ひとジョイセフと一緒に、世界を変えていく「ひと」

友達のために力になる。 きっかけはシンプルでした。

ジョイセフ 開発協力グループ

矢口 真琴

2021.2.15

現在ジョイセフで開発協力グループに所属し、アフリカやアジアで各国の保健医療サービスの改善に関わっています。
といっても、初めから大きな志を抱いて国際貢献の道に進んだわけではありません。きっかけは、大学在学中に留学したオーストラリアでの経験でした。

自分との環境の違いが
心をアフリカへ向けました。

留学先にはアフリカからの学生が多く、すぐに仲良くなりました。アフリカの人は、ひとりと仲良くなると必然的にアフリカの人たちのコミュニティともつながっていくので、気がつけば私の周りはほぼアフリカ系の学生、なんて状態です。話しているとよく故郷の話題になるのですが、彼らの口から語られるのは、雨が降ると車で出かけられない、すぐ停電するといったことばかりで、あまりにも自分が今まで生きてきた環境と違うな、と興味を持ちました。

留学から戻り、大学院に進学するのですが、その際に選択したのは途上国政治論でした。アフリカの友達の話がずっと頭の中にあり、「友達の国のために何かしたい」と考えていたんです。大学時代の専攻は国際関係。それだけでは、国際貢献の道に進めない、もうちょっと勉強しないと何もできないと考え、大学院に進みました。

在学中に外務省でインターンを経験し、そこでジョイセフを紹介され、卒業後に入団して今に至っています。国際協力に携わるにもいろいろな立場や所属先があると思いますが、やるならNGOが面白そうだな、と感じていたので、ジョイセフを即決で選びました。

最初に所属したのはアドボカシーグループです。12年近くいたのですが、アドボカシーは結果がすぐに出るわけではありません。だから日々やっている仕事が何につながっているのか、わかりにくいと感じたこともありました。しかし10年携わって気づいたのは、続けているからこそ人や物事を動かせる力があるということ。地道な活動を続ける部署ですが、ほかの団体や行政と連携して提言を創り上げていく、そうしてポジティブな、大きな変化を生み出していく仕事に大変意義を感じました。

いくつか印象に残っていることもありますが、中でも2002年の会議での出来事は忘れられません。

国連はほぼ10年ごとに、特定のテーマについて会議をしています。活動計画を再承認して、10年後に活動計画の実施がどれだけ進んだかを確認するのですが、世界でも地域別にそのテーマで会議を開催し、それらの結果を踏まえて、最終的に国連本部で10年後の進捗確認のための会議を行います。

人口に関する地域別会議が、2002年にアジア太平洋地域で開催されました。1994年に国際人口開発会議が開催され、そこではリプロダクティブ・ヘルス/ライツを個人の権利としてうたった行動計画が179カ国によって承認されました。そして2002年。なんと会議の席で、アメリカが94年に合意したリプロダクティブ・ヘルス/ライツ分野の行動計画を承認しないと表明。当時のアメリカは共和党政権で、この分野に反対だったからです。

国際会議では、アメリカに対抗するには相当な勇気が必要です。開発途上国はアメリカから多くの援助を受けているため、なおのこと反対の声を上げにくい状況があります。しかしこの時は、多くの国がアメリカに反対しました。日本もこの時ばかりはアメリカと立場を異にして、なんとか承認したのです。これは大変画期的な出来事でした。

各国の保健医療分野を
末端から改善していく。

開発協力グループに所属したのは、2013年4月からです。今、5Sを途上国の保健施設できちんとやっていくということを進めています。整理・整頓・清掃・清潔・習慣の頭文字を取って5Sと呼び、職場内で仕事の質を高め、かつ安全に行うための重要項目として日本でも多くの企業で取り入れられています。これを保健医療分野に置き換えて、保健サービスの質の改善をしていくのです。現地で必要な改善点を盛り込んだ研修プログラムとして作り上げ、仕組みや考え方、ツールとセットで現地に根付かせていきます。現地の人が自分たちの力で継続していけるようにするためです。

開発途上国の末端の保健施設は、村の人たちは具合が悪いときに最初に行き、妊産婦は健診に行く場所です。そこのサービスの質がよくならないと結局は病気も良くなりませんし、妊産婦保健の状況も改善しません。

保健医療分野での国際協力というと病院を建て、最新の機器を入れることを想像されるかもしれません。現地の人も同じようなことを言います。それはそれで必要なのですが、保健医療全体の質の底上げのためには、日々コミュニティのために活動している人たちに寄り添い、彼らが必要とする物、求めている物、使える物を考え、提供して、根付かせていく必要があります。

私は医療従事者ではないので医療技術の分野の支援には加われませんが、自分自身がいろんな研修を受け、専門家とつながり、各国のガイドラインを知り、それに則した形で進めていくことはできます。だから今はこの分野に集中的に関わっています。

もちろん国ごとに保健医療に関するガイドラインはあり、みなさんはその内容に合わせて動いています。しかし、必ずしもその通りに実践できる状況にないこともあります。だから活動をフォローアップする枠組みを作り、研修で学んだことをきちんと活かせる仕組みを考えていくのです。

ガーナのプロジェクトでは、5Sを学んで実践してもらえるようになった結果、ひとりの人がダンボールを活用して家具を作っていくようになりました。必要な場所に、ちゃんと使いやすさも考えて、適切な形の家具を設置していくのです。そして、それをほかの施設にも拡めていました。現地では、金銭的な事情もあってなかなか家具が買えません。それゆえのダンボール家具。これで診察や治療に必要な物が必要な場所にあり、物を探す時間が減ったことで患者さんを待たせる時間が少なくなりました。

ひとりの活動により、周りの人の意識や行動も変化しました。このように、研修に参加した人が育っていくのを見るのはとてもうれいですし、彼らが変わるきっかけとなれたことを誇らしくも感じます。
でもまだ私はここまで。

もっともっと自分のスキルを向上させ、保健医療のサービスの質を全体的に良くしていくプロジェクトにも携わっていきたいです。

アフリカで水道の蛇口をひねっても水が出てこない、風が吹くと停電する、という毎日を過ごしていると、生きていることの素晴らしさを毎朝感じていました。朝起きてまず、別に何か理由があるわけではないけれど、今日も生きていて幸せだ! と感じるのです。また、赤ちゃんが生まれる瞬間にごく稀に立ち会うことがあるのですが、こういった開発途上国の現状を知っていると、本当に無事に生まれて良かった、と生命の誕生が奇跡のように思えます。

だからこそ、保健医療の分野で、たくさんの命が健康に安全に育つため、役に立てる人になりたいと思います。

PICK UP CONTENTS