【ミャンマー・現地スタッフ インタビュー】 「支える人にも、支えがいる」ミャンマーで15年、活動を見つめ続けてきた経理担当者の声
2026.8.13
- 活動の現場から
厳しさを増すミャンマーの社会情勢。そのなかで、地域の女性や子どもたちに必要な支援を届けようと、現場で活動を支え続けるスタッフがいます。
ジョイセフの海外スタッフの中で最も長く、15年という長きにわたって活動を支えてきた、ミャンマー事務所の経理担当者。彼女自身もまた、幼い子どもを育てる母親として、この国で日々の暮らしを営んでいます。
支援に力を尽くしながら、同じ困難のなかで生活している彼女に、ミャンマーの現状や活動への思いを聞きました。
Q1. この数年間、仕事や日常生活でどのような課題がありましたか?
経理担当者としての私の仕事においては、資金管理が大きな課題でした。日本からミャンマーへの送金が非常に難しくなりました。また、NGOに対する規制が増え、関係省庁から活動に必要な許可を得るまでに長い時間がかかることが増えました。その結果、計画どおりに活動を進めることが難しい状況が続いています。
日常生活でも、多くの困難があります。治安の悪化や物価の高騰により、生活は年々厳しくなっています。窃盗や強盗などの犯罪も増え、人々は安心して暮らすことができません。若者への徴兵も進められており、それを避けるために多額の賄賂を支払わなければならないケースもあります。
銀行に預けたお金も自由に引き出せず、生活資金の確保にも苦労しています。食料や医薬品、医療費は大きく値上がりし、生活に必要なものやサービスを手に入れたり、利用したりすることが難しくなりました。
| 2023年 | 現在 | 増加率 | |
|---|---|---|---|
| 米 約50kg | 95,000チャット | 182,000チャット | 約2倍 |
| 卵1パック | 2,500チャット | 4,900チャット | 約2倍 |
| コーラ1本 | 300チャット | 850チャット | 約2.8倍 |
| ガソリン | 2100チャット | 3650チャット | 約1.7倍 |
また、深刻な電力不足も続いています。多くの地域では1日に電気が使えるのは8~10時間ほどで、地域によっては4時間程度しか供給されません。人々は生活のあらゆる場面で工夫を重ねながら、日々を懸命に生きています。
Q2. 幼い子どもを育てる母親として、特に感じる課題は何ですか?
子育てで最も大きな負担は、保育や教育にかかる費用です。生活費が高騰し、子どもを育てること自体が以前より難しくなっています。かつては3~4人の子どもを育てる家庭が多くありましたが、今では1~2人が一般的になっています。
多くの親は生活のために長時間働かなければならず、子どもと過ごす時間を十分に確保できません。その結果、子どもたちがスマートフォンやテレビを相手に過ごす時間が増えていることも心配しています。
教育格差も深刻です。一部の裕福な家庭は高額で質の高い私立教育を受けさせることができますが、公立学校しか選べない多くの家庭の子どもたちは、基礎的な教育しか受けられません。また、経済的な理由で子どもを学校へ通わせることができない家庭もあり、子どもたちは初等教育さえ受けられず、読み書きもできません。
2026年6月に国連開発計画(UNDP)と国連女性機関(UN Women)が共同で発表した最新報告書によると、深刻な食料不足に直面する世帯を中心に、子どもの32%が労働に従事し、24%が退学を余儀なくされているという、極めて深刻な現状が明らかになりました。*
*Uneven Burdens: Women in Myanmar’s Crisis Economy | United Nations Development Programme
特に少数民族が住む地域では貧困が深刻で、多くの子どもたちが十分な教育を受けられていません。教育を受ける機会が失われることは、子どもたちの将来の生活だけでなく、国全体の発展にも大きな影響を与えています。
Q3. 自身も大変な状況にある中で活動を続けてきましたが、その中で「活動を続けてきてよかった」と感じたことや、印象に残っていることはありましたか?
数々の課題にもかかわらず、私たちは女性や子どもたちへの支援を続けてきました。そして、この活動がいかに重要であるかを改めて実感させてくれる、多くの有意義な経験がありました。
私たちは、助産師に対して研修を実施したり、母子保健推進員と呼ばれる地域の保健ボランティアを養成したりしてきました。彼女たちがジョイセフの研修で学んだ知識は、地域の女性や妊産婦へと伝えられ、健康への理解が広がっています。また、助産師と母子保健推進員との間に強固な協力関係が築かれ、妊産婦や子どもの健康を支える体制づくりも進められました。その結果、命や健康を脅かす問題の多くを未然に防げるようになりました。
さらに、妊産婦への経済的支援を行うバウチャー制度も導入されて、医療施設に行く時の交通費など出産に関する費用を支援することで、経済的な負担が軽減され、安心して出産を迎えられるようになりました。
特に印象に残っているのは、以前は医療資格を持たない伝統的な産婆による出産が一般的だった地域で、正しい知識や情報を学んだ母親たちが医療施設での出産を選ぶようになったことです。出産後も継続して母子が医療ケアを受けられるようになり、地域全体の母子の健康が着実に改善しています。
この変化を目の当たりにするたびに、私たちの活動の意義を強く実感しています。
Q4. 日本の支援者にどのようなメッセージを伝えたいですか?
ミャンマーでは、今も多くの人々が厳しい状況の中で暮らし、さまざまな困難に直面しています。しかし、日本の皆さまからこれまでいただいた支援、そして今も続いている支援は、確実に地域へ届き、大きな変化を生み出しています。
こうした支援によって、予防できる妊産婦死亡を減らし、多くの母親が無事に出産を乗り越え、家族とともに暮らし続けることができています。それは家族だけでなく、コミュニティ全体の安心と幸せにつながっています。
皆さまからの継続的なサポートは、一人ひとりの命を守り、家族を支え、地域の未来を築く大きな原動力になっています。たとえ小さな支援であっても、その積み重ねが確かな希望につながっています。
これからもミャンマーの人々に寄り添い、ともに歩み続けていただければ嬉しいです。
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- 佐藤ゆみえ
- 2013年にジョイセフに入職。ミャンマーをはじめとするアジアやアフリカ各国でプロジェクトの会計管理やドナーとの連絡調整業務等に従事。ジョイセフ入職前は、スリランカやスーダンで難民支援に携わる。現在も、ジョイセフと並行して日本国内にいる難民の保護を行うNGOで難民支援に従事。エディンバラ大学大学院修了(国際政治学)。