第51回国連人口開発委員会の報告および人口と開発に関する日本の取り組み(後編)

2018年度人口問題協議会・第1回明石研究会

2018年6月26日

  • 活動レポート
  • 明石研究会

林 玲子

2)人口開発に関するアジア太平洋会議に向けて

カイロ国際人口開発会議(ICPD)の20年目の2014年を前に、各地域別に行動計画のレビューをする会議が行われた。
アジア地域では、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)で開催された第6回アジア太平洋人口会議において採択された「人口アジア開発に関するアジア太平洋閣僚級宣言(2013年9月)」に「Sexual and Reproductive Health and Rights, sexual orientation, safe abortion, comprehensive sexual education」(性と生殖に関する健康と権利、性的指向、安全な中絶、包括的性教育)という用語が用いられていたため、満場一致ではなく異例の投票となり、賛成多数で可決した。この宣言に日本が賛成したことは注目される。

ICPDとSDGsモニタリングの流れ


ICPDから20年目の2014年に向けては、2013年に各地域別の人口開発会議が開催され、アジアでは前述の第6回アジア太平洋人口会議が行われた。同様にアフリカや中南米などでも会議が開催された。
これらの成果に加え、北京女性会議(1995年)、リオ環境サミット(1992年)を元に、2015年の国連総会において持続可能な開発のための2030アジェンダが採択され、アジェンダに掲げられた17の目標(SDGs)として2016年にスタートした。

2013年第6回アジア太平洋人口会議の5年後にあたる2018年11月にバンコクでその中間評価会議が予定されている。会議のためにこの地域の加盟各国は、カントリーレポートを提出することになっており、これは政府だけでなく市民社会などいろいろな分野からのインプットが望ましいとされている。日本の状況が、改善しているか等を報告することになっている。

日本が提出するカントリーレポート案

2013年から現在にかけて状況がどのように変化したかというと、本格的に人口減少が始まり、そして人口高齢化率は27%と世界一である。

日本の年齢別人口と高齢化率(黄色の線)を示すと下記のようになる。

カントリーレポートはアジア太平洋閣僚宣言に基づき、しかもSDGsに関連づけて報告することになっているので、下記にまとめてみた。

A.貧困削減と雇用(Poverty reduction and employment)


男女別にみると、高齢女性の相対的貧困率が高いことがわかる。
(注3:カッコ内の3つ並んだ数字はSDGsの目標とターゲット、および指標の番号を表わす。以下も同様)

B.保健(Health)

日本の保健状況について示したのが下記の図である。平均寿命の伸長と並行して健康寿命も延びている。また、UHCに係る重要な指標として、家計に影響を及ぼすほどの医療支出の指標がSDGsに上げられているが、日本の場合高額療養費制度があるので指標としては0となるのではないか。

C.性と生殖に関する健康・サービス・権利(Sexual Reproductive Health, Service and Rights)

さらに次のような8項目について日本の状況を報告することも求められている。

D.教育(Education)
E.ジェンダー平等と女性の活躍(Gender equality and women’s empowerment)
F.青少年(Adolescents and young people)
G.高齢化(Ageing)
H.国際人口移動(International migration)
I.都市化と国内人口移動(Urbanization and internal migration)
J.人口と持続可能な開発(Population and sustainable development)
K.データと統計(Data and statistics)

阿藤 誠

ありがとうございました。
政府代表という立場で国連の歴史を振り返りながらお話しいただいた。私も1994年のカイロ国際人口開発会議のほか、1993年から2003年まで国連人口開発委員会に参加してきたことを思い出す。

今回のテーマである国際人口移動については、カイロ会議のころから、国連主導の国際会議開催をめぐって先進国グループと途上国グループとの間で議論が続いていた問題と思う。

日本でもまた外国人労働者の受け入れ拡大についての議論が高まってきている。
また2018年11月に予定されているアジア太平洋人口会議への提出書類について、林さんにコメントを伝えれば日本の状況と取り組みが反映されることにもなるので、ご意見をいただきたい。

