのかさえ知らなかったのです。もし母子保健推進員が訪問していなければ、子どもは必要な予防接種を受ける機会を逃していたかもしれません。地域に住むボランティアだからこそ、一軒一軒の家庭に寄り添い、必要な支援へとつなげることができています。

少しずつ積み立て、大きな安心につながるバウチャー制度

一部の村では、妊婦の経済的負担を軽減するためのバウチャー制度も導入されています。これは、通院や出産にかかる交通費・入院中の食事代などの負担を、地域で積み立てた資金と引き換えのバウチャーで支え合うしくみです。(→ バウチャー制度の説明

制度を利用した女性は、「毎月 200 チャットを、みんなで掛け金として出し合っています。負担になるほどの金額ではありません」と話してくれました。そして出産時には、地域のボランティアで運営されるバウチャー管理チームから 10,000 チャットの給付を受け取ったそうです。

もちろん、その金額だけですべての費用を賄えるわけではありません。しかし、出産に必要となる支出を軽減する大きな助けになっています。

さらに支援は金銭面だけではありません。管理チームは、医療施設への紹介なども行い、女性たちが安心して医療につながれるようサポートしています。

スタッフが話を聞いた女性は、大切そうにバウチャーの給付カードを見せながら、「この制度を運営してくれる人たちがいて、本当にありがたいです。」と笑顔で話してくれたそうです。

地域全体で妊婦を支える文化が生まれている

プロジェクトの成果は、一人ひとりの変化だけではありません。地域に「妊婦をみんなで支える」という意識が広がっています。
医療従事者だけでなく、ボランティアや地域住民がそれぞれ役割を担い、妊婦が安心して出産できる環境づくりに取り組んでいます。

住民からは、「プロジェクトが始まる前と比べて、妊娠や出産が原因で亡くなる女性は減っていると感じます」という声も聞かれました。
また、コミュニティでの家族同士のコミュニケーションも増え、妊婦を支えるために互いに協力する場面が多くなったと言います。

病院まで付き添う母子保健推進員の姿

スタッフが町の病院を訪れた際、出産を控えた妊婦に付き添う母子保健推進員に会いました。その母子保健推進員は、妊婦が安心して出産に臨めるよう寄り添い、病院まで同行していたのです。

以前であれば、一人で不安を抱えながら病院へ向かっていたかもしれない妊婦も、今では地域の支えを受けながら出産にのぞむことができます。
地域に根差したボランティアの存在は、単なる情報提供にとどまらず、妊婦や家族に「一人ではない」という安心感を届けているのです。

私たちが目指してきたのは、妊婦が医療サービスにアクセスできるようにすることだけではありません。
地域の人々自身が正しい知識を身につけ、お互いに支え合いながら母親と子どもの命を守る「仕組み」を育てることでした。

妊婦が安心して相談できる相手がいること。

経済的な理由で医療施設での出産をあきらめずに済むこと。

そして、地域全体で妊婦を見守る文化が育っていること。

これら一つひとつの変化は、皆さまからのご支援によって積み重ねられてきた成果です。これからも、地域の人々が自ら支え合い、安心して命を迎えられる社会を目指して、私たちは活動を続けていきます。

今後とも皆さまからの変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

佐藤ゆみえ
2013年にジョイセフに入職。ミャンマーをはじめとするアジアやアフリカ各国でプロジェクトの会計管理やドナーとの連絡調整業務等に従事。ジョイセフ入職前は、スリランカやスーダンで難民支援に携わる。現在も、ジョイセフと並行して日本国内にいる難民の保護を行うNGOで難民支援に従事。エディンバラ大学大学院修了(国際政治学)。