それでは、はじめにCPDの国際人口移動に関して質疑を進めたい。

参加者のコメント①
南南移動が増えている経済的社会的理由や、移動するのはどのあたりの国か聞きたい。アセアンのなかでは移民はかなり厳しく制限されて管理されているように思う。都市部のなかでの移動もある。
アジアやアフリカの間の移動が多いが、特に増えているアフリカでは国数が多いこと、また地域間の協定が進み自由な移動が増えていることが理由である。アセアン内でも域内の自由移動が実施されたが、実際のところはよくデータとして見えない。
明石 康
人口の移動だけをみるのではなく、資本の移動も考える必要があるのではないかと思う。中国のアフリカへの進出も多くなって、インドの動きもある。いろいろな要素が加わっている。
中国からアフリカに行くのも南南移動となる。「移民」の定義、「南」の定義をどうするかということがある。
参加者のコメント②
SDGsが強調されるのはよいことだが、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)はどう扱われているのか。
人口は出生、死亡、移動を中心に扱っている。UHCはその出生と死亡の部分で、リプロダクティブ・ヘルス、健康一般についてという枠組みでUHCの重要性がある。
参加者のコメント③
人口問題という観点から具体的に新しい選択をしなければ、新しい方向性、戦略なしには人口開発分野の再生はありえないと思う。人口政策といってもジェンダー、母子保健が人口政策のなかで際立っているが、人口動態の変化など多様な問題解決型の切り口で取り組む必要がある。
阿藤
次にアジア太平洋人口開発会議への日本のカントリーレポート案に対する議論に移りたいと思う。レポート案の提出依頼は、国連から外務省経由で国立社会保障・人口問題研究所に回っている。2013年の第6回会議のレビューをし、現在は5年後の今年の会議に向けた準備作業中ということ。
参加者のコメント④
先ほどの「C.性と生殖に関する健康・サービス・権利」の報告案に加えることとして、もう少し包括的な形にするにはあと3つほど欲しいと思う。1)10代の性教育はこれでよいかどうか中身の問題に触れる。2)若者の性感染症について、新規感染が思うほど減らない現状があるから、HIV/AIDSにも触れることが必要である。3)不妊治療に税金を投入していることもあり、何のための治療かという根本的なところにかかわることと思う。
10代の性教育について、専門家の意見も参考にして情報収集し、補足を考えたい。HIVについては必ず入れていくべきと思う。不妊については、生殖補助医療のアクセスが富裕層に限定されているという点が近年国際的に問題視されてきている。すでに日本で生まれる子どもの5%は体外受精児ということもあり、国際的な関心の高まりもあるので、補足したい。
明石
林さんから有用なお話が聞けた。われわれとしても意見を交わす意味は大きい。人口開発分野では、緩慢であるけれども確実に進展しているなかで、日本が果たしてきた役割は大きい。

第6回アジア太平洋人口会議で採択された「人口開発に関するアジア太平洋閣僚級宣言(2013年9月)」に日本が賛成したことは注目される。しかし、国連人口基金(UNFPA)への資金拠出では、スカジナビア諸国の伸びの一方、残念ながら日本はひけをとっている。米国が拠出しないからこそ日本が出すべきであるのに、そうしていないのが残念だ。

秋のアジア人口会議に向けた日本の報告書では、日本が外国に誇れることもあり、同時に隠れたる成果や問題もあるので、タブーを排してそれらを語り合う会議にして欲しい。
教育分野では優秀な学生が留学したがらず、中国や韓国にも遅れを取っている。また、移民に対するタブーが多すぎる。人口減少の中で、今の制度内では問題を抱えている技能研修のような偽善的な形ではなく、長期的政策が必要である。
高齢者の問題では、日本は世界の最先端をいく高齢化のなかで、元気な高齢者の活用について、年齢の区切りには目につかないガラスの天井があるようだ。

阿藤
ありがとうございました。

本日は社人研の林部長から人口問題に関する国連関係の取組みについてご報告いただき、皆さまからの活発なご議論があった。人口問題は、かつては、人口増加の問題のみに焦点が当てられていたが、今日では、アジア太平洋人口会議の報告書の枠組みに見るように実に多様化している。ことに高齢化と国際人口移動は今世紀のグローバルな人口問題と認識されつつあり、今後も本協議会で積極的に議論していきたい。

文責:事務局 ©人口問題協議会明石研究会
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(送付先:info2@joicfp.or.jp

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